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慶弔見舞金規程の作り方  慶弔見舞金制度の概要と種類 その3

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

慶弔見舞金規程の作り方  慶弔見舞金制度の概要と種類 その3

従業員向け慶弔見舞金の税務

慶弔見舞金の贈呈は社会的慣行であり、儀礼的な行為と認められています。慶弔に関する金品の受領について課税するのは妥当でないとして、一定の条件を満たす場合は非課税扱いとされています。


従業員に対する慶弔見舞金の税務上の取り扱い

1.祝い金の税務上の取り扱い

労働規約、就業規則、慶弔見舞金規程等の規定により、または慣習によって、従業員または役員に対して支給される結婚祝い金や出産祝い金、子女の入学祝い金については、使用者の一方的な給付または贈与ではなく、雇用関係における使用人、委任関係における受任者としての地位に基づいて支給されると認められますので、本来は給与等として取り扱われるべきものです。

しかし、このような祝い金の贈答は社会的な慣習として行われているところであり、一概に委任者と受任者、使用者と使用人という関係の下で交付されるものとはいえないため、社会常識に照らして相当な金額のものには課税せず、福利厚生費等として処理することが認められます。なお、福利厚生費等として処理した金額が社会通念上過大と認められる場合は、その全額が給与等として取り扱われますので注意してください。

これには、次の通達が適用されます。

「使用者から役員又は使用人に対し雇用契約等に基づいて支給される結婚出産等の祝い金品は、給与等とする。ただし、その金額が支給を受ける者の地位等に照らし、社会通念上相当と認められるものについては、課税しなくて差し支えない」(所得税基本通達二八―五《雇用契約等に基づいて支給される結婚祝金品等》)

この通達は、各種祝金品に対する課税の取り扱いを規定したものであり、本来は原則課税ですが、通達で規定された一定の条件に適合すれば、非課税扱いとして差し支えないとするものです。

一定の条件とは、

  • 雇用契約等に基づいて支給されるものであること
  • 結婚・出産、入学等の祝い金品の支給であること
  • 金額が受給者の地位に照らして社会通念上相当と認められること

当該通達の趣旨は、社会的慣行の尊重および少額非課税の原則によるものです。

2.傷病見舞金の税務上の取り扱い

会社が支給した見舞金は、社会通念上相当と認められる金額が福利厚生費等として損金に算入されます。社会通念上相当と認められる金額を超える部分の金額は賞与とされ、所得税の課税対象となります。役員に支給したものであれば法人税法上損金の額に算入されませんので注意してください。

ここで、社会通念上相当と認められる金額がいくらかということについては、法人税法等に規定はありませんが、役員に対する見舞金は五万円が相当であるとする国税不服審判所の裁決例があります。

3.災害見舞金の税務上の取り扱い

法人が、災害により被害を受けた従業員等またはその親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金品は、福利厚生費として損金の額に算入されます。

4.死亡弔慰金の税務上の取り扱い

慶弔見舞金規程等の一定の基準により支給され、かつ社会通念上相当な金額の範囲内であれば、福利厚生費として損金に算入され、支給を受けた遺族についても相続税の課税対象にはなりません。

5.社葬費用の税務上の取り扱い

税法では、故人の経歴、生前の地位、会社発展のために顕著な業績を上げたなどの会社への貢献度、ならびに会社の規模その他の事情に照らして、社葬を行うことが社会通念上相当であると認められ、社葬のために通常要する費用であれば、福利厚生費として損金算入することが認められています。参考までに、社葬費用として認められるものは、葬儀社への支払い、式場の賃借料、僧侶・神官等に対する謝礼およびこれに付随する費用、通夜の接待費を含める葬儀終了までの飲食物の費用、葬儀に要した弁当代、交通費、事務用品、心付け等の雑費、遺体の搬送費などが挙げられます。

会社の規模、死亡した人の社会的地位や功績から見て、妥当と認められる範囲において損金として取り扱われます。過大な葬儀費用や葬儀に含まない費用を会社が支払った場合は、死亡した本人への退職給与または賞与として取り扱われることもあるので、注意が必要です。なお、会葬者が持参した香典等は法人の収入とせず、遺族の収入とすることができます。

注意が必要なのは、社葬の費用を損金とするためには、社葬を執り行うことを決めた取締役会の議事録が必要であるということです。議事録がないと、いくら経費としての領収書がそろっていても、認められません。


取引先に対する慶弔見舞金の税務上の取り扱い

得意先、仕入先など社外の者の慶弔、禍福に際し支出する金品等の費用は、原則として交際費として取り扱われます。ただし、以下に掲げる場合は交際費として取り扱われません。以下、災害復旧を目的とした見舞金等の措置について税務上の取り扱いを記します。

  1. 法人が、自社の従業員等と同等の事情にある専属下請け先の従業員等又はその親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金品についても、同様に損金の額に算入されます。
  2. 法人が、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先の復旧過程においてその取引先に対して行った災害見舞金の支出、事業用資産の供与等のために要した費用は、交際費等に該当しないものとして損金の額に算入されます。
  3. 法人が、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として売掛金、貸付金等の債権を免除する場合には、免除することによる損失は寄付金又は交際費等以外の費用として損金の額に算入されます。また、既契約のリース料、貸付利息、割賦代金の減免を行う場合および災害発生後の取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様に取り扱われます。
  4. 法人が、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として低利または無利息による融資を行った場合における通常収受すべき利息と実際に収受している利息との差額は、寄付金に  該当しないものとされます。
  5. 法人が、不特定または多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、寄付金または交際費等に該当しないもの(広告宣伝費に準ずるもの)として損金の額に算入されます。

現物支給の場合

慶弔見舞金の支給は、必ずしも現金であるとは限らず、現物・品物である場合もあります。その場合の価額は次の方法で評価されますので、社会通念上の相当額を超えないよう注意することが必要です。

  1. その品物が通常他に販売するものである場合には、その通常の販売価額。
  2. その品物が通常他に販売するものでない場合には、その品物と類似のもので通常売買される価格。

ただしその品物が、役員または従業員に支給するため使用者が購入したものであり、かつその購入時からその支給までの間にその価額にさほど変動がないものであるときは、その購入価額によることができます。


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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

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著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

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