プロラタとは? 採用するメリット・デメリット、手順から計算方法まで解説
プロラタ方式は、融資の返済計画をリスケジュールする際、複数の金融機関に対して平等な返済を行うための手法として用いられる返済方式です。
本記事では、プロラタ方式の概要、種類、計算方法、メリット・デメリットなどを解説していきます。
プロラタ(プロラタ方式)とは?
経営難などにより借入金の返済が難しくなった際には、返済計画を変更する「リスケジュール」を行います。
このとき、企業が複数の金融機関から借入している場合に、各金融機関への返済額を、借入残高によって決めることを「プロラタ方式」といいます。
プロラタ方式を用いることで、金融機関側は「特定の金融機関にだけ優先的に返済する」といった不公平を心配する必要がありません。
そのため、企業もスムーズな資金調達が可能になります。
プロラタ方式の種類
プロラタ方式には、以下の2種類があります。
- 残高プロラタ方式
- 信用プロラタ方式
それぞれの特徴を見ていきましょう。
残高プロラタ方式
残高プロラタ方式では、各金融への返済額を、借入額全体から見た割合によって決定します。
例えば、総額1,000万円を金融機関A、B、Cの3社から、以下の割合で借りていたとします。
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上記の条件でリスケジュールを行い、毎月総額100万円を、残高プロラタ形式に基づいて返済する場合、各金融機関に対する月々の返済額は以下の通りになります。
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信用プロラタ方式
信用プロラタ方式では、各金融機関への返済額を、無担保部分の借入額全体から見た割合によって決定します。
例えば、総額1,000万円を金融機関A、B、Cの3社から、以下の条件で借りていたとします。
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上記のケースでは、借入総額1,000万円のうち、50%にあたる500万円が無担保分になります。
各金融機関の借入額のうち、無担保分の借入総額500万円から見た割合は以下のとおりです。
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ここまでの条件でリスケジュールを行い、毎月総額100万円を、信用プロラタ形式に基づいて返済する場合、各金融機関に対する月々の返済額は以下の通りになります。
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プロラタを採用するメリット・デメリット
ここからは、プロラタ方式を採用する際の、メリットとデメリットをそれぞれ見ていきましょう。
メリット
企業がプロラタ方式を採用するメリットは、金融機関からの融資を受けやすい点です。
借入額の割合によって返済額が決定するプロラタ方式は、借入しているすべての金融機関に対して、同時期に返済を完了します。
そのため、金融機関は「返済を後回しにされるのではないか」という不安を抱くことなく融資することができます。
併せて、他行の動きを把握できる点も、金融機関にとっては安心材料となります。
結果として、企業は資金調達をスムーズに進められたり、全体の融資額を多くできたりする可能性があります。
デメリット
残高プロラタ方式と、信用プロラタ方式には、それぞれ異なるデメリットがあります。
残高プロラタ方式は、担保があっても月々に返済される割外が少なくならないため、担保がない出資者にとっては不利な仕組みといえます。
一方で信用プロラタ方式は、担保の割合が多いと、月々に返済される割合が少なくなるため、担保がある出資者にとって不利な仕組みです。
いずれの方式のプロラタにも共通の注意点として、以降、全ての金融機関が足並みを揃えざるを得なくなることがあります。
例えばさらなる追加融資が必要になった際、反対する金融機関が現れてしまうと、実現が難しくなるでしょう。
また、各銀行との取引内容が金融機関の間でオープンになるため、抜け駆けを狙っている金融機関からは敬遠される可能性があります。
プロラタを行う際の基本的な流れ
次に、プロラタ方式を利用する際の手順を見ていきましょう。
まずはじめに、各金融機関に対する借入残高を確認する必要があります。
ここでは顧問税理士や公認会計士などの専門家の手を借りましょう。
次に各金融機関に対して、プロラタ方式での支払いに合意してもらえるよう交渉しなければなりません。
この際にも、弁護士やM&A仲介会社といった専門家に依頼してください。
無事に合意が取れたら、返済計画に従って返済していきます。
プロラタの計算方法
下表は、プロラタ方式を採用した場合の、返済額の計算例です。
返済先 |
借入残高(総額に対する割合) |
残高プロラタの返済額(借入残高の総額に対する割合) |
担保額 |
無担保分(無担保分の総額に対する割合) |
信用プロラタの返済額(無担保分の総額に対する割合) |
---|---|---|---|---|---|
金融機関A |
500万円(50%) |
500万円(50%) |
200万円 |
300万円(60%) |
300万円(60%) |
金融機関B |
300万円(30%) |
300万円(30%) |
200万円 |
100万円(20%) |
100万円(20%) |
金融機関C |
200万円(20%) |
200万円(20%) |
100万円 |
100万円(20%) |
100万円(20%) |
合計 |
1000万円(100%) |
1000万円(100%) |
500万円 |
500万円(100%) |
500万円(100%) |
プロラタ返済実施のポイント
プロラタ方式を利用する場合の、返済時のポイントは以下のとおりです。
- 不平等な返済にならないようにする
- プロラタ返済は全行一致を目指す
それぞれ見ていきましょう。
不平等な返済にならないようにする
各金融機関への平等な返済を保証することで、融資を受けやすくなるという点が、プロラタ方式の本分です。
プロラタ方式自体は平等性を保ちやすい手法ですが、それであっても前述の通り、担保の有無などによって有利不利が生まれることはあります。
不平等感が残る状態では、プロラタ形式の利用を金融機関に納得してもらうことは難しいでしょう。
プロラタ返済は全行一致を目指す
プロラタ方式での返済は、すべての金融機関に対して同時に返済を終える「全行一致」が原則です。
そのためには、すべての金融先が納得できる形でリスケジュールを行わなければなりません。
プロラタ方式での返済に応じる金融期間と、応じない金融機関があった場合、各金融機関の間で不公平が生まれてしまうためです。
弁護士やM&A仲介会社などの専門家の力を借りながら、全行一致での返済を目指しましょう。
プロラタのまとめ
プロラタ方式の概要と種類、メリット・デメリットなどを紹介しました。
金融機関の不平等感を払拭することで融資を受けやすくするプロラタ形式は、企業にとっても、金融機関にとってもメリットのある方法です。
活用する際には専門家に依頼し、不平等感が生まれることのないよう、借入先のすべての金融機関が納得できる形を目指しましょう。
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