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借金をするときの注意

著者: 税理士  髙橋 昌也

借金をするときの注意

前回の記事で、融資(借金)について取り上げました。

借金とは時間との戦いであり、当初借りたときの目的を忘れないことが必要不可欠であることを確認しました。

今回は少し視点を変えて、借金を申し込むに当たっての注意点を確認していきましょう。


みんな、誰から借りている?

そもそも、世の中の社長さんは誰からお金を借りているのでしょうか?

基本的には金融機関(銀行や信用金庫)から借りていることが多いです。金融機関に借金を申し込むときの注意点は、後であらためてご紹介します。

その一方、ごく小規模な個人事業主や、開業時点で一定の資金が必要な業種(飲食店や店舗での小売業など)では、親戚や友人・知人などの個人から借りているケースも散見されます。開業前であったり、実績が出ていないこともあって、金融機関に申し込むのもためらわれて・・・というケースが多いようです。

みなさん、なんとなく想像はついているかと思いますが・・・個人からお金を借りるのは、あまりオススメできる方法とは言い難いのが本音です。人間関係というものは、お金が絡むと途端に面倒くさいことになりがちです。また商売というのはどうしたって水物です。良いときもあれば悪いときもある。そういう波がある中で、お金周りが厳しくなった結果、親戚や友人との大切なお付き合いが消滅してしまった・・・そんな悲しい事例を、これまで幾度となくみてきました。

少し調べてみるとわかりますが、いろいろな金融機関で独立開業者向けの融資制度を用意しています。その種類は思いの外多く、中には融資ではなく補助金、助成金が出るようなものもあるようです。

また昨今(2021年時点)のような厳しい経済環境下にあって、業態変更を促すための融資制度や補助金制度も拡充されてきました。もちろん、実際に使える制度ばかりとは言えませんが、きちんと情報を集めれば、自分でも活用できそうなものはみつかるかもしれません。

いきなり個人に当たるのではなく、まずは金融機関等に資金調達の打診をしてみることを、強くオススメします。個人からの借入は、あらゆる手段を検討した後の最終手段として頂いた方が、色々な意味で不幸になりづらいかと思います。


社長借入はある程度あります

法人の場合には、社長借入というものもよく存在します。社長個人が会社に対してお金を貸し付けている状態です。この状態自体は、それほど大きな問題ではありません。社長自らが自分の生活費を削ってまで商売にお金を投じているのですから、それだけ頑張っているんだね・・・という証明ともいえます。

その金額も数万円から中には数千万円くらいまで、かなり幅があります。法人が大きくなると個人からの借入金が嫌われることもあるようですが、それは少し成長した後のお話です。

とはいえ、あまり社長借入の残高が多すぎると、社長さんの相続発生時(死亡時)に遺産として取り扱われ、問題となることもあります。社長さんの年齢や健康状態によっては、きっちりと返済を進めていくなど対応が必要です。

大問題となるのは、社長さんに対して貸付金が発生しているパターンです。これはかなりマズイ状況なので、また後日、別の記事で取り上げたいと思います。


どんな金融機関と付き合う?

ここから改めて、金融機関に借金を申し込むときの注意点をご紹介します。まず先行して、預金口座の開設段階から検討が必要です。

ごく小規模な事業をはじめようとする場合、まずは地元の信用金庫や地銀といった、地場に根付いた小規模な金融機関に預金口座を開設することを強くオススメします。というのも、金融機関というのは、その種類によって扱っている融資の規模が全く異なるためです。

簡単にいえば、都市銀と呼ばれるような大きなところは、中小零細法人はあまり相手にしてくれません。最低単位で億円、十億円といった感じの、大きな融資が都市銀の取り扱い分野です。

一方、中小零細法人の場合、数百万円といった(事業の上では)小規模な融資を申し込みたいと考えることがとても多いです。

しかし、仮に都市銀にしか預金口座がない場合・・・

  • あらためて近くの信金や地銀で預金口座を開設する
  • その上で借金を申し込む

こんな感じの段階を踏む必要があります。借金をしたいときというのは、大概は時間に余裕がありません。借りたいときにさっと借りられるよう、少なくとも1つくらいは地元の金融機関に預金口座を持っておくことをオススメします。

多店舗展開など、事業が広範囲に広がるようなときには、やはり都市銀といった大規模な金融機関の力を借りることが必要になってきます。自社の段階に応じて、適切な金融機関と付き合うことが大切です。


いきなり行ってもダメなことも

もうひとつ、とても大切なのは事前の準備です。金融機関も商売ですので、なんの資料もなくいきなり「お金を貸してくれ!」と言われても、対応できません。

  • 会社の現状がわかる資料の整理(決算書や付随資料など)
  • 社長さんがきちんと借金をしたい理由を説明すること
  • 早め早めの行動を心がける

これらの下準備をしておくと、融資の申込はスムーズに進みます。しかし、実はこの下準備の段階において、企業によってかなり差異があるのも事実です。

例えば以下のようなパターンです。

  • 決算書がいつまで経っても提出できない
  • 金融機関とやり取りが不足していて意思疎通が図れていない

残念ながら、金融機関と情報交換をする努力を怠っている社長さんは、少なくありません。また金融機関側の都合で考えれば、常に融資審査や稟議といった時間制限と戦い続けています。

先方から「書類を出して欲しい」と言われたら、なるべく早く提出する。これをきちんと守れているだけでも、印象はかなり変わってきます。


事業者と税理士の関係

そしてもうひとつ、この辺りのお話をしていると、どうしても中小零細事業者と税理士の関係が問題になってきます。個人事業、法人問わず、ある程度の規模以上だと税理士に会計や税務を依頼していることは珍しくありません。

しかし、社長さんと税理士との間でやり取りがうまくいっていないことも、大変残念ながら珍しくないようです。金融機関からは決算書の提出を急かされる。でも税理士がそのことを認識していない・・・。この場合、社長さんは税理士に対して、きちんと急いでいる旨を伝達しなければなりません。
それでも変わらないとすると、もしかしたら税理士の変更も検討する必要があるかもしれません。逆に税理士との関係が良好だと、税理士が金融機関を仲介してくれるなど、よりスムーズに取引が進むこともあります。

税理士選びについては、色々と考えて頂きたい点も多いので、後日あらためて別記事にてご紹介するつもりです。


お金を借りる場合、少なくともこれくらいのことは事前に認識した上で検討をしておいた方が間違いないかと思います。対応を間違えると、人生的にも辛いことになりがちな借金。入念に下準備をしておきましょう。

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著者プロフィール

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髙橋 昌也

税理士

プロフィール
1978年川崎市産まれ。
2006年税理士試験合格、2007年に独立開業。東京地方税理士会川崎北支部所属。同年、FP資格取得。
開業当初より「ちいさなお仕事の支援」に特化して事業を展開。
単なる税務にとどまらず、顧客の事業計画策定を支援するなど業務全般の支援を実施。

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