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ファシリテーションをうまくやるコツ(社外編)

著者: 中小企業診断士  吉川 和明

ファシリテーションをうまくやるコツ(社外編)

取引先など社外相手でも「会議」はつきものです。「会議」に参加するだけでなく、自ら開催することもありますが、事前の段取りや会議の進行がうまくいかないケースも少なくありません。

特に社内とは異なり、会議の場で初めて会話をする相手が多数参加する場面が多く、筆者自身、社外で会議を開催していた際にファシリテーションの重要性を強く感じていました。

本記事では、社外での会議においてファシリテーションをうまくやるコツを、筆者の経験も踏まえて解説します。


1.ファシリテーションとは

ファシリテーションとは、人と人との話し合いを促進することを意味します。会議や打ち合わせ、討論などの話し合いをする目的は2つあります。

1つは多面的な視点から検討して課題の解決方法を導き出す「問題解決」、もう1つは意思決定プロセスに参加することで納得性を高める「合意形成」です。

これらを限られた資源の中で行うためには、話し合いのプロセスのかじ取り(=ファシリテーション)が必要です。


2.ファシリテーターの役割(社外編)

ファシリテーターは、会議招集や資料作成などの事前準備から、会議開始時の場づくり、発言を促すフォロー、さまざまな意見のとりまとめ、タイムスケジュール、クロージングといった会議のかじ取りまでを行います。

何の目的で会議を開催するのか、参加者に求めていることは何かなど、参加者全員に目を配ることも大切です。

特に社外での会議は、初対面の方が参加されるケースも多々あります。

ファシリテーターとして自己紹介も含めて事前準備を行い、スムーズな会議進行を心がけましょう。


3.社外会議でよくある問題点とその原因

(1)議論が発散して意見をまとめられない

取引先相手に会議を開催する際によく見受けられるのは、議論が発散してしまい意見をまとめられないというケースです。

主催者側は話し合いを促進しながらも、会議の目的(=ゴール)に向けて進行していく必要があります。

ところが、発言力のある参加者の素性や他の参加者との関係性を把握できていないために、発言に対する反応や切り返しがスムーズに行えないという事態が発生します。

(2)発言に偏り

参加者の中でキーマン(例えば、現場リーダー、開発リーダーなど)の発言が中心となり、会議内の発言が偏ってしまうというケースも、取引先相手に会議を開催する際によく見受けられます。

これは、会議に参加する人すべてが、同じ目的で参加していないことが原因の1つとしてあげられます。筆者が経験した課題解決会議では、課題に直接関係のある参加者以外に、会議の結果だけを情報収集する目的で参加している方が大勢いました。

課題解決会議の目的は、解決策を検討し合意形成をはかることですが、そのための議論に参加しない方もおられるということです。

会議の結果だけを情報収集したいのであれば、議事録を参照すれば事足りますので、会議に参加する時間がもったいないともいえます。

(3)時間内に終わらない

議題内容が多くて時間内に終わらないといったケースも、取引先相手の会議ではよく見受けられます。

筆者が経験したITシステム新規開発に関する会議では、ステークホルダーが多岐にわたるために各々の主張を述べる方が多く、議題内容が次々と浮上してしまい時間切れとなるケースがありました。

原因の1つは、会議の目的や議題の内容を明確に参加者に伝えてきれておらず、タイムスケジュールもあいまいであったことがあげられます。

(4)前回会議で決まったことが覆される

取引先の方針が変わることで、前回の会議で決定した事項が白紙にもどるといったケースも起こり得ます。

筆者が経験したITシステム開発会議では、取引先を取り巻く環境の変化により経営課題が変わったなどの理由から、経営トップからの指示で決定事項が覆されたことがありました。

その際には、あらためて課題整理を行い、前回決定事項も参考にしながら、課題解決策を軌道修正したことを記憶しています。


4.社外会議でファシリテーションをうまくやるコツ

(1)会議を開催する際のアジェンダは必須

会議の目的、議題内容、タイムスケジュール、事前準備事項など、会議のアジェンダを必ず作成して、遅くとも会議開催の1週間前には参加者へ連絡しましょう。

特に取引先相手の会議ではタイムスケジュールが重要です。

社内と違って社外の場合は参加者の調整にも時間がかかりますので、時間内に決定事項の合意形成までを行えるよう、会議内のタイムスケジュール管理や進行には注意を払いましょう。

(2)議題が増えたら会議体を分ける(分科会の活用)

ステークホルダーが多岐にわたるプロジェクトでは、会議体を分けて開催することをおすすめします。

例えば筆者が経験した流通系ITシステム開発では、①システム開発分科会(参加者=システム開発担当者・システム運用担当者)、②オペレーション分科会(参加者=システムを操作するオペレーション担当者)、③営業企画分科会(参加者=システムを活用する営業・企画担当者)の3つに会議体を分けて開催しました。

各々の立場でITシステムに関する話し合いを行い、相互に情報連携や課題提起を行う必要がある場合は全体会議を開催します。

必要な会議に集中的に参加でき、参加者の作業効率や会議進行の効率も向上することができます。

(3)取引先の報告書フォーマットを活用しよう

取引先相手の会議を開催する際は、会議内で話し合った内容や決議事項などを議事録にまとめて取引先に提出する必要があります。

議事録については、取引先側で書式(報告書フォーマット)が規定されているケースもあります。この書式をあらかじめ会議の中でも共有して、その内容に沿って順次話し合いを行うことも会議を円滑に進めるために有効な手段です。

会議で使用した補足資料などは、報告書の添付資料として提出すればよいでしょう。

(4)協力者をつくっておくことも大切

取引先相手の会議開催においては、取引先側のキーマンの協力が重要です。

参加者同士の人間関係や、どのような決裁ルートになっているのか、決裁権限は誰が持っているのかなど、自社であれば把握している情報も取引先相手ではわからないケースが多々あります。

誰に話を通せば合意形成が得やすいかなど、情報収集をするためにも取引先キーマンとの信頼関係構築につとめましょう。

(5)言った・言わないのもめごと回避

前回の会議で決まったことが覆されることもあり得ますので、会議の議事録は大変重要です。特に社外に向けた議事内容は、その表現方法についても慎重な対応が必要になることもあります。

あとから取り返しのつかないことにならないように、議事録を必ず回覧して、参加者全員と会議内容の合意形成をとるように心がけましょう。


5.おわりに

社外での会議においてファシリテーションをうまくやるコツについて解説しました。

オンライン上での会議も一般化してきており、顔と名前が一致しない方が多数参加される場面は、社外の会議でもよく目の当たりにします。

会議開催においては、参加者に「会議に参加してよかった」と感じてもらえるようなファシリテーションが重要であることは間違いありません。本記事が、社外での会議を円滑に進めるうえで少しでも参考になれば幸いです。


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著者プロフィール

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吉川 和明

中小企業診断士

1965年生まれ,京都府京都市出身。
2021年中小企業診断士登録

大手電機メーカー系列のソフトウェア会社にて、流通業向けPOSシステム開発に長年携わり、現在は大手流通業向け法人営業を担当。得意分野は流通系ITシステム、業務改革、プロジェクトマネジメント、ファシリテーション。


お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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