このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、対応ブラウザでご覧下さい。

電子帳簿保存法の概要 (その1)

電子帳簿保存法の概要 (その1)

「電子帳簿保存法」の成立により、これまで紙で保存・管理していた帳簿の電子データ保存が認められるようになっています。

これまでの印刷にかかるコストやファイルに綴じる手間が削減できれば、大幅な業務効率化が実現するでしょう。

保管場所を確保する必要もなくなるため、空いたスペースを有効活用できるのもメリットです。

電子保存が認められているのは、帳簿と決算関係書類、契約書や見積書などの証憑書類です。手書きで作成した仕訳票や請求書の写し、取引先から受領した請求書などは電子保存が認められていないため、混同しないように把握しなければなりません。

また、よく似た法律に「e-文書法」がありますが、電子帳簿保存法とは似て非なる法律です。

電子帳簿保存法とe-文書法の違いを理解して、管理作業の効率化を実現しましょう。


この記事の著者
公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会  専務理事 

e-文書法との違い

国税に関する法律の規定により保存をしなければならない帳簿及び書類(国税関係帳簿書類)は、一定の要件の下で特例として電子保存することが可能です。このことを規定しているのが電子帳簿保存法ですが、e‐文書法と混同されている方が多いので、それとの違いを含めて概要を解説します。


e-文書法とは

各種法令により保存が義務付けられている文書について、紙による保存が民間企業の経営活動や業務運営の効率化の阻害要因となっているとして、平成15年以前からJIIMAや経団連などから政府に対して、電子保存が可能となるよう強く規制緩和要望を行っておりました。さらに、当時技術的にも情報通信技術(IT)の進展により、紙での保存に代えて、データの信頼性を高めるために必要とされる真正性や完全性を担保しながら電子的に保存することが可能となっていました。

このような状況を踏まえ、政府ではIT戦略本部(現在のIT総合戦略本部)を中心に民間企業の文書保存に関する負担の軽減を図るための検討が進められ、「e-Japan戦略Ⅱ」を加速化させる施策の1つとして「e‐文書イニシアティブ」を策定し、電子保存を容認していない多数の法令について、統一的な方針の下に電子保存を容認する措置を講ずることになりました。

この結果、制定された法律がいわゆる「e‐文書法」(平成17年4月施行)です。

正式には

「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(以下、通則法)

と、

「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(以下、整備法)

の2つの法律から構成されています。

通則法は、民間企業が電子データによる保存ができるようにするための共通事項を定めたものであり、通則法形式とすることにより、当時約250本もあった関係する法律を個別に改正することなく電子保存することが容認されました。
一方、整備法は、通則法のみでは手当てが完全でない場合について、約70本の個別法の一部改正により、所要の規定を整備したものです。
ここで電子データによる保存には、当初から電子的に作成された文書を電子的に保存することだけではなく、書面(紙)で作成された文書をスキャナで画像データ化し、電子的に保存する「スキャナ保存」も含まれています。

また、通則法で新たに電子保存が認められたのは、カルテや処方せんに代表される医療関係書類や取締役会議事録等の会社関係書類の殆どすべての法定保存文書が対象となっています。これらの文書は、文書の内容、性格により、真正性や完全性を担保するための要件(改ざん防止措置等)に対する要求の程度がそれぞれ異なるため、電子保存の方法等については主務省令で具体的に定めることになっています。


e-文書法と電子帳簿保存法

「電子帳簿保存法」は、正式には「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」のことで、元々は「e‐文書法」が施行される約7年前の平成10年7月に施行されました。


この「電子帳簿保存法」は、納税者の国税関係帳簿書類の保存についての事務負担やコスト負担の軽減などを図るため、これまで法人税法等の規定により紙に出力して保存しなければならなかった帳簿や書類のうち、自己が最初の記録段階から一貫してコンピュータ処理によって作成された帳簿や書類について、税務署長の承認を受けた場合、適正公平な課税の確保のために必要とされる一定の要件の下で、電子データ又はコンピュータから直接出力して作成するマイクロフィルム(COM)による保存を容認した特例法になります。(ここでは、COMについての解説は割愛させていただきます。)

当初の「電子帳簿保存法」の施行時点では、e‐文書法が施行される前ですから、外部から書面で受領した請求書や領収書等の国税関係書類の電子保存「スキャナ保存」は、電子データの改ざん等に対する脆弱性のため、容認されていませんでした。
しかし、その後のITの進展により電子データの改ざん検知技術等が確立されるようになり、平成17年4月に前述の「e‐文書整備法」が施行され「電子帳簿保存法」が改正されました。このことにより、外部から受領又は自己が発行して控えとして持っている紙の国税関係書類について、一定の要件の下「スキャナ保存」が容認されることとなりました。

また「電子帳簿保存法」では、電子取引における取引情報の電子データによる保存についても規定しています。ここでいう電子取引とは

取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に記載される事項をいう)の授受を電子的方式により行う取引

をいい、EDI取引のほかインターネットを利用した取引や電子メールによる取引等が含まれます。国税関係帳簿書類の電子データによる保存は特例として認められていますが、これら電子取引における取引情報の保存は、承認申請が不要であるものの、書面やCOMに出力して保存する場合を除き、義務として規定されています。


この電子取引の取引情報の保存につきましては、下記のJIIMAホームページに解説書が掲載されていますので、詳しくはそちらを参照してください。

* https://www.jiima.or.jp/wp-content/uploads/policy/denshitorihiki_guideline_v2.pdf

この記事に関連する最新記事

おすすめ書式テンプレート

書式テンプレートをもっと見る

著者プロフィール

author_item{name}

甲斐荘博司

公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会 専務理事

平成25年10月 内閣府の規制改革会議(現在の規制改革推進会議)に、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会の法務委員長として出席、スキャナ保存制度について規制緩和要望を行う。その結果、平成27年度税制改正で大幅な規制緩和が実現。平成28年度改正分も含め、国税庁と運用面での協議を重ね、適正事務処理要件等についての運用ルールを明確化した。
常勤先の株式会社ジェイ・アイ・エムにおいて、電子帳簿保存法申請支援コンサルを担当。
平成30年10月 現職に就任、現在に至る。

この著者の他の記事(全て見る

bizoceanジャーナルトップページ