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第2回 免責事項の事例 その1:エステサロン

著者:新宿西口総合事務所 代表司法書士  藤井 和彦

美を求め、幅広い方が利用するエステサロンですが、化粧品や機械を肌に直接使うため、健康被害が発生する可能性もあり、契約時にはカウンセリングや免責事項の提示が重要になってきます。

ここでは、実際にエステサロンの「事前確認兼同意書」を見ながら、免責事項について解説していきます。

トラブルを回避するためにしっかり対策をしておけば、より良いサービスの提供や、お客様の満足度向上にもつながっていくことでしょう。


損失を回避する免責事項の書き方ガイド
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同意書の無料テンプレート・雛形・フォーマット|bizocean(ビズオーシャン)

いろいろな業種の免責事項を見て学んでいきましょう

第1回ではそもそも免責事項とは何か、という点についてお話しするとともに、この「Bizocean」で書式をダウンロードする際の免責事項を見てみました。今回からは3回にわけて書式の例をご紹介し、その書式に記載されている免責事項について解説を行なっていこうと思います。今回取り上げるのは、「エステサロンの事前確認兼同意書」。エステサロンではどんなトラブルが発生するのか、そしてそれに対してどのような免責事項を設けることによってトラブルを回避しようとしているのか、見ていきましょう。

エステ免責同意書

免責事項で起こりうるトラブルに備える

エステサロンでは、サービスを行う際に直接身体に触れるうえ、さまざまな化粧品や機械を使います。そのため使用した化粧品や機械が身体に合わなかったことによる健康被害が最も多く、代表的なトラブルは、一般的には「肌トラブル」です。また、さらに重いものとして、アレルギーをその原因とする「呼吸器系トラブル」「じんましんの発生」「全身のむくみ」なども起こりえます。その結果、被害を受けたお客様がサロンに対して医療訴訟を起こした場合、サロン・お客様の両方に多大な時間と手間とコストがかかってしまいます。ですので、エステサロンは免責事項をあらかじめお客様に提示し、自らの健康について署名捺印することで保証してもらい、トラブルになることを回避しようとしています。

エステサロンの実際の免責事項を見てみましょう

それでは実際に「事前確認兼同意書」を見ていきましょう。ここで免責事項が記載されているのはご覧のとおり第2項になります。まず1ではお客様の健康状態や病歴などを確認しています。前の項にて、エステサロンで考えられるトラブルを4つ挙げていますが、第2項の1で列挙されている18の項目を見てみると、ほとんどがこの4つのトラブルの原因として当てはまります。これらの項目で「YES」と回答した項目があった場合、2で「当日のトリートメントは行えません。」としており、まずはトラブルを発生しないようにエステサロン側で努力をしています。また、同項の4を見てみますと「医師の承諾を得てからトリートメントを開始させて頂きます。」とありますが、こちらも同項2と同様に医療面でのトラブルを回避するために設けられた条項になります。

契約自体のトラブルも免責事項で回避

そして、第2項の5には、「未成年者等、必要がある場合にお客様の身分証明書提示をして頂く場合があります。」と書かれていますが、こちらは契約自体に関するトラブル防止のための規定です。未成年者が単独で契約の当事者となった場合、その親権者である親はその契約を取り消すことができると民法で定められており、もし契約が取り消されてしまうとサービスをしたのに代金を支払ってもらえないということになります。それを避けるため、未成年者であるかどうか確認して、そうであればあらかじめ親の同意を取ってきてもらうということになります(親の同意があれば取消はできません)。

「免責事項」の条項以外でも責任の所在を明示

最後に第4項の方も見てみましょう。同項の1では「トリートメントに起因し体調の異変、異常、肌トラブルが発生した場合は、速やかに提携医療機関にご案内いたします」としており、トリートメントに問題があった場合はエステサロンが責任をもって病院を紹介し責任を持つとしています。逆に同項2で挙げられている4つの項目については「お客様ご自身の判断により医療機関にて診察を受ける」としており、これらの場合はエステサロンは責任を負わず、病院の手配等はお客様の側で行うこととしており、この部分もある意味、免責事項といえるでしょう。どのような場合に誰が責任を持つか――。免責事項とは、サービスのその後を考えて事業者が先手を打つ手段でもあるのです。

<続く>

提供元:ドリームゲート

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著者プロフィール

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藤井 和彦

新宿西口総合事務所 代表司法書士

会社登記・企業法務に特化し、全ての案件に自らが先頭に立って関わることをモットーとする。開業後8年で1人起業の会社から株式上場を目指すベンチャー企業、東証一部上場企業まで約400社の業務を手がけている。

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