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サラリーマンが知る税制シリーズ 第3回 所得税③ 所得税のしくみ~給与所得控除、所得控除、税額控除~

著者:   bizocean編集部

サラリーマンが知る税制シリーズ 第3回 所得税③ 所得税のしくみ~給与所得控除、所得控除、税額控除~

所得に税率を掛けて算出するのが、所得税の基本です。したがって、所得が増えれば支払う所得税は増える、逆に所得が減れば支払う所得税は減るという計算になります。

その所得税を減らすしくみがあります。サラリーマンに関連するのは、給与所得控除、所得控除(給与所得控除とは別物)です。

そして、税金そのものを減額する税額控除という制度もあります。今回は、これらをそれぞれ解説したいと思います。

なお、毎回ながら平易な言い回しを使うようにしているため、厳密性に欠ける表現になっている部分があることをご容赦ください。


1.給与所得控除

給与所得については収入額から一定金額が控除される設定になっています(以下のテーブル参照)。
自営業者が業務上の経費を計上するのと同様に、サラリーマンも一定程度は経費として認めるという発想で設定されたもののようです。

つまり、額面通りではなく、無条件に一定額を差し引いて圧縮した所得で所得税を考えてあげましょう、という、極めてありがたい制度です。逆に言うと、徴税側からするとこの控除額を調整することで税収を上げたり下げたりできるので、納税者から見るとある意味怖い制度と言えるかもしれません。

以下は令和2年度の給与収入に適用される給与所得控除のテーブルです。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)

給与所得控除額

1

1,625,000円まで

550,000円

2

1,625,001円から

1,800,000円まで

収入金額×40%-100,000円

3

1,800,001円から

3,600,000円まで

収入金額×30%+80,000円

4

3,600,001円から

6,600,000円まで

収入金額×20%+440,000円

5

6,600,001円から

8,500,000円まで

収入金額×10%+1,100,000円

6

8,500,001円以上

1,950,000円(上限)


たとえば、年間給与収入が6,000,000円の人は、上記テーブルの4項となることから、課税所得は

6,000,000円-(6,000,000円×20% + 440,000円) = 4,360,000円

となります。
給与所得控除については改正が重ねられており、年度によって異なります。


2.給与所得者の特定支出控除の特例

給与所得者が次の支出(特定支出)をした場合、その年の特定支出の額の合計額が、一定額を超えるときは、その超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる制度があります。これは、給与所得者の特定支出控除の特例という制度です。

1 通勤費
2 出張旅費
3 転勤に伴う転居費
4 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として受けるための研修費
5 職務に直接必要な資格を取得するための資格取得費
※平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象
6 単身赴任などの場合で、勤務地又は居所と自宅の間の帰宅旅費
7 次に掲げる支出で、勤務先が認めたもの(平成25年分以降)
(1) 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2) スーツなどの衣服費
(3) 交際費、接待費その他の費用

いずれも勤務先の証明が必要です。つまり会社がこれらの費用が確かに業務上かかっている、と認めた場合は控除の対象にしましょう、ということです。但し、それぞれの費目について、勤務先から補助が出る場合は当然ながら控除の対象にはなりません。

この特定支出控除を受けるためには、給与所得者であっても確定申告を行う必要があります。


3.所得控除

所得税の中には、他にも以下の通り所得から控除できる項目が設定されています。これを所得控除と言います。先にご紹介した給与所得控除と名称が非常に似ていますが、全く別物ですのでご注意ください。

所得控除の種類

内容

備考、留意点

雑損控除

災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合。

詐欺で資産を失った場合には対象にならないので要注意です。

医療費控除

納税者が自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合、その支払った医療費が一定額を超えるときは、控除することができます。

セルフメディケーション税制(欄外註参照)との選択適用です。

給与所得者であっても会社を通しての処理はできず、確定申告が必要です。

社会保険料控除

納税者が自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額について所得控除を受けることができます。

会社に「給与所得者の保険料控除申告書」を提出することで確定申告をすることなく年末調整で控除されます。

小規模企業共済等掛金控除

納税者が小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合には、その支払った金額について所得控除が受けられます。

確定拠出年金の掛金もこの控除の対象です。

会社に「給与所得者の保険料控除申告書」を提出することで確定申告をすることなく年末調整で控除されます。

生命保険料控除

納税者が生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。

会社に「給与所得者の保険料控除申告書」を提出することで確定申告をすることなく年末調整で控除されます。

地震保険料控除

納税者が特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料又は掛金を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。

会社に「給与所得者の保険料控除申告書」を提出することで確定申告をすることなく年末調整で控除されます。

寄附金控除

納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合には、所得控除を受けることができます。

寄付金がすべて控除の対象となるわけではないので都度確認が必要です。たとえば、私立学校に入学時に支払う寄付金は対象外となります。

障害者控除

納税者自身、同一生計配偶者又は扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。

寡婦控除

納税者が寡婦であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。

寡婦とは以下の人のことを言います。

(1)夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人

(2)夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人

ひとり親控除

納税者がひとり親であるときは、一定金額の控除を受けることができます。

勤労学生控除

納税者自身が勤労学生であるときは、一定金額の控除を受けることができます。

配偶者控除

納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合には、一定金額の控除が受けられます。

控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除は受けられません。

配偶者特別控除

配偶者に48万円(令和元年分以前は38万円)を超える所得があるため配偶者控除の適用が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられる場合があります。

扶養控除

納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。

会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する以外に個人で特段の手続は必要ありません。

基礎控除

納税者本人の合計所得金額に応じて控除できる金額です。

(※)国税庁タックスアンサーを基に筆者が加筆

(註)
セルフメディケーション税制:

別名「特定の医薬品購入額の所得控除制度」と言い、健康の維持増進及び疾病の予防への取り組みとして、一定の取り組み(特定健康診査・予防接種・定期健康診断・健康診査・がん検診)を行う個人が、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるものです。平たく言えば、指定の医薬品を購入したり予防接種を行ったりなどして「健康への取り組みを行って」いれば、その費用が年間で1万2,000円超となる場合、その超過部分の金額が所得控除を受けられるというものです。上限は8万8,000円となっています。


4.税額控除

所得控除と似た言葉に税額控除というものがあります。
これは算出された税額から控除される金額のことで、代表的なものを以下に示します。
これも所得税を軽減する効果があります。

①配当控除

日本国内に本店のある法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配、証券投資信託の収益の分配などで、確定申告において総合課税の適用を受けた配当所得が対象。
配当に関する取り扱いは若干複雑で、所得の扱いは3通りあります。

-源泉分離課税
NISA口座以外であれば所得税が既に天引きされている源泉分離課税となっています。そのまま課税関係を終了することも可能です。他の方式を選択すると所得税が還付される場合もありますので、どれが有利かを見極めたいところです。

-申告分離課税
確定申告の際に分離課税を選択することもできます。この場合は、上場株式の譲渡損失との損益通算をすることもでき、すでに源泉課税で納入している所得税が還付される可能性があります。

-総合課税
本項で示している配当控除が使えます。これは、配当所得を他の所得と合算して、配当の部分については一定の控除を認めるものです。合計所得が1,000万円までは配当控除は10%、1,000万円を超えると5%に圧縮されます。この方式を選択すると所得全体が大きくなりますので、還付される所得税と追加徴収される所得税を考えて有利不利を考える必要があります。一般的に合計所得が900万円以下の人にメリットのある税制です。

②住宅借入金控除

いわゆる住宅ローン控除という制度です。(住宅ローン控除の令和3年税制改正についてはこちら)住居をローンで購入した場合、年末のローン残高の一定程度まで税額が控除される制度です。住居を購入したタイミングによって控除額は異なります。

2021年度の制度概要は以下の通りです。

対象物件:床面積40㎡以上(合計所得が1,000万円以下の世帯)、床面積50㎡以上(合計所得が1,000円超の世帯)
税額控除が適用になる契約締結期限は、新築戸建ては令和3年9月30日まで、分譲住宅、中古住宅、増改築の場合は令和3年11月30日まで
入居期間は令和4年12月31日まで

控除額は一般住宅の場合で以下の通りです。

(入居年から10年目まで)
住宅ローンの年末残高(4,000万円が限度)の1%
(入居から11年目から13年目まで)
➀住宅ローンの年末残高(4,000万円が限度)の1%、あるいは②住宅取得の税抜対価(4,000万円限度)の2%を3で割った金額(消費増税2%分の一部負担軽減)のいずれか小さい額

わかりやすく言えば、住宅ローン残高の1%分が給付される、ということになります。これは、金利1%で借り入れている人がいたとすれば、該当する年度は実質無金利になるということを意味します。

③寄附金特別控除

国や地方公共団体、特定の法人などに寄付をした場合は、確定申告を行うことで、所得税及び復興特別所得税が還付される場合があります。4.項に寄附金控除があり、ちょっと紛らわしいですが、こちらは税額控除です。どちらか有利なほうを選択すればいいことになっています。


5.所得税の算出式

所得税は以下の通り計算されます。

(所得税)=(各種所得の金額-所得控除額)× 累進税率 – 税額控除

確定申告の際には、税務署のe-Taxシステムを使えば自動的に支払うべき(あるいは還付されるべき)税金が算出されますので便利です。


6.おわりに

今回は所得税を減ずるしくみである給与所得控除、所得控除、税額控除について触れました。税金を忌み嫌う人は多いですが、しくみ上は負担が特定の人に偏らないようにいろいろな要素を考えあわせて設定されているように思います。ぜひご自身が支払っている所得税に関心をもって見てみることをおすすめします。

税金は複雑で一筋縄ではいきませんが、いろいろと納税者に有利になるようなしくみが多々考えられています。うまく活用して効率的に納税したいものです。

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