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コンプライアンスとは?意味や使い方・事例をわかりやすく解説

監修者:きた社労士事務所 代表  北 光太郎

コンプライアンスとは?意味や使い方・事例をわかりやすく解説

インターネットの普及により「コンプライアンス」への注目は高まっています。コンプライアンス違反は企業の社会的な信頼を大きく損なうものであるため、企業経営者にとっては違反を防ぐための取り組みが不可欠です。

本記事では、コンプライアンスの意味やコンプライアンス違反の具体的な事例、遵守するための必要な対策について解説します。


コンプライアンスとは

はじめに、コンプライアンスの意味や使い方、企業経営に重要視されるようになった理由について解説します。

コンプライアンスの意味・定義

コンプライアンスとは「法令遵守」という意味です。

ただし、コンプライアンスの範囲は法令だけではなく、社内規定や企業倫理、社会的規範なども含みます。

つまりコンプライアンスとは、企業が法令や規定などのルールを守って活動し、企業の社会的責任を果たすことを意味しています。

コンプライアンスが重視される理由

コンプライアンスというワードを耳にする機会が増えたのは、IT技術の進化やSNSの普及が大きく影響しています。

個人が簡単に情報を発信して拡散できる時代になり、軽率な言動や動画などの投稿が企業経営まで影響するようになりました。

特に、SNSは気軽に不特定多数の人に対して情報を発信できるため、拡散力が非常に高いツールです。たった1度の不適切な発信がすぐに拡散され、取り返しのつかないことにもなりかねません。

そのような発信を防ぐには、従業員一人ひとりのコンプライアンスに対する意識が重要です。

現代の企業経営にとって、コンプライアンスの強化は必要不可欠なものと言ってよいでしょう。

コンプライアンスの使い方の例

「コンプライアンス」という言葉は、さまざまな場面で使われています。

たとえば、下記のように立場や状況によってコンプライアンスの使い方は変わってきます。

<コンプライアンスの使い方>

  • 管理職向けにコンプライアンス研修を行います。
  • 弊社はコンプライアンス強化の一環として、コンプライアンス委員会を設置します。
  • コンプライアンス違反は企業の利益やブランドイメージに直結する。

コンプライアンス違反が起きる原因とは?

では、なぜ企業コンプライアンス違反が起きるのか、原因について見ていきましょう。

コンプライアンスに関する知識や意識が足りないから

コンプライアンスに対する知識がないため、法令違反をしてしまう事例は多く見られます。

たとえば「労働時間の上限を知らなかった」「最低賃金を知らなかった」などです。

その背景には、経営層や総務・人事など、企業の規律を管理する部門の知識不足があります。

経営層や管理部門がコンプライアンスに対する理解を深めた後、研修や社内報の掲示など、全従業員にコンプライアンスの意識を高める施策を行いましょう。

会社の労働環境に問題があるから

社内で心理的に追いこまれた従業員は、コンプライアンス違反だと知りながら不正をしてしまいます。

「業績を上げなければならない」「他の同僚より優れていなければならない」など、上司や同僚からの圧力に追いつめられた結果、不正行為に手を出してしまう事例も少なくありません。

特に「顧客情報を簡単に持ち出せる」「権限に関係なく、従業員全員が重要情報にアクセスできる」など、セキュリティに問題がある企業はコンプライアンス違反が発生しやすい状況にあります。

コンプライアンスのルールを明確にし、労働環境の早急な改善が必要です。

コンプライアンス違反を防ぐ内部システムがないから

コンプライアンス違反が起こりやすい環境では、企業にコンプライアンス違反を予防・是正する仕組みがないケースも多いです。

たとえば「社内に不正をしている人がいても、誰に報告していいのかわからない」「セキュリティが甘く、誰でも機密情報にアクセスできる」などです。

コンプライアンスを管理する組織や内部システムがない環境では、コンプライアンス違反を防ぐことはできません。社内に相談窓口を作る、情報セキュリティー対策を行うなどの対策が必要です。


コンプライアンス違反となった具体的な事例

ここからはどのような行為がコンプライアンス違反となるのか、具体的な事例を3つ紹介します。

事例1:情報漏洩

情報漏洩はコンプライアンス違反に該当し、注意しなければ誰もが起こしてしまうものです。

たとえば、以下のような事例が情報漏洩に該当します。

  • 個人情報が記載されたメールを社外に誤送信
  • 個人情報が記録されたUSBメモリーを社外に持ち出し紛失
  • 不正アクセスによる情報漏洩

それぞれの事例を詳しく解説します。

【個人情報が記載されたメールを、社外に誤送信】

勤務の際、社内外の連絡やメールマガジンの配信など、メールを使うことも多いでしょう。メールは利便性が高い一方で、誤送信する恐れが高いツールです。

たとえば、「経営者グループ宛にメールを送ったつもりが、社外の取引先に送ってしまった」など、機密情報が「うっかり」漏れてしまうことも考えられます。

添付ファイルのパスワード設定など、メールを送る際のルールを設け、従業員一人ひとりの意識を高める必要があるでしょう。

【個人情報が記録されたUSBメモリーを、社外に持ち出して紛失】

企業によっては、個人情報などの重要な情報をUSBメモリーに保存して管理されているケースもあります。

この場合、USBを持ち出す際は徹底したルールが設けられているはずです。しかし、従業員のコンプライアンスに対する意識が低く、USBメモリーを持ち出して紛失する事例も実際に起こっています。

企業はルールを設定するだけではなく、定期的にルールが守られているか、調査を行う必要があるでしょう。

【不正アクセスによる情報漏洩】

社内ではさまざまな個人情報に触れる機会があり、その情報を悪用する事例も発生しています。

ある企業では、従業員がクレジットカードの個人情報を盗み出し、900万円近くを不正に使用した事例もあります。

重要な個人情報を扱う部門では、セキュリティ管理とコンプライアンスの教育の徹底が必要です。

事例2:不適切なSNS利用

SNSは従業員の個人的なアカウントであっても、投稿内容から企業が特定され、責任を問われるケースも珍しくありません。

不適切なSNS利用には、以下のような事例があります。

  • 従業員が未発表の新製品をSNSに投稿
  • 従業員の家族が会社の待遇に不満を感じ、その内容をSNSで投稿
  • 家で撮影した写真に、テレワークで家に持ち帰っていた機密情報が映り込んでいたが、気づかずにSNSに投稿

実際にある企業の新入社員が未発表の新製品をスマートフォンで撮影し、SNSに投稿した事例もあります。昨今の新入社員はコンプライアンスに対する意識が低い一方、SNSには慣れた世代です。

入社後の早い段階からコンプライアンス研修を行い、意識改革を行っていきましょう。

事例3:心身に苦痛を受ける労働

長時間労働などの精神的・肉体的な苦痛を受ける労働も、コンプライアンス違反事例の1つです。

長時間労働は法令違反に対する罰則だけではなく、従業員のうつ病発症や過労死などの問題も生じます。

ある企業では、過労死ライン(月80時間)の2倍近くの約157時間の残業を課した結果、従業員が自殺した事例もありました。

長時間労働は人命に関わることから、表面上の問題だけを取り除くのではなく、根本的な課題解決が必要です。


コンプライアンス遵守を進めるための取り組み

ここでは、コンプライアンス遵守を進めるために企業が取り組むべき対策について解説します。

コンプライアンス研修を実施する

コンプライアンス研修とは、コンプライアンスへの取り組みがどのような影響を及ぼすのかを認識させる研修です。

セクハラやパワハラなどのハラスメントや情報セキュリティなど、コンプライアンス違反にあたる事例の解説や違反を犯したときのリスクも内容に含まれます。

コンプライアンス研修は全従業員に実施する場合と、管理職や経営者などポジション別に実施する場合があります。立場によって関係するコンプライアンスが異なるため、研修内容も目的に合わせて変える必要があるでしょう。

社内規則・マニュアルを作成する

コンプライアンスの社内規程やマニュアルは、企業がコンプライアンスに則った行動を取るための方針となるものです。

データの持ち出しや、個人情報の目的外での使用禁止、各種ハラスメント行為の防止、SNSや公共の場での発言の注意点など、遵守すべき事項を記載します。

作成する際には、社内で共有する前に専門家に監修してもらうとよいでしょう。

特に、法令違反に関連する事項は、対象の法令を正しく解釈しているか、専門家の判断が必要になります。

法令改正の情報収集を細かく行う

コンプライアンスに関わる法令は、年々改正されています。

政府が公表する資料を意識的に確認したり、外部のセミナーに参加したりして、法令改正に関する情報収集を積極的に行い、自社のコンプライアンス体制をアップデートしましょう。

改正内容によっては、各部署を巻き込んで対策しなければいけないものもあります。早めの情報収集を心がけ、法改正前に準備を行うようにしてください。

相談窓口・内部通報窓口を設置する

相談窓口・内部通報窓口とは、従業員が社内の不正を発見したり、コンプライアンス違反の疑いがあったりする場合に通報する窓口です。

2022年6月に施行された公益通報者保護法の改正により、内部通報に対応するための体制(窓口設定、調査、是正措置など)の整備が義務付けられました(従業員数300人以下の中小企業は努力義務)。

相談窓口となる人員については、コンプライアンスに関わる部門の責任者が望ましいでしょう。

また、人員の確保ができない場合やコンプライアンスの強化を図る場合は、内部通報の外部窓口サービスを利用する方法もあります。

参考:消費者庁「公益通報者保護法と制度の概要


コンプライアンスについてのまとめ

コンプライアンスは法令だけではなく、社内規定や企業倫理、社会的規範など、幅広い範囲のルールを意味しています。

企業にとって重要性は増す一方、社員の知識不足や劣悪な労働環境などによって、さまざまなコンプライアンス違反が発生しているのが現状です。

企業の経営者はマニュアルの整備や研修の実施、社内の仕組みづくりなどを着実に行い、コンプライアンス違反の予防に務めましょう。

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監修者プロフィール

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北 光太郎

きた社労士事務所 代表

2012年に社会保険労務士試験に合格。

勤務社労士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。

2021年に社会保険労務士として独立。

労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。

法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアでも労働法や社会保険の情報を提供している。

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