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就業規則の作り方 どうする?定年以降

著者:社労士事務所ライフアンドワークス 代表  角村 俊一

就業規則の作り方 どうする?定年以降

少子高齢化が進むなか、70歳までの就業機会を確保することが企業の努力義務とされました。

70歳までの定年引上げや、70歳までの継続雇用制度の導入などが求められています。人生100年時代を迎え、定年や再雇用ルールの見直しが必要です。

今回は、定年や定年以降の規定について説明します。


従来の定年以降

定年制度を設ける場合、法律上、その年齢は60歳を下回ることはできません。よって、定年を60歳としている企業が多くなっています。しかし、年金の支給開始年齢は65歳に引上げられており、60歳で定年退職すると無収入期間である空白の5年間が生じます。そこで、定年年齢を65歳未満に定めている企業は、65歳までの雇用機会を確保するため、高年齢者雇用確保措置(下記①から③のいずれか)を講ずることが義務付けられています。

厚生労働省「令和2年高年齢者の雇用状況」によると、65歳までの高年齢者雇用確保措置のある企業は計164,033社(99.9%)となっています(従業員31人以上の企業164,151社の状況)。講じられている高年齢者雇用確保措置の内訳は次の通りです。

【高年齢者雇用確保措置の内訳】

定年制そのものを廃止する企業は少なく、65歳までの継続雇用制度を導入している企業が多くなっています。


70歳までの就業機会の確保へ

こうした定年以降の枠組みが、令和3年4月から変わりました。個々の労働者の多様な特性やニーズを踏まえ、70歳までの就業機会を確保するため、65歳定年制や65歳までの継続雇用制度を導入している企業などに対し、次のいずれかの措置を制度化する努力義務が課されています。

【高年齢者就業確保措置の新設】

  • ① 70歳までの定年引上げ
  • ② 70歳までの継続雇用制度の導入(他の事業主によるものを含む)
  • ③ 定年廃止
  • ④ 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • ⑤ 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に、aやbに従事できる制度の導入
    • a 事業主が自ら実施する社会貢献事業
    • b 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

新しい枠組みの特徴として、雇用だけでなく業務委託(④)や社会貢献事業への従事(⑤)が設けられました。

高年齢者就業確保措置を講じる際、制度の対象者について基準を設けることもできます。対象者基準の内容は原則として労使に委ねられますが、厚生労働省では、「事業主と過半数労働組合等との間で十分に協議した上で、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましい」としています。ただし、労使間の十分な協議の上で定められたものであっても、企業が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど、法の趣旨に反するものや公序良俗に反するものは認められません。

ちなみに、「令和2年高年齢者の雇用状況」によると、66歳以上も働ける制度がある企業は54,802社(33.4%)となっています。今年4月の高年齢者就業確保措置の新設により、今後、どれくらい増えるか注目されます。


定年や定年以降の規定例

定年や定年以降の規定例をみてみましょう。定年年齢は60歳とし、原則65歳まで継続雇用する場合の規定例は次の通りです。

【就業規則の規定例】

第〇条(定年退職等)

  • 1 労働者の定年は満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。
  • 2 前項の規定にかかわらず、定年後も引続き雇用されることを希望し、解雇事由または退職事由に該当しない労働者については、満65歳に達した日の属する月の末日まで継続雇用する。

70歳までの就業確保を踏まえ、定年年齢は65歳とし、その後、基準を設けて70歳まで継続雇用または業務委託契約を締結する場合の規定例は次の通りです。

【就業規則の規定例】

第〇条(定年退職等)

  • 1 労働者の定年は満65歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。
  • 2 前項の規定にかかわらず、定年後も引続き雇用されることを希望し、解雇事由または退職事由に該当しない労働者のうち、次の各号に掲げる基準のいずれにも該当する者については、満70歳に達した日の属する月の末日まで継続雇用する。
  • (1)過去○年間の人事考課が○以上である者
  • (2)過去○年間の出勤率が○%以上である者
  • (3)過去○年間の定期健康診断結果を産業医が判断し、業務上、支障がないと認められた者
  • 3 第1項の規定にかかわらず、定年後に業務委託契約を締結することを希望し、解雇事由または退職事由に該当しない者のうち、次に定める基準のいずれにも該当する者については、満70歳に達した日の属する月の末日まで業務委託契約を継続的に締結する。なお、当該契約に基づく各業務内容等については、別途定める創業支援等措置の実施に関する計画に定めるところによるものとする。
    • (1)過去○年間の人事考課が○以上である者
    • (2)当該業務に必要な○○の資格を有している者または定年前に当該業務に○年以上従事した経験及び当該業務を遂行する能力があるとして以下に該当する者
      • ① ○○○○
      • ② △△△△

定年年齢を70歳とすることも考えられます。

【就業規則の規定例】

第〇条(定年退職)

労働者の定年は満70歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。


定年以降の継続雇用と無期転換

労働契約法では、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約に転換できると定めています(無期転換)。定年以降の労働契約に関し、一般には1年間の有期雇用契約を繰り返すことが行われておりますが、この場合でも有期雇用契約が通算5年を超えたときは無期転換申込権が労働者に発生します。

ただし、定年以降も引続き雇用される有期雇用労働者については、一定の条件と手続きのもとで無期転換申込権が発生しない特例がありますから、特例についても確認をしておきましょう。なお、この特例を適用する場合、紛争防止の観点から、労働契約の締結・更新時に、企業は特例の対象となる労働者に対して、定年後に引続き雇用されている期間に無期転換申込権が発生しない旨を書面で明示する必要があります。

新設された高年齢者就業確保措置を講じることは義務ではなく努力義務です。そのため、すべての企業が70歳までの就業確保に直ちに取組むわけではないと思われます。しかし、高齢化の進展や労働人口の急減という社会的背景もあることから、大手企業を中心に70歳までの就業機会の確保がある程度進んだ段階で、努力義務ではなく義務化されることが予想されます。新しい枠組みを念頭に、自社の状況に合わせて定年や再雇用ルールの見直しを進めていきましょう。

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著者プロフィール

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角村 俊一

社労士事務所ライフアンドワークス 代表

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。

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