トライアル雇用助成金「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース・新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース」
新型コロナウイルス感染症の終息までには、まだ時間がかかりそうです。
昨年からの自粛要請などは雇用や就業に大きな影響を及ぼしており、令和3年6月4日現在、雇用調整の可能性がある事業所数は130,030事業所、解雇等見込み労働者数は105,974人となりました(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」)。
こうしたなか、厚生労働省では離職者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的として、トライアル雇用助成金に「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース・新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース」を設けました。
今回は、「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース・新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース」をご紹介します。
実質的な失業者数は?
新型コロナウイルスの感染拡大は、パートやアルバイトなどの非正規雇用労働者に多大な影響を与えています。令和3年2月に野村総合研究所(NRI)が行った調査によると、パート・アルバイトのうち「実質的失業者」は女性103.1万人、男性43.4万人となっています(「シフト5割以上減」で「休業手当なし」の人を実質的失業者と定義)。先の厚生労働省の調査よりも実態に近いという声もあり、離職者のみならず、こうした方々の支援や雇用機会の創出が喫緊の課題となっています。
コロナ禍における新たなコース
トライアル雇用とは、雇用のミスマッチを防ぐための「お試し雇用」ができる制度です。お試し期間は3か月間で、トライアル雇用期間中は助成金がもらえます。
さて、今般のコロナ禍において、トライアル雇用助成金に「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース」と「新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース」が設けられました。これらは、新型コロナウイルス感染症の影響により離職を余儀なくされた方を一定の条件で雇用した事業主を支援するものです。
【トライアル雇用助成金「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース・新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース」】
新型コロナウイルス感染症の影響により離職を余儀なくされた方で、離職期間が3か月を超え、かつ就労経験のない職業に就くことを希望する求職者を、無期雇用契約へ移行することを前提に、一定期間試行雇用(トライアル雇用)を行う事業主に対して助成することにより、離職者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的とした助成金
なお、今年3月16日から、離職者だけでなくシフトの減少により実質的に離職と同様の状態にある方についてもトライアル雇用を行うことができるようになっています。
新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース
新型コロナウイルス感染症対応トライアルコースの対象となる労働者の主な要件をみてみましょう。
【1から4のいずれにも該当する者であること】
1 |
1週間の所定労働時間が30時間以上の無期雇用による雇入れを希望している者であって、新型コロナウイルス感染症対応トライアル雇用制度を理解した上で、新型コロナウイルス感染症対応トライアル雇用による雇入れについても希望している者であること |
2 |
ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等に求職申込をしていること |
3 |
ハローワーク等の職業紹介の日において、次のアからエまでのいずれにも該当しない者であること ア 職業に就いている者 ウ 学校に在籍している者 エ トライアル雇用期間中のトライアル雇用労働者 |
4 |
次のアからウまでのいずれにも該当する者であること ア 令和2年1月24日以降に、新型コロナウイルス感染症の影響により、離職を余儀なくされた者であること イ 離職の日の翌日から起算した離職期間が紹介日において3か月を超えていること(シフトの減少があるとみなす場合は、シフトの減少が始まった日) ウ 紹介日において、パート・アルバイト等を含め就労の経験のない職業に就くことを希望する者(学校在学中のパート・アルバイト等は除く) |
3-アの「職業に就いている者」とは、パート・アルバイト等を含め就労をしている者をいいます。ですから、パート・アルバイト等であっても就労していたら本助成金の対象労働者とはなりません。ただし、勤務日数・勤務時間が減少したことにより離職と同様の状態(シフトの減少)にあるとみなすことができる者は対象労働者に含まれます。
4の「離職」には、自ら事業を営んでいる者の廃業、役員等についている者の退任、新型コロナウイルス感染症の影響による自己都合による離職及びシフトの減少があるとみなされる場合等も含まれます。
新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース
新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコースの対象となる労働者の主な要件は次の通りです。
【1と2に該当する者であること】
1 |
1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の無期雇用による雇入れを希望している者であって、新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアル雇用制度を理解した上で、新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアル雇用による雇入れについても希望している者であること |
2 |
新型コロナウイルス感染症対応トライアルコースの2から4に該当する者であること |
つまり、両コースの違いは対象となる労働者の1週間の所定労働時間となります。
新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース |
1週間の所定労働時間が30時間以上 |
新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース |
1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満 |
助成額は
両コースともに雇入れの日から1か月単位で最長3か月間を対象として助成が行われ、助成額は以下の通りです。
新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース |
支給対象者1人につき月額4万円 |
新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース |
支給対象者1人につき月額2万5千円 |
助成金の手続きの流れをみてみましょう。
① ハローワークから紹介を受け、対象者のトライアル雇用(原則3か月)を開始します
② トライアル雇用開始日から2週間以内に、ハローワークにトライアル雇用実施計画書を提出します。計画書には、雇用契約書など労働条件が確認できる書類を添付してください
③ トライアル雇用から期間の定めのない雇用に移行します
④ トライアル雇用終了日の翌日から起算して2か月以内に、事業所を管轄するハローワークまたは労働局に支給申請書を提出します
トライアル雇用期間の変更
トライアル雇用期間は原則3か月ですが、期間中に新型コロナウイルスの影響で休業した場合、以下の要件を満たすと特例的にトライアル雇用期間を変更できます。
・令和2年4月1日~令和3年11月30日の間にトライアル雇用期間が含まれていること
・上記期間中に新型コロナウイルスの影響で対象者を休業させたこと
・休業により、対象者の適性の見極めが難しくなったこと
・トライアル雇用期間の変更について労働者との合意があること
期間を変更する場合には、「トライアル雇用実施計画書変更届(新型コロナ特例)」を提出してください。
トライアル雇用助成金には、今回ご紹介したコースのほか、「一般トライアルコース」、「障害者トライアルコース」、「障害者短時間トライアルコース」、「若年・女性建設労働者トライアルコース」が設けられています。積極的な雇用に向け、ぜひ活用を検討してみてください。
※本内容は、令和3年11月25日現在、厚生労働省より公表されている情報に基づいております。申請にあたっての詳細は、労働局又はハローワークにご確認をお願いします。