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もしも経理をやることになったら… 経理の仕事シリーズ 経理業務Q&A④ 減価償却

著者: 中小企業診断士  髙岡 健司

もしも経理をやることになったら… 経理の仕事シリーズ 経理業務Q&A④ 減価償却

初めて経理担当になった方向けに経理の仕事を紹介する経理の仕事シリーズ。

今回は、「減価償却」についてQ&A形式で詳しく解説していきます。


1.減価償却の概要について教えて下さい。

国税庁HPにおいて、減価償却は次のように解説されています。

事業などの業務のために用いられる建物、建物付属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。

このような資産を減価償却資産といいます。他方、土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません。

例えば、工場で新たに新商品を製造するために、500万円の機械装置を購入し現金で支払ったとします。この場合、機械装置を購入した年に500万円全額を経費算入しても良いのでしょうか?

新たに導入した機械装置は、今後毎年収益を生んでいきます。機械装置は毎年収益を生むのに対して、購入した初年度に購入費用全額を費用計上した場合、期間ごとに発生する収益と費用が対応していません。

期間ごとに発生する収益と費用を対応させることを「費用収益対応の原則」といいます。

先ほどの例でも、新たに購入した機械装置が今後5年に渡って稼働することが可能であれば、5年間に渡り経費算入しなければなりません。

<仕訳例>

①工場で新たに新商品を製造するために、機械装置を導入し現金で500万円支払いした。

借方

貸方

機械装置 5,000,000

現金 5,000,000

②1年後の決算において、機械装置(耐用年数5年)を減価償却した。

借方

貸方

減価償却費 1,000,000

機械装置 1,000,000

このように機械装置の耐用年数に渡って、減価償却として費用計上していきます。

この場合、減価償却費を費用計上していますが、実際に現金などの支出がある訳ではありません。購入費用は機械装置を購入した初年度に現金で支払っています。

減価償却は現金支出が伴わない費用であることを覚えておきましょう。


2.「定額法」と「定率法」はどちらを選択すれば良いですか?

まずは、減価償却の償却方法である「定額法」「定率法」について説明します。

①定額法

定額法は毎年同額を減価償却として計上する償却方法です。

<定額法の計算方法>

定額法の減価償却費=取得価額×定額法の償却率

毎年同額を減価償却として計上するために、非常に分かりやすい方法といえます。

②定率法

定率法は取得価額に定率法の償却率をかけて減価償却額を算出します。

<定率法の計算方法>

定率法の減価償却費=末償却残高×定率法の償却率

定額法は毎年同額を減価償却費として計上しますが、定率法の場合、減価償却する額は毎年異なります。また、定率法での減価償却額は初年度が一番高く、年数が経過するにつれて減少していきます。

定額法と定率法のどちらを選択すべきかについては、個人事業主と法人で基準が変わります。

①個人事業主の場合

個人事業主は定額法による減価償却が原則になります。

ただし、機械装置、車両運搬具、工具器具備品については定率法による償却が認められています。

②法人の場合

法人の減価償却基準は下記の通りになります。

建物、建物付属設備、構築物、ソフトウエアは定額法による減価償却を行います。

機械装置、車両運搬具、工具器具備品は原則、定率法による減価償却が基準となります。

ただし、定額法を選択することもできます。

     <個人事業主>            <法人>

定額法

定率法

定額法

定率法

建物

×

×

建物付属設備

×

×

構築物

×

×

機械装置

選択可

選択可

車両運搬具

選択可

選択可

工具器具備品

選択可

選択可

ソフトウエア

×

×

建物、建物付属設備、構築物、ソフトウエアは定額法しか選択することができません。

しかし、機械装置、車両運搬具、工具器具備品については定額法、定率法のいずれかを選択することができます。


3.「旧定額法」「旧定率法」とはどのようなものですか?

平成19年度の税制改正において、減価償却の方法について改正がありました。

平成19年3月31日以前に取得した資産については、改正前の減価償却方法が適用されることから、名称が定額法から旧定額法、定率法から旧定率法に改められました。

①旧定額法と定額法の違い

毎年同じ金額を減価償却費として計上することに変わりありません。

ただし、減価償却の算出方法に違いがあります。

<旧定額法と定額法の算出方法>

旧定額法

定額法

算出方法

(取得価額―残存価額)×償却率

取得価額×償却率

旧定額法では取得価額から残存価額を引くことが特徴です。

残存価額は取得価額の10%であり、

旧定額法の減価償却=(取得価額×0.9)×償却率

と表すこともできます。

残存価額は、固定資産において法定耐用を経過したあとに残る価値を表します。法定耐用年数を過ぎた後においても、固定資産自体は無価値にはならないために残存価額が定められていました。

残存価額については、平成19年の税制改革によって廃止となり、現在の定額法では1円までの減価償却が可能となりました。

②旧定率法と定率法の違い

定率法については、固定資産などを購入した年月により償却方法が変わります。

購入時期

償却方法

平成19年3月31日以前に取得した資産

旧定率法

平成19年4月1日~平成23年3月31日までに取得した資産

250%定率法

平成23年4月1日以降に取得した資産

200%定率法

平成19年3月31日以前に取得した資産の償却方法は旧定率法になります。

平成19年の税制改正により平成19年4月1日以降に取得した資産は250%定率法にて減価償却を算出します。

250%定率法とは、定額法で計算した減価償却額の250%、つまり2.5倍にて減価償却額を計上するものです。

<250%定率法の計算方法>

100万円の固定資産を取得し5年の定額法で償却した場合は毎年20万円ずつ減価償却することになります。この場合の償却率は20万円÷100万円=0.2です。

250%定率法の償却率は、定額法の償却率0.2の2.5倍である0.5になります。

平成23年に税制改正があり、平成23年4月1日以降に取得した資産は200%定率法にて償却することになりました。

③改定償却率、償却保証額、保証率について

定率法を計算する際に「改定償却率」「償却保証額」「保証率」という言葉が出てきます。

実際の計算例をあげて説明していきます。

<定率法の償却率>

まずは償却保証額から説明します。

償却保証額とは減価償却の最低基準です。

償却保証額=取得原価×保証率

で算出します。

例えば、取得原価100万円の固定資産を取得し、耐用年数5年 200%定率法で償却する場合で考えていきましょう。

償却保証額=取得原価1,000,000円×保証率0.10800=108,000円

になります。

償却保証額は減価償却の最低ラインであり、減価償却額は108,000円を下回ってはいけません。

では実際に減価償却額を算出していきます。

1年目
帳簿価額1,000,000円×償却率0.4=400,000円

2年目
帳簿価額 600,000円(1,000,000円-400,000円)×償却率0.4=240,000円

3年目
帳簿価額 360,000円( 600,000円-240,000円)×償却率0.4=144,000円

4年目
帳簿価額 216,000円( 360,000円-144,000円)×償却率0.4= 86,400円

4年目まで計算してきましたが、ここで償却保証額を思い出して下さい。

4年目の減価償却額86,400円が償却保証額108,000円を下回っています。

償却保証額を下回った場合は「改定償却率」を用いて減価償却を算出します。

耐用年数5年の改定償却率は0.5であることから

4年目
帳簿価額 216,000円×改定償却率0.5=108,000円

5年目は残存価額1円になるまで減価償却を行います。

5年目
帳簿価格 108,000円-残存価額1年=107,999円


4.一括償却資産と少額減価償却資産とはどのようなものですか?

一括償却資産は、取得価額が10万円以上20万円未満の資産を個別管理せずに3年で償却するものです。一括償却資産という名称ではありますが、3年で償却します。

少額減価償却資産は、取得価額が10万円以上30万円未満の資産を事業年度において全額償却するものです。少額減価償却という名称ではありますが、その事業年度で全額償却します。

このように名称と償却方法が合わないことが混乱を招きやすくしています。

取得価額が10万円以上20万円未満の場合、一括償却資産と少額減価償却資産のどちらかを選択することが可能です。節税効果が高いのは少額減価償却資産を選択した場合です。

ただし会社が赤字計上した場合は、少額減価償却資産で全額償却しても節税効果は無いので注意しましょう。


最後に

今回は減価償却について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。

減価償却については、経理初心者にとって分かりにくい論点かもしれません。

今回の記事を読んでいただき減価償却についての理解を深めていただけたら幸いです。

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著者プロフィール

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髙岡 健司

中小企業診断士

PROFILE

ライター,コンサルタント

1975年生まれ,栃木県足利市出身。埼玉大学経済学部卒

2020年中小企業診断士登録

地方銀行を24年勤務後、コンサルタント事務所に転職。

得意分野は財務支援、資金繰り支援。

お問い合わせ先

株式会社プロデューサー・ハウス

Web:http://producer-house.co.jp/

Mail:info@producer-house.co.jp

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