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ビジネス文書の書き方 第1回 正しく書く

著者:   bizocean編集部

ビジネス文書の書き方 第1回 正しく書く

この連載では、ビジネス文書の適切な書き方をお伝えします。

その前に、文章全般にわたって自分が正しい日本語を使えているか、ちょっと見直してみませんか?


間違いやすい日本語

早速クイズです。次の記述のうち、正しいものには○を、誤ったものには×をつけてください。

  1. 「順風満帆」は「じゅんぷうまんぽ」と読む。
  2. 「きょうみしんしん」は「興味深深(深々)」と書く。
  3. 「破天荒」の意味は「豪快で大胆な様子」である。

正解は、いずれも「×」です。「順風満帆」は「じゅんぷうまんぱん」と読み、「きょうみしんしん」は「興味津津(津々)」と書きます。「破天荒」の意味は「誰も成し得なかったことをすること。前代未聞」であり、これを正しく理解している人は約23%だと報告されています(文化庁「国語に関する世論調査」、2021年)。

話は変わりますが、あなたが大きな仕事を任されたとします。そんな時、「私には役不足で…」と尻込みしたことはありませんか? 「役不足」とは「能力に対して役割が軽い」という意味で、自分では謙遜したつもりだったのに、不満を述べていることになってしまいます。ここでは「力不足」が正しい言葉です。不等号で書くと、こうなります。

「役不足」  能力 > 役割

「力不足」  能力 < 役割

また、「力不足」と同じような意味合いで、「敷居が高い」という言葉を使うことがあるのではないでしょうか。「敷居が高い」とは、「不義理や不面目があって、その人の家を訪ねるのが遠慮される」という意味です。与えられた仕事が難しくて着手しにくいと感じるのなら、高いのは「敷居」ではなく「ハードル」ですね。


「てにをは」は難しい

 「あれ? 私の日本語、あやふやかも…」と不安になったあなた。では「ハードル」を下げましょう。

私が友人を店と服で買った。

「こんなめちゃくちゃな日本語を話す人はいないよ」と思うでしょう。この人は日本語を習い始めたばかりの外国人なのかもしれませんね。それなら、

私は友人と店で服を買った。

と直してあげましょう。

このように明らかに変な言葉は誰でも気づきますが、微妙に変な場合はどうでしょうか。

御社では、どんな取り組みがありますか。

このままでも意味は通じますが、助詞が少し不自然です。

御社には、どんな取り組みがありますか。

御社では、どんな取り組みをしていますか

どちらかに直すほうが、よりスムーズですね。

では、次の2つは、どう使い分けますか?

私は鈴木です。

私が鈴木です。

「特に使い分けないよ。どちらでもいいんじゃない?」と思うでしょう。ところが両者は少し違うのです。あなたの部署に来客があり、「鈴木さんは、どの方ですか?」と部屋を見回していたとします。こんな場面では、

「私鈴木です」と立ち上がりますね。

「私鈴木です」は、「あなたの名前は?」と質問された時の答え方です。

もうひとつ。次の文は正しいでしょうか?

昨日、知人に会いに新宿に行った。

これは正しい文です。ただ、「に」という助詞が3つ続きます。同じ文言が繰り返されると単調な印象になり、文章作法としてはイマイチなのです。

昨日、知人に会うため新宿へ行った。

と直せば、イマイチ感は解消します。


テンひとつで意味が変わる

読点(とうてん)の位置によって、意味が全く変わってしまう場合もあります。

1. 私は、泣きながら走る弟を追いかけた。

2. 私は泣きながら、走る弟を追いかけた。

泣いているのは、1では弟、2では私です。

敬語を正しく使っていますか?

次は敬語です。

相手を敬う尊敬語、自分がへりくだる謙譲語、言葉を柔らかくする丁寧語、それぞれに正しい使い方があります。

あの方に召し上がっていただこうと、お食事を差し上げました。

「召し上がる」は尊敬語、「差し上げる」は謙譲語、「お食事」の「お」は丁寧語です。

「いただく」という言い方はとても丁重に聞こえますが、過剰な敬語は違和感を与えることがあります。

お母さんに見ていただきたいと思い、写真を送りました。

身内に対しては敬語を使いません。また人前で「お母さん」と言うのは幼い言葉遣いになります。

母に見せたいと思い、写真を送りました。

と言うのがふさわしいでしょう。

このたび結婚させていただくことになりました。

芸能人が記者会見でこう話すのを聞いたことがありませんか? 他人に許可を求めるわけではありませんから、

このたび結婚することになりました

で十分ではないでしょうか。


話し言葉と書き言葉

話し言葉と書き言葉は別物です。話し言葉を多用すると砕けた文章になってしまい、書き言葉としては不適切です。

オレがやるって言っちゃったからさ、後はやるだけって話で。

このように話したとしても、そのまま書く人はいませんね。

見落としやすいのは文頭の接続詞です。

1. それで ⇒ そこで

2. でも  ⇒ しかし

3. だけど ⇒ けれども

4. なので ⇒ そのため

と適切に言い換えましょう。

細かな点にも注意が必要です。

知ってるけど ⇒ 知っているけれど

たった一文字を補うだけでも、端正な言葉遣いに改めることができます。


言葉は世につれ

次のうち、正しくない言葉はどれでしょうか?

行ける 来れる 言える 食べれる 見れる 思われる

文法的に正しくないのは「来れる」「食べれる」「見れる」の3つです。いわゆる「ら抜き」言葉で、一昔前は日本語の乱れの象徴として、やり玉に挙げられていました。

「食べれる」は、「食べられる」とするのが正しい表記です。そして「食べられる」には、尊敬・可能・受身の3つの意味があります。

尊敬 「お客様が召し上がる」

可能 「賞味期限内だから食べることができる」

受身 「ネズミが猫に食べられる」

しかし「ら」抜きにして「食べれる」と言えば「可能」の意味のみになり、これはこれで合理的な言葉なのかもしれません。ただし、ビジネスシーンや目上の人に使うのは避けたほうが良さそうです。

若者の間で流行した「やばい」という言葉が俎上に上げられたのは、もう二昔くらい前のことです。

当時の若者だった現在の中年層は、これを悪い意味でのみ使います。現在の若者は、良い意味と悪い意味とを文脈によって使い分けています。年配者の中にはこの言葉を不快に感じる人も多く、あまり口にしないようです。世代によって解釈が違うのですね。

ところで、「やばい」という言葉は、意外にも江戸時代から存在したという説があります。十返舎一九の『東海道中膝栗毛』に「やばなこと」という表現があるそうです。「やば」は「矢場(射的場)」または「厄場(牢獄)」と書き、「不都合な状況」を指したのだとか。


日本語に迷った時は

日本語って面白いですね。そして難しいですね。しかし心配はいりません。多くの人が、しょっちゅう日本語を間違えていますから。

それに、日本人は寛容です。大人になれば「お前の日本語は、けしからん」と叱られることは滅多にありません。

冒頭で紹介した「破天荒」という言葉を、本来は誤用である「豪快で大胆な様子」との意味で使うことの是非を尋ねたアンケート(日本トレンドリサーチ、2021年)があります。その分析によると、「使っても良いと思う」と回答した人は約64%、「使うのは良くないと思う」との回答は約36%となっています。

さて、「自分の言葉遣いが正しいか、この機会に気をつけてみようかな」と思ったあなた。そんな時は、遠慮なく他者の力を借りましょう。真っ先に相談すべき相手は、パソコンの基本ソフトwordです。このwordには文字校正機能があり、入力ミス、変換ミス、誤字・脱字・重複、同音異義語、助詞や慣用句の誤りなどを表示してくれます。メールを送信する前に、ビジネス文書を発行する前に、一手間かけてwordに転記して確認すると、書き間違いを確実に減らせます。

そして、あなたの周りの国語力が高い人に、チェックをお願いしてみるのはいかがでしょう。適切な助言や修正をもらうことができれば、その人はあなたの頼もしいブレーンになってくれるはずです。

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