母性健康管理措置による休暇に関する助成金
「母性健康管理措置」をご存じでしょうか。この措置は、事業主に男女雇用機会均等法により、妊娠中・出産後1年以内の女性労働者が保健指導・健康診査の際に主治医や助産師から指導を受け、事業主に申し出た場合、その指導事項を守ることができるようにするために必要な措置を講じることが義務付けられているものです。
母性健康管理措置には、次のような措置があります。
- 妊娠中の通勤緩和
- 妊娠中の休憩に関する措置
- 妊娠または出産後の症状等に関する措置(作業の制限、勤務時間の短縮、休業等)
これに加えて、「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置」として、妊娠中の女性労働者が、保健指導・健康診査を受けた結果、その作業などにおける新型コロナウイルス感染症への感染のおそれに関する心理的ストレスが母体または胎児の健康保持に影響があるとして、主治医や助産師から指導を受け、それを事業主に申し出た場合、事業主に、休業などの必要な措置を講じることを義務付ける措置があります。
措置を講じることは義務付けられていますが、これらの措置を行った結果の不就労時間や不就労日に対する賃金の支払いまでは求められてはいません。
そこで、新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、休業が必要と医師によって判断された妊娠中の女性労働者が、安心して休暇を取得して出産し、出産後も継続して勤務できる職場環境を整備するために、当該女性労働者のために有給の休暇制度(年次有給休暇制度とは別の制度)を設けて取得させた事業主を助成する助成金が準備されています。ここでは、「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇制度導入助成金」と「両立支援等助成金(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース)」(以下、「両立支援等助成金、休暇取得支援コースという」の二つの概要をご紹介していきます。
詳細は必ず支給要領等を確認の上、不明な点は問い合わせをするなどしていただきますようお願いします。新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇制度導入助成金
【1】新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇制度導入助成金
≪助成金を受けるための要件等≫
次の(1)~(4)の全ての条件を満たす事業主が対象となります。
(1)新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師または助産師の指導により、休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が取得できる有給の休暇制度(年次有給休暇とは別の制度)を整備すること
(2)整備した有給休暇制度の内容を新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の内容と合わせて労働者(全労働者)に周知した事業主であること
(3)令和3年4月1日から令和4年1月31日までの間に、当該休暇を合計5日以上取得させた事業主であること
(4)本助成金の申請までに、対象となる事業場において令和2年度の「両立支援等助成金(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース)」や令和2年度の「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金」を受給していない事業主であること
≪助成額≫
150,000円(1事業場につき、1回限り)
≪対象となる労働者及び有給の休暇制度≫
新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師または助産師の指導により休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が取得できる有給休暇。ただし、労働基準法の定めるところの年次有給休暇を除くもの。また、年次有給休暇を取得した場合に支払われる賃金相当額の6割以上の賃金が支払われるものをいいます。
対象の女性労働者には雇用保険の被保険者ではない人も含まれ、整備した有給休暇制度に基づく有給休暇を取得した日の前日までに1日以上勤務したことがある労働者となります。ただし、雇用関係が確認できない人や、法人の取締役、合名会社等の社員、監査役、協同組合等の社団または財団の役員等は除かれます。
常時10人以上の労働者を使用している事業主が、新たな休暇制度を導入した場合には、労働基準法に基づき、遅滞なく就業規則を変更し、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
≪支給申請の流れ≫
【2】両立支援等助成金(令和3年度)
(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース)
≪助成金を受けるための要件等≫
令和2年5月7日から令和4年1月31日までの期間で、次の(1)~(3)の全ての条件を満たす事業主が対象となります。
- 新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師または助産師の指導により休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が取得できる有給の休暇制度(年次有給休暇を除き、年次有給休暇の賃金相当額の6割以上が支払われるものに限る)を整備したこと
- 当該有給休暇制度の内容を新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の内容とあわせて全労働者に周知した事業主であること
- 当該休暇を合計して20日以上取得させた事業主であること
※制度整備、社内周知は休暇付与後であっても対象となります。
※令和2年度(令和3年3月31日まで)の有給取得日数が5日未満で、令和2年度要件に基づく申請ができなかった場合も、令和3年4月1日以降に取得した日数と合算して合計20日以上となれば対象となります。
併給
【1】の新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇制度導入助成金と【2】の両立支援等助成金(令和3年度)(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース)との併給
対象労働者が「雇用保険被保険者」の場合、同一の対象労働者の同一の期間は併給が可能です。併給する場合にはそれぞれの要件を満たす必要があります。
ただし、すでに令和2年度の新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金を受給したことがある事業場は併給できませんので、ご注意ください。