労務管理システムとは? 機能や効果、導入の流れまで解説
労務管理は、企業にとって非常に重要な業務の1つですが、その複雑さと業務量の多さから、担当者の負担も大きくなりがちです。
そこで注目されているのが、労務管理システムの導入です。労務管理システムを導入することで、業務の効率化と自動化を実現し、ミスの防止にも役立ちます。
本記事では、労務管理システムの定義や機能、導入のメリットなどを詳しく解説します。これから労務管理システムの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
労務管理システムとは
労務管理は、企業の人事部門が中心となって行う業務です。業務範囲はとても広く、従業員一人ひとりの入社から退職までの期間中、多くのことに対応しなければなりません。
労務管理システムは、こうした労務管理業務を効率的かつ正確に行うためのツールです。
労務管理システムの定義
労務管理システムとは、以下のような労務関連業務を一括で管理するシステムです。
- 従業員の入退社管理
- 社会保険・雇用保険の手続き
- 給与計算
- 勤怠管理
従来、これらの業務は紙ベースで行われており、書類の作成と管理に膨大な時間と手間がかかっていました。
しかし、労務管理システムを導入することで、データの電子化と自動処理が可能となり、企業の労務管理を柔軟かつ迅速に行えるようになります。
労務管理システムの重要性
近年、労務管理の重要性が高まっている背景には、働き方改革の推進や法令の改正などがあります。企業には、適切な労務管理を行い、コンプライアンスを徹底することが求められています。
しかし、労務管理業務は複雑で専門的な知識が必要とされるため、担当者の負担が大きくなるものです。
労務管理システムを活用することで、業務の自動化と標準化が進み、ミスの防止と業務の品質向上に期待できます。
また、蓄積された労務データを分析することで、適切な人材配置や育成にも活用できます。労務管理システムは、企業側と従業員側の双方にとってメリットがあると言えるでしょう。
労務管理システムの機能
労務管理システムには、労務管理に役立つ機能が多数搭載されています。ここでは、以下の代表的な機能について解説します。
- 入退社管理
- 社会保険・雇用保険の手続き
- 従業員情報・マイナンバー管理
- 年末調整
- 給与計算・勤怠管理
- 電子申請
こうした機能を活用することで、自社の生産性と従業員満足度の向上に大きく貢献できるでしょう。
入退社管理
入社手続きは、労務管理のなかでも特に煩雑な業務の1つです。新入社員の個人情報を収集し、雇用契約書の作成、社会保険や雇用保険の加入手続きなど、多数の書類の準備と提出が必要です。
労務管理システムでは、これらの手続きを電子化・自動化できます。たとえば従業員の個人情報の入力フォームを用意し、必要な情報を収集するだけで、各種書類の作成が自動的に行われます。
社会保険・雇用保険の手続き
社会保険と雇用保険は、労務管理のなかでも特に重要な手続きです。加入や脱退の手続き、保険料の計算と納付などの業務が定期的に発生します。これらの手続きは、法令に基づいて行う必要があるため、専門性や正確性が求められるでしょう。
労務管理システムでは、社会保険や雇用保険の手続きに必要な書類の作成と保険料の計算を自動化できます。従業員の情報を基に、必要な書類を自動で作成してくれるため、大幅な効率化につながるでしょう。
従業員情報・マイナンバー管理
従業員の個人情報を適切に管理することは、企業にとって重要な責務です。
特に、マイナンバーについては、法律で厳格な管理が義務付けられています。労務管理システムでは、従業員情報とマイナンバーを一緒に管理できます。
このシステムによって、従業員のマイナンバーの収集・保管・利用・廃棄などのプロセスを一元化できるため大幅な効率化に期待できるでしょう。
また、アクセス権限の設定をすることで不正アクセスを防止し、情報漏えいのリスクを低減させることも可能です。安全対策をしたうえでマイナンバーの利用状況の記録ができるため、後のリスク管理にも大いに役立つはずです。
年末調整
従業員の所得税額を精算するために行う年末調整の手続きは、何かと手間がかかります。
従業員1人の年末調整をするために、各従業員から提出される書類の確認に、控除額の計算、源泉徴収票の作成など、多数の対応をしなければなりません。
労務管理システムでは従業員が自身の情報を入力するだけで、必要な書類の作成と自動計算が可能です。システムから従業員に年末調整の案内メールを送信することもでき、従業員に対する書類提出の依頼や催促も容易になります。
給与計算・勤怠管理
給与計算は、労務管理のなかでも最も重要な業務の1つです。従業員の勤怠情報を基に給与や賞与の計算を行い、振り込みの処理をします。
勤怠管理も、労働時間の適正な把握と管理が求められる業務です。しかし労務管理システムでは、勤怠情報の収集と集計を自動化し、給与計算に連動させることで時間や労力を削減できます。
さらに、勤務パターンや残業時間などの分析を行うことも可能です。
電子申請
労務管理システムには、電子申請に対応しているものが多くあります。
システムから必要な情報を抽出し、申請様式に合わせて自動的にデータを作成することで、担当の官公庁への申請の手間を省けます。システム上で申請状況の確認や受付番号の管理なども行えるため、業務の生産性や効率アップに期待できるでしょう。
労務管理システムを導入するメリット
労務管理システムを導入することで、以下のようなメリットに期待できます。
- 業務の効率化と自動化による時間短縮
- ペーパーレス化によるコスト削減
- 人的ミスの防止と法令遵守の徹底
- データの一元管理による情報活用
それぞれについて、詳しく解説します。
業務の効率化と自動化による時間短縮
労務管理システムを導入することで、業務の自動化と効率化が進みます。たとえば従業員情報の入力や変更、社会保険の加入・脱退手続き、年末調整の計算などは、労務管理システムが自動的に行います。
これによって担当者が手作業で行っていた作業の多くが自動化されるため、大幅な時間短縮が可能です。
短縮できた時間はほかの優先順位の高い業務に充てられるうえ、従業員のモチベーション向上にもつながります。
ペーパーレス化によるコスト削減
労務管理システムを導入することで、書類の電子化が進み、ペーパーレス化の後押しとなるでしょう。
労務管理業務では、大量の書類が発生します。これらの書類を印刷・保管・廃棄するためには、多くのコストがかかるものです。労務管理システムによって、印刷コストや保管スペースの削減に期待できます。さらに書類の検索や共有も容易になるため、業務の効率が上がるでしょう。
また、ペーパーレス化は環境負荷の低減にも貢献するため、企業のイメージアップにもなるはずです。
人的ミスの防止と法令遵守の徹底
労務管理業務では、常に正確性が求められます。しかし、全ての業務を手作業で行っている場合、人的ミスを完全に防ぐことは難しいものです。常にコンプライアンス違反のリスクを抱えていると言ってもよいでしょう。
労務管理システムでは、入力チェック機能や自動計算機能により、ミスの防止と法令遵守の徹底が可能です。また、システムに蓄積されたデータは、監査の際の証跡としても使用できるため、企業のリスクマネジメントとしても活用できるでしょう。
データの一元管理による情報活用
労務管理に関する情報は、従業員の個人情報から勤怠・給与情報まで、多岐にわたります。これらの情報を別々のシステムで管理していては、情報漏えいのリスクやシステムを越えてのデータの活用は難しいでしょう。
労務管理システムを取り入れることで、様々な情報を一元的に管理できます。従業員の勤怠データが取得・蓄積できれば、労働時間や一人ひとりにかかる人件費が適切なのかが視覚化されます。
まだ気付いていない労働環境の課題に、早々に気付けるかもしれません。人材の適正配置や教育研修の計画、労務コストの最適化などの人事施策にも活用できるでしょう。
労務管理システムの選び方
労務管理システムには、多様なタイプのものがあります。以下のような観点から、自社に合ったシステムを選ぶことが重要です。
- クラウド型かオンプレミス型か
- 機能の充実度と拡張性
- ほかのシステムとの連携性
- 価格と契約形態
- サポート体制の充実度合い
それぞれのポイントを解説します。
クラウド型かオンプレミス型か
労務管理システムには、クラウド型とオンプレミス型の2種類があります。それぞれの違いをまとめると、下記のとおりです。
クラウド型 |
オンプレミス型 |
|
使用方法 |
インターネット経由でサービスを利用する |
自社のサーバーにシステムを構築する |
導入コスト |
低い |
高い |
運用コスト |
低い |
高い |
自由度の高さ |
低い |
高い |
アップデートの要否 |
不要 |
必要 |
最近では、コストと利便性の面からクラウド型の導入を検討する企業が増えています。しかし企業によっては、オンプレミス型のほうが適していることもあるでしょう。
機能の充実度と拡張性
労務管理システムの機能は、基本的なものから高度なものまで様々です。自社の業務内容や規模に合わせて、必要な機能を備えたシステムを選ぶことが重要です。
将来的な業務の拡大や変化にも対応できるよう、拡張性の高いシステムを選ぶとよいでしょう。途中で新しいシステムを個別に導入した場合、既存のシステムとの連携が上手くできない可能性があるからです。
ほかのシステムとの連携性
労務管理システムは人事情報を扱うシステムであるため、ほかの人事関連システムとのスムーズな連携が重要です。たとえば人事関連システムには、以下のようなものがあります。
- 採用管理システム
- 人事評価システム
- 勤怠管理システム
これらのシステム同士でデータの連携ができれば、業務の効率化とデータ活用の幅が広がるでしょう。連携方式としては、APIやCSV連携などがあります。自社のほかのシステムとの連携要件を確認し、最適な連携方式を選択しましょう。
価格と契約形態
労務管理システムの価格は、導入時の初期費用と月額の利用料で構成されるのが一般的です。利用人数や機能に応じて、価格が異なるものもあります。
契約形態も、買い切り型とサブスクリプション型など特徴の異なるものがあります。自社の予算や利用期間に合わせて、最適な価格と契約形態を選ぶことが重要です。あらかじめ契約期間や解約条件なども確認しておきましょう。
サポート体制の充実度合い
労務管理システムを導入しても、操作方法がわからなかったり、トラブルが発生したりすることがあります。そのような時のサポート体制が充実しているかどうかは、システム選びの大きなポイントになるでしょう。
サポート体制の充実度は、システム導入後の問い合わせへの対応力や機能の学習サービスで評価されます。一言でサポート方法と言っても以下のようなものがあり、どれを採用しているかはメーカーによって異なります。
- 電話
- メール
- チャット
- オンラインでのセミナー
- FAQページでの回答
「不明点をその場で解決したいので、電話対応してくれるところがよい」「テレワークをしているので、メールやチャットで回答がもらえたほうが助かる」など、自社に合ったサポート体制を備えたシステムを選びましょう。
労務管理システム導入の流れ
労務管理システムの導入を検討する際は、適切な手順を踏むことが重要です。導入までの主な流れは、以下のとおりです。
- 課題の洗い出しとシステム選定
- セキュリティ対策の確認
- 運用方法の検討と社内体制の設備
- 導入スケジュールと移行プラン
それぞれの手順で注意すべき点とともに、解説します。
1.課題の洗い出しとシステム選定
まず、自社の労務管理業務の現状を把握し、課題を洗い出すことから始めましょう。特に以下の点は、具体的に書きだします。
- 業務で感じる非効率な部分
- ミスが発生しやすい箇所
- コンプライアンス上の問題点
具体的な問題点を挙げることで、考えられる対策もより具体的になります。そのうえで、課題を解決するために必要なシステムの機能や要件を明確にしましょう。また、複数のシステムを比較検討することで、自社の課題解決に最も適したシステムを選定できます。
2.セキュリティ対策の確認
選定したシステムのセキュリティレベルを確認し、自社の基準を満たしているかどうかを確認します。以下のような機能を備えているかは、よくチェックしてください。
- データの暗号化
- アクセス制御
- ウイルス感染への対策
労務管理システムでは機密性の高い従業員情報を扱うため、セキュリティ対策は重要視すべき点です。メーカーで行っているセキュリティ対策や、プライバシーマークの認証取得状況も事前に確認しておきましょう。これらの有無を確認しておくことで、後に起こるトラブルを未然に防ぎやすくなります。
3.運用方法の検討と社内体制の整備
労務管理システムを導入すると、業務フローや処理手順が変更になることがあります。その場合は、システムの運用方法を検討し、関連部署との調整を行いましょう。
また、システムを利用する担当者の役割分担を明確にし、必要に応じて教育やトレーニングを実施します。セキュリティ対策やデータ管理など、システム運用に必要なルールを策定し、周知徹底を図ることも重要です。
4.導入スケジュールと移行プラン
システムの導入までには、一定の期間が必要です。余裕を持った導入スケジュールを立て、計画的に進めていくことが重要です。
始めに現行の労務管理業務から新しいシステムへの移行手順を検討し、移行プランを作成してください。移行期間中は新旧のシステムを並行して運用することになるため、それぞれのデータの整合性を保つことが大切です。
まずは、担当者がデータを適切に処理できるようにすることから始めましょう。本番稼働前にはテスト運用を行い、システムの動作確認と課題の抽出を行うことを推奨します。
おすすめの労務管理システム比較3選
労務管理システムの導入により、従業員の勤怠管理や給与計算が自動化され、業務効率が大幅に向上します。また、業務の見える化により、適切な人員配置や業務改善にも活用できるでしょう。
労務管理の課題解決や生産性向上のために、ぜひ労務管理システムの導入をご検討ください。
ここでは、おすすめの労務管理システムを3つ紹介します。自社の課題と照らし合わせながら、それぞれの特徴を確認してみてください。
freee人事労務 - freee株式会社
- 最新の法令・税制に自動で対応
- 最新技術と高水準のシステムで安心のセキュリティ
- 給与計算や年末調整などに必要な情報を一元管理
オフィスステーション労務 - 株式会社エフアンドエム
- 納得の110種類の帳票対応
- 他社システムとAPI連携ができる
- 入退社手続きがわずか19分で可能に
マネーフォワード クラウド人事管理 - 株式会社マネーフォワード
- 入退社や異動の手続きがオンラインで簡単に
- 多様な従業員情報を過去から未来まで一元管理
- 周辺サービスと連携し、従業員マスタを正しく管理
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労務管理システム導入で業務効率化を実現しよう
労務管理システムは、企業の人事部門にとって必要不可欠なツールと言えるでしょう。システムを導入することで、業務の自動化と効率化を実現し、ミスの防止とコンプライアンスの徹底にも役立ちます。また、蓄積されたデータを活用することで、戦略的な人事施策の立案にもつなげられます。
システム選びの際は、自社の課題と要件を明確にし、機能や価格、サポート体制など、様々な観点から比較検討することが重要です。自社に最適なシステムを選ぶことで、業務効率と従業員満足度を向上させられるでしょう。まだ労務管理システムを導入していない企業は、ぜひ検討してみることをおすすめします。