電子契約は書面契約と何が違う? 企業に導入するメリットや注意点について
電子契約を導入することで、書面の契約よりもコストを削減し、業務効率化を図ることができます。
本記事では、電子契約の概要や種類、導入のメリット、関連する法律などを解説していきます。
電子契約の導入を検討中の方はぜひ参考にしてください。
電子契約とは
電子契約とは、電子文書に電子署名をすることで成立する契約のことを指します。インターネット回線を介して行われることが多く、また、国税庁が定義する電子取引の一種でもあります。
書面契約との違い
電子契約と、従来の書面契約の最大の違いは、物理的な紙の契約書があるかどうかです。
保存方法についても違いがあります。書面契約では、署名と捺印をおこなった紙の契約書を、契約に合意した双方が保管する必要がありました。一方で電子契約の場合は、紙に出力する必要はなく、電子データのままで保管することが可能です。
また、書面契約では課税される印紙税が、電子契約であれば非課税となる点も見逃せない相違点でしょう。
電子契約の証拠力の有無
電子契約は、電子署名があることによって証拠能力を持ちます。契約書などの文書は、民事訴訟法228条にもとづき、その文書が契約者本人の意思によって作成された証拠としての能力を持つ必要があります。書面契約の場合は、本人の署名か押印によって証拠能力をもつことが、同じく民事訴訟法228条によって規定されています。一方で電子契約については、電子署名法第3条によって、電子署名があるものに限り、署名された書面契約書と同等の証拠能力を持てるとされています。
電子契約のやり方は2種類
電子契約には、立会人型と当事者型の2種類があります。それぞれの違いを解説します。
立会人型
立会人型とは、第三者の電子契約事業者が立会人として電子署名を付与する形式の電子契約です。立会型の本人確認にはメール認証を主に用います。ランダムに生成されたURLを契約者にメールで送信し、そこにアクセスすることで本人であることを確認します。当事者型よりも導入しやすいことが特徴です。
当事者型
当事者型とは、立会人を介さずに行う電子契約です。当事者型の電子契約をおこなうには、電子証明書が格納されたICカードやファイルが必要になります。ICカードやファイルは、審査機関である認証局に本人確認書類を提出することで、発行してもらえます。手元に届いたICカードやファイルを用いて電子署名を付与しましょう。当事者型の電子契約は、立会人型よりも手間がかかりますが、立会人型よりも法的効力が高いです。
企業が電子契約を導入するメリット
企業が電子契約を導入するメリットとして、次のようなものがあります。
- コンプライアンスの強化
- 印紙コストの削減
- 手続きの簡略
- 契約書の保管スペースを削減
それぞれ見ていきましょう。
コンプライアンスの強化
紙の契約書は、内容の改ざんに対して証明することが困難です。一方、電子契約ではデータログが残るため、内容の改ざんが起こりにくいというメリットがあります。
印紙コストの削減
紙の契約書の場合は、契約金額の大きさに応じた印紙を貼る必要があります。一方、電子契約では印紙を貼る必要がないため、コストの削減が図れます。
手続きの簡略化
紙の契約書の場合は、作成して印刷をし、押印をして郵送するという手続きが必要です。電子契約の場合は、このような一連の手続きを省略することができるため、業務の効率化が図れます。
契約書の保管スペースを削減
紙の契約書の場合は、重要書類のためキャビネットなどに保管しておく必要があります。電子契約の場合は、データを保存すればよいため、保管スペースなどの必要がありません。
電子契約を導入する際の注意点
企業が電子契約を導入する際には、次の点に気をつける必要があります。
- 相手の同意が必要
- 書面での契約が義務付けられている場合がある
- 業務フロー変更の周知
- 他のシステムとの連携が可能か
相手の同意が必要
契約には双方の同意が必要です。自社で電子契約を導入したとしても、相手が電子契約に同意しなければ、契約を進めることはできません。電子契約の可否については契約交渉の中で確認しておきましょう。また、はじめて電子契約を導入する取引先に向けて、マニュアル等を準備しておくとスムーズな実施につながります。
書面での契約が義務付けられている場合がある
一部の契約では、消費者保護などの観点から、紙の契約書を作成することが法律で義務付けられているケースがあります。紙での契約が義務付けられている契約書としては、以下のようなものがあります。
- 事業用定期借地契約
- 任意後見契約書
- 企業担保権の設定又は変更を目的とする契約
- 特定商取引(訪問販売等)の契約等書面
業務フロー変更の周知
従来の紙の契約書とは業務フローが異なるため、社員への教育などが必要です。事前の研修や、マニュアル・Q&Aなどの作成を行い、導入後のトラブルが起こらないよう努めましょう。
現在使用している他のシステムとの連携が可能か
導入した電子契約のシステムが、現状社内で使用している顧客管理システムや会計システムなどと連携できるかどうかも、重要なポイントです。連携できるシステムは電子契約システムごとに異なります。多くは電子契約サービスのホームページに記載されているため、参照した上で比較・検討すると良いでしょう。
電子契約にかかわる法律
ここでは、電子契約を導入する上で抑えておきたい法律について解説していきます。
電子署名法
電子署名法は、電子署名が文書にあたえる法的効力について規定した法律です。
電子署名法3条には以下のような内容となっており、電子署名が持つ法的効力の根拠となっています。
電子署名法第3条:電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は、税にかかわる電子データの保存方法について規定する法律です。電子帳簿保存法施行規則第3条第1項では、電子データの保存について、真実性と可視性の両方を確保する必要があると定めています。
IT書面一括法
IT書面一括法は、契約書などの文書のやりとりに、電子メールをはじめとする情報通信技術を利用できるように定めた法律です。正式名称を「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」といいます。
e-文書法
2005年に定められたe-文書法は、従来紙での保存が義務付けられていた書類を、電子データで保存できるよう規定した法律です。正式には以下の2つの法律の総称です。
- 「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」
- 「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」
印紙税法
印紙税法により、契約書などの文書を紙で作成した際には、印紙税として契約金額に応じた収入印紙を購入し、文書に貼り付けておかなければなりません。ただし印紙税法における「文書の作成」は「課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使すること」と定義されいるため、物理的な「用紙等」が存在しない電子契約には当てはまらないとされています。よって、電子契約の場合は印紙税がかかりません。
民法
民法522条2項では、契約の成立において、紙の契約書は必ずしも必要ないことが規定されています。
電子契約についてのまとめ
電子契約とは、電子文書に電子署名をすることで成立する契約のことです。電子署名を付与することで署名と同等の法的効力を持ち、税制などの面でもメリットがあります。ぜひこの機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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