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給与計算ってどうやるの? 男性にも支給される育児休業給付とは?給付内容や計算方法、申請方法をわかりやすく解説

著者:本山社会保険労務士事務所 所長  本山 恭子

給与計算ってどうやるの? 男性にも支給される育児休業給付とは?給付内容や計算方法、申請方法をわかりやすく解説

育児休業は、女性のみが取得するものだと考えられていた時代は、もはや昔のことです。

政府も企業も男性の育休取得を推進し、今では男女ともに、積極的に育休を取得する時代へと変わりつつあります。

「育児休業給付」を申請すれば、育休中に給付を受けられますが、この制度の対象者や手続きなどの仕組みについて、理解できている人は意外と多くありません。

育児休業給付の内容や計算方法、そして申請するための準備などを解説します。出産後に慌てて申請することがないよう、事前に学んでおきましょう。


1. はじめに

産前産後休業を取得している女性従業員に対しては社会保険から出産手当金が支給されますが、この手当金は出産後最大でも56日分の支給です。その後育児休業を取得する人が多いと思いますが、育児休業に入ると、一定の要件の下で雇用保険から「育児休業給付」がなされます。この育児休業給付は女性だけに限らず、要件を満たせば男性にも支給されます。具体的要件や支給期間などを見ていきましょう。


2. 支給対象者

育児休業給付の支給対象となるのは、以下の要件を満たす人です。

    • (1)雇用保険の被保険者であって1歳に満たない子(パパママプラス制度を利用する場合には1歳2か月、さらに保育所等での保育がなされない等の場合には1歳6か月又は2歳)を養育するために育児休業をする人
    • (2)育児休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上ある完全月が12か月以上ある人

    ここにいう賃金支払基礎日数とは賃金が発生する日数を指し、原則として時給や日給の場合は労働した日数、月給の場合は暦日数となります。

    また、完全月とは育児休業開始日の前日から遡って1か月ごとに区切っていったときに、1か月ある月をいいます。

    (注意点)

    • ① 現在被保険者になっている企業に勤める前に、基本手当(いわゆる失業給付)の受給資格や高年齢受給資格決定を受けている場合には、その後のものに限られます。
    • ② 在職中の会社だけで上記(2)を満たさなければならないわけではありませんので、前職を辞めた際に受給資格の決定を受けずに前職の退職日から1年以内に転職している場合には、前職の期間も通算することが可能です。
    • ③ 令和3年9月1日以降に育児休業を開始している人については、被保険者期間について原則の要件を満たさないケースでも、「産前休業開始日等」を起算日として、その日前2年間に賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上ある完全月が12か月以上ある場合には、要件を満たすものとされています。
    • ④ 令和2年8月1日以降に育児休業を開始している人については、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月ない場合、完全月で賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある場合には、その月を1か月として算定します。

    期間雇用者の場合には、上記の他に子が1歳6か月まで(保育が行われないなどの理由による場合には1歳6か月後の休業開始時において2歳まで)の間に労働契約が満了することが明らかでないことも要件となります。なお、令和4年4月1日以降は、期間雇用者の同一事業主の下での1年以上雇用継続要件はなくなっています。


    3. 給付内容

    【給付要件】

    育児休業を開始した日を起算日とした1か月ごとの期間(1か月の間に育児休業終了日を含む場合には、育児休業終了日までの期間)を「支給単位期間」といい、当該期間内に次の要件を満たした場合に給付がなされます。

    • ① 支給単位期間の初日から末日まで継続して被保険者であること
    • ② 支給単位期間において就労していると認められる日数が10日以下であること
      10日を超える場合には、就業していると認められる時間が80時間以下であること
      育児休業終了等により1か月に満たない支給単位期間については、終了していると認められる日数が10日以下かつ全日休業日が1日以上あること
    • ③ 支給単位期間中にある賃金支払い日に支給された賃金額が、休業開始時の賃金月額の80%未満であること

    【支給額】

    支給単位期間ごとの支給額は、原則として次の算式により求められます。

    「休業開始時賃金日額 ×支給日数 × 67%(育児休業開始6か月経過後は50%)」

    • ① 休業開始時賃金日額
      原則として育児休業開始前(産前産後休業を取得した被保険者が育児休業を取得する場合は、原則として産前産後休業開始前)6か月間の賃金。
      ただし、臨時に支払われる賃金及び賞与など3か月を超える期間ごとに支給される賃金を除く
    • ② 支給日数
      原則として一支給単位期間30日。
      ただし休業終了日の属する期間についてはその支給単位期間の日数

    なお、当該支給額には上限額が設けられています。上限額は毎年8月に見直しが行われます。


    4. 手続き

    【育児休業給付の受給資格確認手続き】

    従業員の育児休業給付の支給を受けるためには、事業主が受給資格確認の手続きを行わなければなりません。

    • 提出書類
    • ① 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
    • ② 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付支給申請書

    書類に(初回)育児休業給付支給申請書とありますが、支給申請をせずに、受給確認のみ行うことも可能です。初回の休業給付申請も一緒に行う場合には、原則として2つの支給単位期間について申請するよう求められています。

    添付書類 

    ≪受給資格確認手続きのみを行う場合≫

    • ① 賃金台帳
    • ② 出勤簿
    • ③ 母子手帳のコピー(両親の名前、生まれた子の名前・生年月日、医者の証明または市区町村長の証明が一つのページにある部分)
    • ④ 振込口座通帳のコピー

    ≪初回申請も併せて行う場合≫

    上記①~④の他、初回申請の2つの支給単位期間の賃金台帳・出勤簿

    提出先
    事業所所在地管轄ハローワーク(電子申請可能)

    提出期間

    ≪受給資格確認手続きのみを行う場合≫
    初回の支給申請を行う日まで

    ≪初回申請も併せて行う場合≫
    育児休業開始日から4か月を経過する日の属する月の末日まで


    【育児休業給付金支給申請手続き】

    育児休業給付の支給を受けるためには、事業主が原則として2か月に一度申請を行います。

    (1)初回 

    支給申請は、当該給付の受給資格確認と同時に、または受給資格確認を先に行い受給できることが確認された後に行うことができます。

    提出書類
    育児休業給付支給申請書

    添付書類
    賃金台帳、出勤簿等支給申請書の記載内容を確認できる書類

    支給単位期間における出勤や賃金の支払い状況を確認するためです。休んでいるために出勤簿等を作っていない事業場もあるかと思いますが、その場合には休業していること、賃金を支払っていないことを事業主が証明する書類の作成が必要です。

    提出先
    事業所所在地管轄ハローワーク(電子申請可能)

    (2)2回目以降

    2回目以降は、その前の申請時にハローワークから交付された育児休業給付支給申請書を使用し、同様に日時指定通知書が交付されますので、そこに記載された期間内に手続きします。添付書類、提出先などは初回と同様です。

    なお、当該受給確認や支給申請には本人の署名もしくは同意書が必要です。


    5. 支給対象期間の延長

    保育所等において入所できない等の理由によって育児休業期間を延長する場合、子が1歳に達する日後1歳6か月に達するまでの期間及び子が1歳6か月に達する日後2歳に達するまでの期間について、育児休業給付金の支給対象となります。

    支給対象期間の延長を希望する場合には、当該延長の事由に該当することが確認できる書類の添付が求められます。
    例えば、保育所の申し込みをしていたけれど入所できなかった場合には、子が1歳に達する日もしくは1歳6か月に達する日を含む月において保育がなされない旨の記載がある役所からの通知書のコピーが必要です。子が1歳の時に延長し、さらに1歳6か月の時にも延長を希望する場合には、それぞれ当該通知書のコピーが必要です。

    保育所入所申し込みをしようと役所を訪れたところ、申し込んでも入所が難しいなどの話を聞き、申し込み自体をしない例があります。このような場合、原則としては給付の延長ができなくなってしまいますので、必ず申し込みを行うように育児休業を取得している従業員に徹底しましょう。何かの事情で延長事由を確認できる書類を提出することが難しい場合には、ハローワークに相談をお願いします。

     

    ここでは支給申請書類の記載例等詳細は割愛しています。詳しくはハローワークのホームページや説明書等で確認し、不明な点はハローワークにご確認いただきますようお願いします。

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    著者プロフィール

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    本山 恭子

    本山社会保険労務士事務所 所長

    特定社会保険労務士、行政書士、公認心理師、産業カウンセラー、消費生活アドバイザー
    ストレスが多く、事業運営もグローバル化の中厳しく、企業、労働者共に大変な今、少しでも働きやすい環境を作るお手伝いをすることを通して、企業、労働者の皆様のお手伝いを精一杯してまいります。法律だけの四角四面でない、気持ちを汲んだサポートを心掛けています。

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