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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第1回「介護はこんな感じで始まる」

~企業は「人」がいるから売上がある!をサポート~

著者:一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事  石間 洋美

中小企業のための「介護離職防止」対策! 第1回「介護はこんな感じで始まる」

介護というものは、高齢化大国となったこの日本ではもはや他人事ではなく、誰にでも“ある日突然”やってきます。

初めての介護は誰もが戸惑い、混乱します。次々に起こる出来事に振り回され、「しっかり介護しなければ」「職場に迷惑はかけられない」という責任から、介護者が離職に至るケースが多くあります。

介護は子育てと違い、いつまで続くか(いつ親が亡くなるか)わからないため、介護にかかる費用をしっかり考えておかないといけません。離職して収入を手放してしまい、貯蓄もなくなり、介護費用が捻出できなくなって、生活保護受給申請をされる方も増えてきています。

そうならないために、仕事を辞める前に専門家に相談することを強くお勧めします。


国の方針「介護施設」→「在宅介護」

そして介護離職が増える背景には、国の方針の転換もあります。国は「病院」「施設」の生活から「在宅」での生活を推進しています。地域包括ケアシステムという、住み慣れた地域で、住み慣れた自宅で、住み慣れた人々と「地域で支え合う社会」の構築を目指しています。

その1つの施策として自治体の認可が必要な新規介護施設は数年前と比べるとかなり減ってきています。病院での施策は、病院でしか治療できない症状であれば病院で治療し、その後在宅治療でも可能と判断されれば、早期退院や転院を求められます。すなわち介護が必要な状態で退院や転院するケースが増えていきます。当然介護が必要な状態となったため、在宅介護では厳しいと判断し、介護施設への入居を検討する方も増えていますが、新設介護施設数の減少や介護施設の利用料金が少しずつ高騰しているため、介護施設の利用を断念する方も比例して増えています。

介護施設の利用料金が高騰する理由として、人材不足と言われている介護職員を確保するために、求人費用や人材紹介料が膨らみ、人件費が高騰していることが挙げられます。そうした背景から介護施設に入居させることができない介護難民が増える可能性があり、介護が必要な状態で自宅に戻ることを余儀なくされたとき、本当に「ある日突然介護の日々」が目の前にやってくるのです。


何を備えるのか?

ここでは、介護をしながら働く状況になったときのために、何を備えればよいのか、どこに相談したらよいのか、どう対処すればよいのか、どう環境整備をしたらよいのかをお話ししていきます。今から心構えをし、ある程度の知識を持って行動することで「仕事と介護」は両立できます。それでは、一緒に向き合っていきましょう。

世界でも類を見ない超高齢化社会を迎えた日本ですが、2025年には75歳以上の人口は4人に1人になると見られています。また、兄弟・姉妹の減少、非婚化、晩婚化や晩産化、共働きの増加などを背景に、介護は家庭内で解決する問題ではなく、働く人の誰もが介護者となり得るのです。高齢者の要介護率は、75歳を超えると加齢とともに急速に高まります。80歳代前半では約2割、後半以降は約4割以上の人が何らかの介護が必要な状態にあります。

そして、生命保険文化センターの調査によれば、介護をしている方の平均介護期間は約58ヵ月です。4年以上の介護をしたと回答した割合は約46%にのぼります。このように高齢者人口が増加する一方で、核家族化や共働き世帯、未婚者の増加などにより、介護の担い手は減少しています。現在、介護者のうち就業者は半数以上の約350万人とされ、そのうち毎年約10万人が介護を理由に退職(離職)しています。

しかし、厚生労働省による「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」にもあるように、離職しても解決する問題は少なく、むしろ経済面、肉体面、精神面の負担が増える結果が見えます。従って、仕事を辞めても介護の問題は解決されず、これからは仕事と介護を両立する時代となります。


「認知症」とどう向き合うか?

介護が必要になる原因として上位に挙げられるのが「認知症」です。認知症とは、突然発症する場合より徐々に症状が進むことが多いため、家族など周りの人も気づかない場合があります。元気に暮らしていると思って見過ごしていると、親の変化に気づいたときにはかなり進行してしまっていることもあります。「あれ、ちょっとおかしいかな?」と思いながら年のせいにしていると大変なことになりかねません。

同じものばかり買ってくる、ゴミが何日もたまっている、冷蔵庫に洗剤が入っている、最近料理をしなくなった、笑わなくなった、真夜中に電話をかけてくるなどの行動が見られたら注意が必要です。最近ではコロナ禍の影響でテレワークが増え自宅で過ごす時間が増えたことで、親の変化に気づく人も増えたと聞きます。

介護が必要になる原因として、「認知症」のほかに上位に挙げられるのが、脳梗塞などの「脳血管疾患」や「骨折・転倒」です。高齢者にとって、入院などの環境の変化はその後の生活への影響がとても大きく、きっかけとして、ちょっとした怪我や病気でも、身体に麻痺が残る、意識障害が残る、リハビリが必要になるなど、生活の支障や介護が必要になることがあります。

私共によくある相談ケースとして事例を2つご紹介します。

1つ目、「70歳代前半の父。外出好きでよく出かけていた。ある待ち合わせの日、約束の時間になっても現れない。心配で家に行くと脳梗塞を発症し居間で倒れていた。一命はとりとめたが、右半身に麻痺が残った。」

2つ目、「70歳代後半の母。夜間、寝室からトイレに向かう際、扇風機のコードに足を引っかけ転倒し、大腿骨を骨折した。約2ヵ月の入院生活ですっかり老け込み、認知症状も出るようになってしまった。」

どちらも普段の日常生活であり得るお話です。転倒は若い人なら軽い怪我で済んでも、高齢者にとっては大きな事故につながることがあります。2つ目の事例のように、転倒が原因で起こりやすい大腿骨の骨折は、歩けるようになるまでに時間がかかるため、そのまま寝たきりになることも少なくありません。

骨折や怪我がなかったとしても、転倒により自信を失ったり、自力で動くことに対して恐怖心を持ったりすると、体を動かさなくなり、筋力が次第に衰え始めて、身体機能の低下を招くこともあります。その危険性を前もって知って、手すりを付けたり、段差を解消するなどの対策をしておくことが大切になります。

このように、いつ、どこでこのような状態になるかはわからず、誰にでも起こる可能性があるため、今回はまず、介護を他人事ではなく、いつでも自分自身にも起こることとして捉える意識を持つことから始めましょう!


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著者プロフィール

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石間 洋美

一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事

子どもの頃から「人の役に立つ仕事がしたい」という想いを強く持っていて、高校生活のボランティア活動で福祉・介護の世界と出会う。福祉・介護に関わる仕事を目指したく、静岡福祉医療専門学校医療福祉情報科へ入学。卒業後は、介護施設にて様々な経験をする。その後、自身のスキルアップのために介護事務業務、相談業務、マネジメント業務、管理業務を行う。医療福祉接遇インストラクターの資格も取得し、お客様満足度向上のための研修講師も務める。介護の業界に携わり「誰にでも介護はある日突然やってくる」現実を目の当たりにしたとき、もっと多くの方の救いや力になりたいという想いがさらに強くなり、その想いを実現すべく、2020年4月に当協会を立ち上げ、現在は「介護で困る人と困る量を圧倒的に少なくする!」を目標に掲げ活動している。

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