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節税について

著者: 税理士  髙橋 昌也

節税について

「ちいさなおしごと」を展開するに当たり、税負担は本当に大きなコストです。できれば払いたくない、というのがほぼすべての社長さんに共通の意見かと思います。

節税という言葉に、大きな魅力を感じる方も多いのではないでしょうか?

今回は「節税」について、基本的な考え方を確認します。


節税・租税回避・脱税

まず言葉の確認です。タイトルにあげた言葉は、たまに混同されて使われることがあります。

  • 節税
    法律的に認められている方法を用いて、税金を安くする行為です。設備投資をしたり、保険に加入したりする方法が有名です。

  • 租税回避
    通常とは大きく異なる取引形態を採用することにより、課税を回避する行為です。例えば商品の売買時に海外を迂回させたり、関連会社を経由させるようなものをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。
    特に富裕層と呼ばれる人々の間では、このような情報が常に流通しているとも言われています。近年ではこの租税回避が世界的な問題ともなっていて、タックスヘイブン対策税制といった取り組みが急激に進んでいます。

  • 脱税
    法律で定められているルールを破る行為で、違反行為です。売上を隠したり、経費を水増しするのが代表例です。見つかれば厳しい罰金が課され、程度がひどい場合には訴追されることもあります。

規模の小さな会社や事業者の場合、節税に励んでいるつもりが、気がついたら脱税に手を染めてしまった、なんて事例は残念ながら少なくありません。「悪気はなかった」では済まない話なので、本当に注意が必要です。


経費になるか否かの判断基準

税理士という仕事をしていると、よく「これって経費になるの?」といった質問を受けます。この質問については、事業との関連性という観点がとても大切です。事例で考えてみましょう。

  • コンビニで漫画雑誌を買ってきた
    その人が製造業を営んでいる人で、自分が読むために買っただけであれば、事業性は認められませんので、経費にはなりません。
    一方、例えば飲食店を営んでいる人が、お店でお客様に読んでもらうために買ってきているのであれば、それは明らかに事業性が認められるでしょう。

  • 美容院に行った
    一般的な事務職をしている人が美容院に行ったのであれば、それは生活費と考えるのが妥当です。
    しかし、もし人前に立つお仕事(例えばモデルとかタレント)であれば、自分の容姿そのものが商品価値を有していることになります。美容院で髪をセットする費用も、事業性が認められると考えられます。

このように、経費が認められるか否かは、その事業との関連性が必要です。もし事業との関連性がわかりにくい経費がある場合には、その経緯を何かに記録しておくなど、第三者にきちんと説明できるようにしておくことが大切です(例:スーパーで食材を買ってきて、取引先の方々を招いて、自宅で接待バーベキューをした等)。

まったく経費性が認められない支出を経費として計上するのは、簡単に言えば架空経費の計上、つまり脱税行為です。そうしたくなる気持ちは確かにあるかもしれませんが、やめておくことを強くオススメします。


節税が良いものとは限らない

ここまで、節税というのは「基本的に良いもの」という観点からお話を進めてきました。しかし、実はそうとは言い切れないことを、しっかりと理解する必要があります。

税理士をしていると、税金がたくさん発生しそうなお客様から「なんか良い節税とかないの?」なんて質問を受けることが、珍しくありません。それに対して、よく次のように回答します。

税金を払いたくないのであれば、利益が吹き飛ぶくらい色々な経費を発生させれば良い

全額損金になるような生命保険にでも大量に加入すれば、間違いなく節税できる

ただし、その結果会社のお金は著しく減少するし、経営は苦しくなることは覚悟すること

例えば経費を100増やしたとして、それで節税できるのは30~40くらいがいいところです。つまり、60~70くらい、手元のお金が減少します。手元のお金が減少すれば、当然資金繰りが悪化します。

事業経営というのは、売上をあげ、利益をしっかり残し、そこから税金を負担したり借金の返済を進めつつ、手元に残ったお金を使って次の投資を続ける、というのが本来の循環です。過剰な節税策は、この循環を大きく歪めることにつながりかねません。


事業に必要なものをしっかりと準備していく

大切なのは、その設備投資や経費が「事業を良くするために必要なものであること」です。例えば先程、保険に入ることを悪者のように扱ってしまいました。しかし、場合によってはぜひ保険に入るべき状況も存在します。

大きな設備投資を行うことになり、金融機関から融資を受けることになった

この場合、設備投資をした後になって、社長さんに万が一の事態が起こってしまうと、残された社員や家族がとても苦労することになってしまいかねません。であれば、社長さんの死亡や疾病を対象に保険加入することは、むしろ事業の安定を図る上で必要不可欠です。

必要な保障を用意した結果として、それが節税につながった。これは何の問題もありませんし、むしろそこで無保険を放置しておくことの方が大問題です。何かしらの支出をする場合には、

その支出(設備投資・経費計上)が事業の安定や発展に寄与するものか否か

節税のための節税ではなく、事業への貢献度を判断基準にすることがとても大切です。


積極的に採用すべき節税策もある

ここまで「節税のための節税は回避すべき」と指摘してきました。その一方で、積極的に採用すべき節税策も存在します。例えば、一定の設備投資に対する節税策です。

設備投資(機械装置や器具備品、建物付属設備など)をするとき、その設備が所定の条件を満たしていると、経費の前倒し計上をしたり、所定の割合で税額控除を受けたりすることができます。どちらにせよ設備投資を行うのであれば、これらの制度を活用しないのは大変もったいないです。

また事前に所定の計画書を策定することで、節税効果が上乗せされたり、所有にかかる税金(固定資産税)が減免されることもあります。この上乗せ制度については、また後日別の機会にご紹介します。

その他、従業員への人件費支払いが伸びたときに受けられる節税制度など、知っている人が得をできる制度はたくさんあります。

事業を成長させるべく、設備投資をしたり人材育成に乗り出している企業には、活用できる可能性のある制度が多数用意されています。そういった制度を漏らさず適用することで、合理的な節税を行い、手元資金を多く残し、それをまた事業の成長に投じる。そんな循環を構築できる中小企業を目指したいものです。

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著者プロフィール

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髙橋 昌也

税理士

プロフィール
1978年川崎市産まれ。
2006年税理士試験合格、2007年に独立開業。東京地方税理士会川崎北支部所属。同年、FP資格取得。
開業当初より「ちいさなお仕事の支援」に特化して事業を展開。
単なる税務にとどまらず、顧客の事業計画策定を支援するなど業務全般の支援を実施。

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