第2回 正しい債権回収の基本 まずは契約書!
弁護士が伝授!正しい債権回収の方法 【第1回、第2回、第3回、第4回】
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債権回収の第1歩は契約書の作成から
前回のコラムにて、正しい債権回収には、債権回収の重要性、最悪の場合、最後の手段を意識するということを記載しました。
今回からは、3回にわたって、債権回収の基本を、書式を利用して、実践的に解説します。
今日ご紹介するのは、継続的に商品の売買をする取引相手との間で締結すべき取引基本契約書です。
契約書を作成する理由を、債権回収の視点から考えると以下のようになります。
・請求の根拠、支払いの時期が書いてあり、最後の手段である訴訟では重要な証拠となる。
・債権全額をすぐに請求できる根拠、契約から離脱できる根拠、商品を引き揚げる根拠、訴訟を行う場所等を記載し、債権未回収発生時に役立つ。
契約の内容、支払いの時期方法を明確に記載する
契約の内容が読んでもわからない契約書は訴訟の場やトラブルが起きた時に役に立ちません。
まずは契約の主たる要素、①当事者、②商品(サービス)、③代金を書きましょう。
債権回収の観点からは、④代金の支払い時期も重要です。
代金が前払いか商品の受け取りと同時でえあれば、未回収リスクはありませんが、後払いの場合、未回収のリスクがあるからです。
代金が後払いの場合、締日から支払日までの期間の長さは、リスクと比例します。
相手の信用が高い上場企業等の場合は別ですが、そうでない相手では、担保がなければ、締日から支払日まではなるべく短くしてリスクを抑えたいものです(末締め、翌月末払いの場合、6月1日に売った品物の代金は7月末まで払われず、60日以上も相手に信用を与えることになります)。
後払いの場合、期限の利益喪失条項は必ず入れる
債権回収の視点から欠かせない条項に、期限の利益喪失条項があります。一定の事柄があれば期限の利益を喪失させる、つまり債務全額をすぐに請求できるようになる条項です。
たとえば、末締め、翌々月10日払いの約定の場合、6月の売上が入金されるのは、8月10日です。仮に8月10日に代金が支払われない場合、7月に売った代金や8月10日までに売った代金もまとめて請求したいところですが、この条項がないと、それぞれ9月10日、10月10日まで請求もできないということになります。
ところで、滞納1回で当然に喪失とすると、何かの手違いで入金が1日遅れた場合も残債務全額をすぐに支払わなければいけなくなり、トラブルを招くこともあります。
二回の滞納、滞納額が~円になったら喪失する、「当然に喪失」ではなく「請求によって喪失」といったバリエーションの中から相応しい条項を作りましょう。
契約から離脱できる解除や管轄裁判所は法律よりも有利に書く
入金がないにも拘らず、商品を納め続けなければいけないとすれば、不合理です。これ以上債権の未回収を発生させないためには、自社を取引から抜けさせる必要があります。そのための条項が、解除条項です。
民法上解除ができるのは代金の未払い後に、期間を定めて支払いを催告をし、その期間が経過した後にはじめてできるのが原則ですが、わざわざ条項を作るのですから、それよりも早く解除ができる条項にするべきです。
書式例のように「催告をすることなく」解除できるとすべきでしょう。
また、紛争が起きた時にどこの裁判所で訴訟をするのかが記載されているのが合意管轄の条項です。
法律上は被告の住所地の裁判所で裁判をするというのが基本ですが、相手が遠方にいるとわざわざそこまで行って裁判を起こす必要があります。そうならないように自分に有利な場所でも裁判ができるように、裁判所を定めておく必要があります。さらに一歩進んで、専属的合意管轄裁判所と記載すると、その裁判所以外では裁判ができなくなるという強い効力が出てきます。自社に有利な条項を検討しましょう。
所有権の移転時期は担保並みに重要
今回の書式には記載がないのですが、債権回収上是非欲しい条項として所有権の留保条項があります。
具体的には、「代金の完済までは、商品の所有権は相手に移転しない」という条項です。
民法上、所有権は意思表示と同時に移転しますから、この条項がないと、代金が未払いでも、売った瞬間に相手に商品の所有権は移転していることになります。この条項があることで、代金が全て支払われるまでは、仮に商品を相手に先に渡したとしても、その商品の所有権はこちらに残っていますよ、ということが言えるようになります。
債権回収の現場においては、自社製品の引き揚げがよく行われますが、相手に所有権が移転している商品の引き揚げには根拠がありません。所有権が移転していなければ、自分の製品ですから、引き揚げは容易です。こういった回収の現場で威力を発揮する条項ですので、是非書き足しましょう。
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