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【他社事例で学ぶ健康経営】医療系企業の事例:経営トップが率先して定着へ

健康経営シリーズ

【他社事例で学ぶ健康経営】医療系企業の事例:経営トップが率先して定着へ

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

トップの関与が必要な健康経営

自社のビジョンやミッションを明確に打ち出し、その実現に向かってトップが率先して率いていく、いわゆる理念経営。この考え方は、経営のみならず、総務が行う施策においても当てはまる。コンプライアンス、メンタル不全防止、今回取り上げる健康経営についても同様である。

健康経営は、特に健康問題を抱えていない従業員にとっては、積極的に関心を寄せるものではない。ふだん健康な人は「健康を意識しましょう」と言われてもピンとこないであろう。ここに健康経営の難しさがある。継続して定着するかという問題点がある。

健康経営について多くの取材から感じることは、成功している企業においては、まず間違いなく経営トップが積極的に関与しているか、経営トップ自身が中心となって推進している、ということである。しかも、トップが継続的にアクションを起こしているのである。今回取り上げる事例においても、経営トップの関与が色濃く出ている。


派生効果に目を向ける

この企業では、経済産業省が健康経営の推進を提唱したことをきっかけに、経営トップが情報収集を行い、経営トップ自身が自社での取り組みを検討し始めた。専門家に相談し、社内に健康経営会議を発足させ、健康経営優良法人の認定を目的として活動を開始した。

この会社は従業員が300人。一人ひとりの活躍が自社に大きなインパクトを与え、従業員の健康が自社の発展に大きく寄与すると考え、個々の従業員の健康をどのように維持、向上させるかに主眼を置いた。そのために、個々の従業員がどうすれば健康に意識を向けられるか、経営トップを中心に施策を検討していった。

数多くの施策の中で好評なのが、ウォーキングシューズの購入費用の補助である。機能性の高いシューズを履くことで、従業員にウォーキングへのモチベーションを喚起している。さらに四半期に一度、月間の歩数を競うイベントを開催している。チャットにおいて、各自の歩数の報告をしたり目標を宣言したり、社内コミュニケーションの活性化にも効果がある。

このように健康経営においては、取り組みを着実に実行するだけでなく、そこから得られる派生効果をうまく活用すること、そしてその効果に乗じてさらに取り組みを発展させていくことが成功パターンとなる。歩数を競うキャンペーンにしても、事務局に報告し結果を表彰するだけではなく、従業員が家庭でも取り組みを続けている様子を公表し、それを話題にすることで社内コミュニケーションの活性化も図られる。

ある企業では、部署同士で歩数を競い、猛烈なデッドヒートが繰り広げられたという事例もある。歩数を稼ぐ方法を披露したり、歩いている道中に気づいたことを紹介したり、コミュニケーションに花が咲くような「場」を提供することが成功の要因となる。誰が優勝するかより、途中のプロセスをいかに盛り上げるかが肝心なのであり、それを視野に入れた施策を考えることが大変重要となる。


意識の高さが生む好循環

この企業では、さらに、経営トップが全国の営業所を巡り、健康経営関連の制度や取り組みについて従業員と会食しながら懇談する場も設けている。またその会食にも、地元特産のオーガニック食材を使った店を選ぶというから徹底している。経営トップによる健康関連の話題を中心に、会食での話題も弾む。

ある証券会社のシンクタンクのデータによると、経営トップ自身が健康への意識が高い企業では、従業員の健康に対する意識も高く、逆に経営トップの健康への意識が低い企業では、同様に従業員の健康に対する意識も低いという。この企業では、健康経営の施策を実施するとともに、このような会食を行うことで、経営者の健康に対する高い意識に触れ、従業員の意識も高いものとなっている。

この意識の高さを維持するために、社内公募によりスローガンを募集した。結果、予想以上に数が集まり、年度のスローガンだけの予定だったものを、せっかくだからと月次のスローガンも設定し、ポスターにして社内に掲示している。意識の高さが好循環を生み出した典型的な成功事例である。健康経営に関する社内アンケートも、回答率は95%に達する。

このような取り組みを着実に継続することで、健康経営優良法人の認定を連続して取得している。この効果はさまざまな部分に波及しており、典型的な効果を上げているのが採用活動である。企業説明会の参加率が毎年上昇しており、人材獲得に大きく貢献しているのだ。これは、既存社員にとっても大きな自信ともなっている。


健康経営は格好のアピールネタ

健康経営は、健康になること自体を目的としない方が良いと言われる。健康であればモチベーション高く仕事ができる。つまり、モチベーション高く仕事をするための前提として、良好な健康状態を維持することが肝要だと捉えることである。

また、今回紹介したように、健康経営施策を実施するプロセスの中での波及効果にもしっかりと目を向けることが大事である。特にポイントとなるのが、プロセス途上の動きの可視化である。動きを公表することで背中を押す効果も生まれ、社内コミュニケーションのネタともなる。総務部としては、積極的に社内に動きが出るように、またコミュニケーションが活性化されるように、個々の動きを捉えて社内コミュニケーションメディアで告知することをお勧めする。

さらに、健康経営の取り組みにおいては、社内の事例を積極的に社外に公表することも大事である。この企業のように、採用にも大きく寄与するし、メディアにも取り上げてもらいやすくなる。その際大事なのが、施策の中身の説明だけではなく、事例を数多く公表することである。

受け取る側としては、実際にその施策が機能しているのかどうかが非常に気になるものだ。取り組みによる波及効果にも言及されていると、その信ぴょう性を高めることができるのだ。

今回お伝えしたい点を繰り返すと、施策のプロセスとその波及効果にも目を向け、積極的に社内外に公表することである。ぜひ意識したい点である。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

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