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カーブアウトとは? 企業が実施するメリットやデメリット、成功事例も解説

監修者: 米国公認会計士(デラウェア州)  川上 建

カーブアウトとは? 企業が実施するメリットやデメリット、成功事例も解説

カーブアウトとは、ある会社の一部の事業を切り出し新会社として独立させることです。収益性の低い事業のテコ入れや、成長が期待できるベンチャー事業を独立させる目的で行われます。

今回は、経営を効率化できるカーブアウトのメリット・デメリットや成功事例を解説します。選択と集中による効率的な組織運営を行いたい経営者の方は、ぜひ参考にしてください。


カーブアウトとは?

まずは、カーブアウトとは何かについて解説します。

カーブアウトの意味

カーブアウトとは、ある会社の一部の事業を切り出し新会社として独立させることです。切り出す、切り分けるといった意味がある、英語の「Carve out」が語源です。カーブアウトにより設立された新会社は、切り分け元の会社と外部資本の双方が出資する形態であることが特徴です。

カーブアウトを行う目的はさまざまですが、共通する目的はより収益性が高く効率的な経営を行うことです。たとえば、収益性の低い事業のテコ入れのため、あるいは成長性の高いベンチャー事業を独立させるため等の理由があります。ある事業に外部資本が参入し新会社として生まれ変わるカーブアウトにより、対象事業のさらなる成長が期待できます。

スピンアウト・スピンオフとの違い

カーブアウトと似たスキームとして、スピンアウト・スピンオフがあります。

スピンアウトとは、分離された新会社に親会社からの出資がなく、外部出資によって完全に独立した形態です。一方、スピンオフとは分離された新会社が、親会社からの出資のみで設立される形態です。

それに対してカーブアウトは、親会社と外部資本双方の出資を受ける形態であるため、スピンアウト・スピンオフ両方の性質を持つと言えるでしょう。


カーブアウトの手法

ここからはカーブアウトの2つの手法について解説します。

会社分割

会社分割とは、会社が持つ債権債務や権利義務の全て、または一部を新会社に引き継がせる形態です。

基本的に分割前の債権債務や権利義務を引き継ぐため、コストや時間面で効率的であることがメリットです。たとえば、新会社設立にあたって利害関係者とゼロから契約等を結び直す必要がなく、分割前の会社の契約関係を流用できます。

なお、会社分割には大きく「吸収分割」と「新設分割」の2種類があります。吸収分割とは、既存の会社に分割事業を引き継がせる形態です。一方の新設分割は、新たに設立する新会社に分割事業を引き継がせる形態です。実務上はどちらの方式がよりメリットがあるか検討したうえで、分割の形態を決定します。

事業譲渡

事業譲渡とは、ある会社の一部の事業を他者に譲渡することを指します。会社分割では譲渡後の事業は譲渡前の契約関係を引き継ぎますが、事業譲渡では基本的に譲渡前の契約関係を引き継がれません。

そのため事業譲渡の際には、事業譲渡された相手方は従業員や取引先等の利害関係者と改めて契約を締結し直す必要があります。会社分割よりコストや時間を要する点がデメリットです。

一方で事業譲渡の場合、譲渡したい部分だけを取捨選択でき、会社分割に比べ効率的な切り分けができることがメリットです。


カーブアウトを行うメリット・デメリット

ここからは、カーブアウトを行うメリットとデメリットについてそれぞれ解説します。

カーブアウトのメリット

カーブアウトのメリットとして、まず経営の効率化が挙げられます。ある事業を新会社として独立させることで既存事業と新事業を切り分けることができるため、選択と集中により効率的な組織運営が可能となります。カーブアウトで事業を切り分けた結果、元会社は既存事業の運営に集中できることも利点です。

また、カーブアウトでは自社資本だけでなく外部資本も活用することから、資金調達の面でも有利となります。さらに、外部資本が持つ経営ノウハウや人材など、自社と外部資本とのシナジー効果も期待できるでしょう。スピンアウトと異なりカーブアウトでは一定の自社の支配権も残るため、スピンアウト・スピンオフのそれぞれいいとこ取りができる可能性があります。

カーブアウトのデメリット

カーブアウトのデメリットとして、まず法人化による管理コストの増加が挙げられます。法人化により親会社の人的リソースの活用が難しいため、改めて組織を再構築し各部門の人員を整備しなければなりません。またカーブアウトの形態によっては、改めて利害関係者との再契約や公的機関の各種免許・認定を再取得する必要があります。

また外部資本が入ることにより、経営面での意見の相違や文化の違いなどのギャップが生じる可能性もあるでしょう。


カーブアウトの成功事例

ここからは、国内でカーブアウトに成功した事例を3つ解説します。

SONY/VAIO

SONYがVAIO事業をカーブアウトして成功した事例を紹介します。VAIOは元々SONYのパソコンブランドで、2014年にVAIO事業を投資ファンドとカーブアウトを行い、VAIO株式会社となりました。

カーブアウトによってSONYは当時不採算部門であったパソコン事業を切り離し、ほかの強み分野へ資源を集中することができました。また、VAIO事業も親会社と切り離され新会社となることで、ファンドの資金調達能力や経営ノウハウを活用しつつパソコンに特化した企業となり、強みを発揮できています。

参考:VAIO株式会社HP 会社概要

イトーヨーカ堂/セブンイレブン

次に紹介するのは、イトーヨーカ堂がセブンイレブンをカーブアウトした事例です。

日本のセブンイレブンは、1973年にイトーヨーカ堂が米国でセブンイレブンを運営する企業とライセンス契約を結び、株式会社ヨークセブンを設立したことが始まりです。

従来のスーパーマーケット型の小売りスタイルから切り離し、小規模店舗に特化するというコンセプトのもとでカーブアウトを行い、今まで日本になかった新しい小規模店舗のブランドを確立しています。このカーブアウトによりスーパー型店舗とコンビニ型店舗がお互いに食い合うことなく、効率的な事業運営に成功しています。

参考:株式会社セブン-イレブン・ジャパンHP 沿革

日本電信電話株式会社/NTTドコモ

最後に、日本電信電話株式会社がNTTドコモをカーブアウトした事例です。

NTTドコモは日本電信電話株式会社の出資により、エヌ・ティ・ティ・移動通信企画株式会社が設立されたことが始まりです。

従来の有線電話回線からポケットベル、そして携帯電話へトレンドが変遷していく中、携帯電話サービスに特化するためにカーブアウトを行い、docomoブランドを確立させています。携帯電話という従来の仕組みと異なるサービス開発に資源を集中することで、スピード感を持って携帯電話サービスの普及に取り組めた事例です。

参考:docomoHP 沿革


カーブアウトのまとめ

カーブアウトとは、ある会社の一部の事業を切り出し新会社として独立させることです。親会社からの資本だけではなく、外部資本が参入するため、対象事業のさらなる成長が期待できます。

国内でもカーブアウトを成功させた有名な事例があり、上手く活用することで元の会社と新会社の両方が大きなメリットを享受できます。会社分割と事業譲渡の2つの手法がありますので、どちらがよいか事前に慎重に検討してください。


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監修者プロフィール

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川上 建

米国公認会計士(デラウェア州)

DELL(株)ファイナンス部、本田技研工業(株)の経理部において、経理・経営企画業務に約17年間従事した後2019年7月に独立。

福岡市の地元中小企業を中心に、経営相談だけでなく現場に入り課題解決まで担う経営支援を行う。

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