賞与の種類や額面の決め方は? 担当者が手続きする流れや注意点を解説
賞与支払の時期になると、支払い手続きや従業員からの問い合わせなども多くなり、経理担当やバックオフィス業務は忙しくなります。
それでは、賞与についてどのような種類があり、金額が決められているかご存知でしょうか。
今回は、賞与に関する基礎知識から注意点まで、詳しく解説していきます。
賞与とは
まずは賞与とはどういったものなのか、また、混同されやすい寸志との違いから見ていきましょう。
賞与とは給与以外で支払われる報酬
賞与とは、毎月の給与とは別に支給される賃金のことです。
夏季賞与・冬季賞与以外にも、ボーナス・特別手当・期末手当・一時金などの名称がありますが、それらを含めて「賞与」と呼びます。
給与については、労働基準法にて必ず支払わなければならないことが定められていますが、賞与については支給するかは企業の自由です。
また、支給時期についても企業が決めることができます。
寸志との違い
賞与と混同されやすい言葉に寸志があります。
寸志とは、わずかな心遣いという意味であり、以下のような場面で使われます。
- 会社の会合(親睦会・懇親会など)の幹事役・主賓へ渡す金銭
- 従業員のお祝い・記念などの際に渡す金銭
これらは、会社から従業員に支給される一次的な特別報酬であり、大きな意味では賞与と同じ意味になります。
賞与の種類を紹介
ここからは賞与の種類について解説していきます。
基本給連動型
基本給連動型とは、その名の通り「基本給の何か月分」などの基準で賞与額が決まる賞与のことを指します。
基本給は、給与から各種手当(役職手当・通勤手当・住宅手当など)を引いた金額です。
この基本給連動型の賞与を採用している企業が多いようです。
業績連動型
組織、部門、個人の業績に連動して、賞与が決まる方法です。
成果主義によって賞与額が決められるため、企業にとっては効率化が図れて、従業員にとってはやる気の向上が図れます。
これらのメリットから、業績連動型の賞与へ変更していく企業は増えています。
決算賞与
決算の業績に応じて支給される賞与です。
決算の業績がよい場合に、従業員へ利益還元のために行われます。
利益還元が基になっているため、決算の業績が悪ければ、支給されないことも考えられます。
賞与額の決め方
賞与額は、企業によって決め方はさまざまです。一般的に用いられている方法を紹介します。
基本給に応じて決められている
一般的には、基本給に対して何か月分といった形で賞与が決められています。
例として以下の場合の賞与を計算します。
|
賞与:
(25万円-5万円)×2か月=40万円
業績に応じて決められる
組織、部門、個人の業績に連動して賞与額が決まるため、個人や部門などによって賞与額が変動します。
この場合に用いられるのが「賞与係数」や「評価係数」と呼ばれる数字です。
業績に応じて評価を付け、それに対応した賞与係数を設けます。
賞与係数の例
S:2.0=基本給の2か月分
A:1.5=基本給の1.5か月分
B:1.0=基本給の1か月分
C:0.5=基本給の0.5か月分
D:0.1=基本給の0.1か月分
同規模の企業を参考にして決められている
同規模や同事業の企業を参考にして賞与額を決めている会社もあります。
ただ、業績や経営事情なども異なりますし、それらを把握するのも難しいため、あまり採用している企業は多くありません。
担当者が行う賞与支払い手続きと流れ
賞与支払い担当者になった場合の支払い手続きの流れを解説します。
賞与の時期には、バックオフィス担当も忙しくなるため、事前にこれらは把握しておくと良いでしょう。
1.届出書類の準備
給与と同様に賞与についても健康保険、厚生年金保険の保険料を納付する必要があります。
そのための届出書類には、「賞与支払届」などを利用しましょう。
賞与支払届は、日本年金機構に登録されている賞与支払予定月の前月に、登録企業まで送付されます。
印字内容から、従業員の記載漏れなどを確認します。
もし、賞与支払予定月を登録していない、変更したいという場合には、「健康保険 厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届」を管轄の年金事務所まで提出してください。
2.標準賞与額・保険料を算出する
健康保険、厚生年金保険の保険料を算出するための標準賞与額は、実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額になります。
健康保険、厚生年金保険の保険料は、標準賞与額に健康保険、厚生年金保険の保険料率を乗じた額です。
3.賞与支払届を作成
企業が健康保険、厚生年金保険の被保険者などに賞与を支給した場合には、「被保険者賞与支払届」を作成する必要があります。
この場合の賞与とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与などの名称は問わず、労働者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給のものをいいます。
4.賞与支払届を年金事務所に提出
「被保険者賞与支払届」は、賞与支払日から5日以内に、事業所所在地を管轄する事務センターまたは事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出します。
提出方法は、電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)、郵送、窓口持参があります。
5.保険料の納付
企業は、賞与から差し引いた被保険者負担分の保険料と事業主負担分の保険料とあわせて、納付期限までに日本年金機構(年金事務所)に納めます。
納付期限は、納付対象月の翌月末日です。
賞与の支払いに関する注意点
賞与の支払いについて、ミスや不明点はなくしておきたいものです。
そこで、続いては賞与の支払いに関する注意点を解説します。
中途入社・退職した従業員への対応
賞与を支給する従業員をどこまでにするかは、就業規則、賃金規程、賞与規程に定めておく必要があります。
就業規則などに、在籍日支給要件が定められていれば、中途入社の従業員や退職した従業員に賞与を支給する必要もなくなります。
判断に迷った際には就業規則を確認しておきましょう。
産前産後休業・育児休業中の従業員への対応
産前産後休業・育児休業中の従業員であっても、ほかの従業員と同様に賞与の支給があります。
ただし、賃金に関する規定はないため、賃金自体は無給であっても問題ありません。
また、賞与の算定についても、産前産後の休暇日を通常の欠勤と同様に控除しても不利益な取り扱いには当たらないため、賞与を減額することは可能としています。
ただし、経済的不利益が大きい場合には違法になる場合もあるため、出勤率などに応じた割合で計算する必要があります。
賞与に関するトラブル事例
賞与の支払いに関して、従業員と企業でトラブルになるケースもあるようです。
ここからはそれらの事例をいくつか紹介します。
求人票に「賞与あり」と記載したが支払っていないケース
求人票の情報と実際の賞与支払いが異なっているケースです。
求人票・求人情報誌・求人/転職サイトなどで記載している条件と条件が異なる場合は、直ちに違法とは言い切れません。
従業員が最終的に実際の労働条件に同意した場合には、労働契約が成立するためです。
ただし、求人票に変更することを前提に、よい条件を記載するケースの場合は、違法の可能性があります。
業績悪化により極端に賞与減額となるケース
景気の悪化などによる業績不振から、賞与が減額となるケースもよく見られます。
ただし、賞与の支給は法律上で義務付けられているものではないため、労働契約や就業規則などで支給額や支給条件が明確でない場合には、賞与減額は問題になりません。
労働契約や就業規則で支払を確約されている場合や、支給額・支給条件などが明記されている場合、その条件の支払いが企業に義務付けられます。
賞与のまとめ
賞与についてまとめると以下の通りです。
- 賞与とは、給与以外の賃金のことである
- 賞与額には、基本給や、業績と連動した決め方がある
- 賞与支払い手続きには、賞与支払届を利用すると良い
- 賞与の支払いについては、就業規則で定める必要がある
これらのことを理解して、支払い手続きなどのバックオフィス業務を円滑に進めましょう。
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