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第4回 貸したお金を返してもらう可能性を高める借用書

著者:新宿西口総合事務所 代表司法書士  藤井 和彦

これまでの連載を振り返ってみましょう。

第2回で返済してもらえなかった場合、最終的には返済を求めるための裁判を起こさなければならないことをご説明しました。

第3回では、不動産を担保に取っていれば、裁判を通さなくてもそれを差し押えて、現金に換えることができることをお話ししました。

しかし、借用書を書いてもらっても、いったん金銭トラブルになると、返してもらうまでに手間がかかります。

裁判を起こした場合、通常は判決が出た、もしくは貸主・借主の間で和解をすることによって、裁判が終了するまでに、順調に進んでも3・4ヶ月はかかります。

また、自力で裁判を行う場合は複数回、平日の日中に裁判所に足を運ばなくてはなりません。

そこで最終回の今回は、不動産を担保に取っていなくても、裁判を起こさずに借主の財産を差し押さえることができる書類をご紹介いたします。


万が一に備える借用書の書き方ガイド
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「公証人」と「公正証書」はご存知ですか?

全国各地には「公証役場」という施設があります。こちらには、主に検事や裁判官などを退職された方々が「公証人」として勤めており、公証人は一般の方からの依頼を受けて法律上の文書の作成や、事実上または法律上の行為の証明・認証を行なっています。この「公証人」の方々は法務大臣に任命された公務員という立場にある法律の専門家という位置づけになっており、この公証人が民法などの法律に従って作成する公文書のことを「公正証書」といいます。

「公正証書」は普通の借用書より証明力が高い

「公正証書」は前段のとおり公文書ですので、一般人が作成した「私文書」と比べて高い証明力を持っています。そして公正証書はその高い証明力を持つがゆえに認められた「力」を持っています。その「力」とは、もし借主が返済期限までに借りたお金の返済をしない場合、そのまま借主の財産の差し押さえなどを裁判所に請求することができるというものです。裁判所に裁判を起こしてその判決や和解などを待つ必要もありません。すなわち、公正証書を作成しておけば、差し押さえなどを行って貸したお金を回収できるまでの期間が、大幅に短縮されるということになるのです。

「公正証書」を見てみましょう

これまでの復習として今回の書式の全ての条項を見ていきましょう。第1条では、これが契約であることを定めています。第2条では、借用書の重要なポイントの1つ「貸主が借主にお金を渡す」ことについて触れています。第3条では、借用書のもう1つの重要なポイント「借主が金銭をもって返還をすることを約束すること」が書かれています。(ここまで連載第2回を参照)。第4条と第5条は「期限の利益の喪失」について、第6条では「連帯保証人」について書かれています。(ここまで、連載第3回を参照)。そして、公正証書が持つ「力」について書かれているのが第7条です。返済が遅れた場合借主は差押などの法律に基づく強制執行を受けることを承知している、という意味合いを持ち、この条項があることによって、裁判を省略することができるということになります。

「公正証書」を作るには

今回ご紹介した公正証書の書式ですが、借用書と違い、これを作成するのは公証人になります。作成を依頼する場合、あらかじめ公証人に公正証書を作りたい旨の連絡をし、状況を説明したうえでそれに基づいて公証人が作成した後、借主・貸主の両方が公証役場に足を運び、内容に間違いがないかどうかお互いに確認した上でそれぞれ印鑑を押して公正証書ができあがります。公証役場は平日の日中しか開いていない、コストがかかる、借主の協力が必要――と手間はかかりますが、返済してもらう可能性を高めるという点においては、借用書と比べて公正証書の方がより確実です。「公正証書という手がある」ことを知っておくのも、金銭トラブルから身を護る”奥の手”と言えるでしょう。

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<完>

提供元:ドリームゲート

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著者プロフィール

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藤井 和彦

新宿西口総合事務所 代表司法書士

会社登記・企業法務に特化し、全ての案件に自らが先頭に立って関わることをモットーとする。開業後8年で1人起業の会社から株式上場を目指すベンチャー企業、東証一部上場企業まで約400社の業務を手がけている。

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