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障害者雇用とは? 雇用の流れや支援制度、困った際の相談先を紹介

監修者:西岡社会保険労務士事務所 代表  西岡 秀泰

障害者雇用とは? 雇用の流れや支援制度、困った際の相談先を紹介

障害者雇用とは、障害者雇用促進法が定める「障害者雇用率」の対象となる人を雇用することを意味し、障害のある人が安心して能力を発揮できる環境を作るために存在します。

一定の従業員数を超えているなど、条件に当てはまる企業は障害のある人を雇用する義務があり、違反すると罰則の対象となるため注意が必要です。

この記事では、障害者雇用の制度や義務、実施の流れなどを解説します。困ったときの相談先や、企業が活用できる制度も紹介するので、ぜひ参考にしてください。


障害者雇用とは

障害者雇用の制度とは、そもそもどのような制度なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

障害者雇用の制度概要

障害者雇用とは、「障害者雇用促進法」が定める「障害者雇用率」の対象となる人を雇用することです。

企業規模に応じて従業員数の一定割合(障害者雇用率)の障害のある人を雇用するのが、企業の義務とされています。従業員が43.5人以上の会社には1人以上の雇用が必要です。

従業員数は、週の所定労働時間が30時間以上の人は1人、20時間以上30時間未満であれば0.5人とカウントします。

身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を持つ次のような人が雇用の対象となります。

  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者

「障害者雇用枠」で雇用すると、障害者雇用率を計算するときに障害者雇用としてカウントされます。「一般枠」で障害のある人を雇用しても、障害者雇用の義務を果たしたことにはなりません。

障害のある人の雇用を促進するために、企業が達成すべき障害者雇用率(法定雇用率)は段階的に引き上げられています。

出典:障害者雇用率制度の概要|厚生労働省

障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)は、障害のある人が能力や希望、適性に応じた職業に就き、安定した雇用環境のもとで仕事ができることを目的に制定されました。国や地方公共団体、企業の役割や義務などを定めています。

企業の主な義務のひとつが、障害者雇用率(法定雇用率のことで民間企業の場合は2.3%)の達成です。厚生労働省の「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」によると、障害者の雇用状況と法定雇用率の達成状況は次のとおりです。

  • 雇用障害者数:59万7,786人(対前年比3.4%上昇)
  • 障害者雇用率:2.2%(対前年比0.05%上昇)
  • 法定雇用率達成企業の割合:47.0%(対前年比1.6%低下)

障害者雇用義務について

ここでは、障害者雇用義務の条件や違反した際の罰則について詳しく解説します。

障害者雇用義務の条件

障害者雇用の義務のある民間企業の条件は、「常用する従業員が43.5人以上」です。

法定雇用率(2.3%)を満たすために雇用が必要な障害者数(法定雇用障害者数)の計算は次のとおりです。小数点は切り捨てます。

法定雇用障害者数=常用する従業員数×法定雇用率(2.3%)

参考:障害者雇用率制度について

つまり、従業員数43.5人から86.5人までの企業の法定雇用障害者数は1名、87人から130人までの企業は2名ということになります。

違反した際の罰則

法定雇用率が未達(毎年6月1日現在の雇用状況で判断)の場合、企業には法定雇用障害者数の不足1人あたり月額5万円の「障害者雇用納付金」が課されます。

1人未達の場合は年間で60万円の納付金が必要です。ただし、納付金の対象となるのは、常用する従業員数が100名を超える企業です。

参考:障害者雇用納付金制度の概要

未達状況によっては「障害者雇用雇入れ計画書」の提出を求められるケースがあります。未達状況が解消されない場合は、行政指導や企業名の公表が行われることもあるので注意しましょう。


障害者雇用を実施する流れ

ここでは、障害者雇用を実施する流れを5つにわけて紹介します。

1. 採用担当が障害のある人について理解する

障害のある人を雇用した経験のない採用担当者の場合、まずは障害のある人とその就労について理解する必要があります。障害のある人を雇用している企業や就労支援機関などを見学させてもらうのがひとつの方法です。

障害のある人の就業を支援する「ハローワーク」や「地域障害者職業センター」などに相談して、見学先を紹介してもらいましょう。

2. 仕事内容を検討する

雇用する障害のある人に割り当てる仕事の内容を検討します。社内業務の中で人材が不足している業務内容を洗い出し、業務遂行に必要な能力や時間などを具体的に整理しましょう。

実際に雇用した障害のある人の状況に応じて仕事の内容が変わる場合もありますが、まずは部署や業務内容、人物像や人数を検討することが大切です。

3. 受け入れ準備をする

仕事内容が決まったら、雇用する障害のある人を受け入れるための準備が必要です。配置予定の部署の責任者や所属員、障害のある人をサポートする人などに、障害者自身や仕事または健康に関して配慮が必要なことなどを理解してもらわなければなりません。

障害の内容によっては障害を補完するための機器の導入など、職場環境の整備が必要になるケースもあります。

4. 求人票を出し採用活動を開始する

受け入れ準備が完了したら、採用活動をスタートします。ハローワーク(公共職業安定所)で求人するときは、障害のある人専用の求人申込を利用しましょう。また、一定期間お試しで仕事をしてもらう「トライアル雇用」で求人するのも選択肢のひとつです。

ハローワークのほか、障害のある人の雇用や日常生活をサポートする「障害者就業・生活支援センター」の活用も検討してみましょう。

5. 雇用継続に向けてフォローや体制を強化する

採用後は、安心して仕事を続けられるようにフォローが重要です。仕事で困ったことがないか、職場内で差別的な扱いを受けていないか、健康上の問題はないかなどを確認し、必要に応じて解決を図ります。

障害のある人が働きやすいように、上司や同僚の役割やフォロー方法などを具体的に定め、定期的にチェックしましょう。


障害者雇用で困ったときの相談先

はじめての障害者雇用ではわからないことも出てくるでしょう。ここでは、障害者雇用で困ったときの相談先を3つ紹介します。

1. 地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害のある人に対する専門的な職業リハビリテーションを提供する施設として、全国の都道府県に設置されています。具体的には、次のような職業リハビリテーションを行います。

  • 作業体験
  • 職業準備講習
  • 社会生活技能訓練

企業に対しては、障害のある人が従事しやすい仕事のやり方やわかりやすい指導方法など、仕事に直結する実践的な相談を行っています。

2. ハローワーク

ハローワークは、就職困難者を中心とした職業紹介などを行うところで全国に544ヶ所設置されています。

ハローワークでは障害者専用の求人などを受け付けるとともに、ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援や障害者雇用に関する助成金の相談などを行っています。

3. 障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、地域において就業面と生活面の一体的な相談・支援を行うところです。2022年4月現在、全国に338のセンターが設けられています。

障害のある人に対する支援だけでなく、障害のある人を雇用する企業に対する雇用管理などの相談や助成金の申請受付を行っています。


障害者雇用で活用できる制度

障害者雇用において企業が活用できる制度はあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

1. ジョブコーチ(職場適応援助者)

ジョブコーチ(職場適応援助者)とは、障害のある人への支援計画に基づいて、障害のある人が職場にうまく適応し、仕事ができるように支援する人です。障害のある人だけではなく、事業主に対しても障害特性に配慮した雇用管理等に関する支援を行います。

ジョブコーチは、地域障害者職業センターや社会福祉法人、障害のある人を雇用する企業などに在籍します。

2. 障害者雇用納付金制度

障害者雇用納付金制度とは、法定雇用率を超過達成した企業に調整金や報奨金などを支給し、未達の企業から、前述した「納付金」を徴収する仕組みです。

法定雇用率を超過達成した企業には、超過1人あたり月額2万7,000円の調整金(常時する従業員100人超の企業)や月額2万1,000円の報奨金(一定要件を満たした従業員100人以下の企業)が支給されます。

3. 雇用保険の助成金

障害のある人の雇用を促進するために、障害のある人の雇い入れや正社員化、職業能力開発訓練などに対し、幅広く助成金が設けられています。具体的には次のとおりです。

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース・発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース):障害を持つ人の採用
  • トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース):障害を持つ人のトライアル採用
  • 障害者雇用納付金制度に基づく助成金:障害者のための作業施設・福祉施設等の設置・整備など
  • 人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース):障害を持つ人への職業能力開発訓練の実施など
  • キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース):障害を持つ人の正社員化など

企業が、より障害のある人を雇用しやすくするための制度と言えるでしょう。


障害者雇用のまとめ

障害者雇用の制度は、障害のある人が能力や希望、適性に応じた職業に就き、安定した雇用環境のもとで働くために定められています。

障害を持つ人を従業員数に対して一定の割合で雇用するのは企業の義務です。企業が活用できる助成金も数多くあるため、積極的に活用しましょう。

障害者雇用に困ったときは、地域障害者職業センターやハローワーク、障害者就業・生活支援センターなどの関係機関に相談することも大切です。


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監修者プロフィール

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西岡 秀泰

西岡社会保険労務士事務所 代表

生命保険会社に25年勤務し、FPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。
2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
得意分野は、人事・労務、金融全般、生命保険、公的年金など。

【保有資格】社会保険労務士/2級FP技能士

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