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建設業許可を受けるために必要な条件(5要件)のポイント(1)

著者: 弁護士・法務博士(専門職)  平 裕介

建設業許可を受けるために必要な条件(5要件)のポイント(1)

〔建設業許可を受けるために必要な5つの条件(要件)〕

当社は建設業の許可(建設業許可)を受けた方が良いのではないかと検討していまして、その申請をしようと考えているところです。細かい書類関係については実際に申請するに際して行政書士などの専門家の先生からご助言などいただくとしても、事前に建設業許可を受けるための必要な条件については知っておきたいと思っています。これらについて教えてください。

はい。建設業許可を受けるための必要な条件、正確には「条件」ではなく「要件」といいますが、許可の申請の検討段階で、許可の要件の概要を知っておかないと、後で御社の申請に関する業務が無駄になってしまうこともありますので、そもそも許可が下りそうなのかという、いわばアタリを付けるためにも、許可の要件のポイントを知っておいてください。要件としては、大きく分けて5つあります(5要件)。

建設業法に書いてあることでしょうか?

はい、建設業法(以下、「法」と略すことがあります)7条と8条に規定されています。また、部分的には、国土交通省の省令(建設業法施行規則)の方で定められていまして(法7条1号、法施行規則7条)、さらに、建設業法や建設業法施行規則の解釈や運用に関しては、建設業許可事務ガイドライン(平成13年4月3日国総建第97号総合政策局建設業課長から地方整備局建政部長等あて、最終改正令和2年12月25日国不建第311号)が公表されており、参考になります(以下、この建設業許可事務ガイドラインを単に「ガイドライン」と略します)。5要件のうち、法7条に4つの積極的な要件が、法8条に1つの消極的な要件が規定されています。

〇建設業法(昭和24法律第100号)(抜粋)
(許可の基準)

第7条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。

一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。

二 その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和22年法律第26号)による高等学校(旧中等学校令(昭和18年勅令第36号)による実業学校を含む。…)若しくは中等教育学校を卒業した後5年以上又は同法による大学(旧大学令(大正7年勅令第388号)による大学を含む。同号ロにおいて同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治36年勅令第61号)による専門学校を含む。同号ロにおいて同じ。)を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後3年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し10年以上実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者

三 法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。

四 請負契約(第3条第1項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。

第8条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次の各号のいずれか(許可の更新を受けようとする者にあっては、第一号又は第七号から第十四号までのいずれか)に該当するとき、又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、許可をしてはならない。
一 ~ 十四 (略)


〔第1要件:経営業務の管理責任者がいること〕

条件…ではなくて、「要件」の1つ目ですが、法7条の「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること」というものですかね?

はい、第1要件は、経営業務の管理責任者がいること(法7条1号)です。法律の条文自体は抽象的ですので、具体的には、法施行規則やガイドラインを確認する必要があります。

〇建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)(抜粋、下線は引用者)
(法第7条第1号の基準)
第7条 法第7条第1号の国土交通省令で定める基準は、次のとおりとする。

一 次のいずれかに該当するものであること。
イ 常勤役員等のうち1人が次のいずれかに該当する者であること。
(1) 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2) 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
(3) 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者

ロ 常勤役員等のうち1人が次のいずれかに該当する者であって、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあっては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあっては当該建設業を営む者における5年以上の建設業の業務経験に限る。…)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものであること。
(1) 建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
(2) 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者

ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの。

二 次のいずれにも該当する者であること。
イ 健康保険法…第3条第3項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、健康保険法施行規則…第19条第1項の規定による届書を提出した者であること。
ロ 厚生年金保険法…第6条第1項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、厚生年金保険法施行規則…第13条第1項の規定による届書を提出した者であること。
ハ 雇用保険法…第5条第1項に規定する適用事業の事業所に該当する全ての営業所に関し、雇用保険法施行規則…第141条第1項の規定による届書を提出した者であること。

確かに、色々規定されていますね…。まず、法施行規則7条1号イの「常勤役員等」というのは、具体的にはどのような地位にある人を指しているのでしょうか?

「常勤役員等」とは、法人の場合には、その役員のうち常勤である方をいいます。今回のご相談には直接関係ありませんが、法人ではなく個人の場合には、個人事業主ご本人又はその支配人をいいます。それから、「常勤役員等」の「役員」ですが、これは、業務を執行する社員(持分会社の業務を執行する社員)、取締役(株式会社の取締役)、執行役(指名委員会等設置会社の執行役)又はこれらに準ずる者をいいます(ガイドライン【第7条関係】1.(1)①)。

「これらに準ずる者」とは?

「これらに準ずる者」とは、法人格のある各種組合等の理事等をいいます。執行役員、監査役、会計参与、監事及び事務局長等は原則として含みませんが、業務を執行する社員、取締役又は執行役に準ずる地位にあって、建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けた執行役員等(建設業に関する事業の一部のみ分掌する事業部門(一部の営業分野のみを分掌する場合や資金・資材調達のみを分掌する場合等)の業務執行に係る権限移譲を受けた執行役員等を除きます)については、含まれるものとされています(ガイドライン同①)。

わかりました。ちなみに、「常勤」かどうかは、どのように判断されるのでしょうか?

役員のうち「常勤」であるものとは、原則として本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している方が該当します。他方で、建築士事務所を管理する建築士、宅地建物取引業者の専任の宅地建物取引士等の他の法令で専任を要するものと重複する者は、専任を要する営業体及び場所が同一である場合を除き「常勤」であるものには該当しない(ガイドライン同②)。

なるほど。次に、「建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者」(法施行規則7条1号イ(1))の「建設業に関し」という点ですが、これは業種ごとの区別はない、ということでしょうか?

そのとおりです。「建設業に関し」とは、全ての建設業の種類をいい、業種ごとの区別をせず、全て建設業に関するものとして取り扱うこととされています((ガイドライン同④))。ちなみに、「経営業務の管理責任者としての経験を有する者」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、経営業務の執行等建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者をいいます。

「建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者」(法施行規則7条1号イ(3))だと「5年」(同号イ(1)・(2))ではなくて、「6年」とされていますね。

はい、やはり経営業務の管理責任者を補助、サポートした経験者ということですから、1年長くなってしまっています。この経営業務の管理責任者を補佐(ガイドライン同⑦では「補佐」となっていますが、補助と同義と理解してよいでしょう。)する業務に従事した経験(以下「補佐経験」といいます)とは、経営業務の管理責任者に準ずる地位(業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位に次ぐ職制上の地位にある者)にあって、建設業に関する建設工事の施工に必要とされる資金の調達、技術者及び技能者の配置、下請業者との契約の締結等の経営業務全般について、従事した経験をいいます(ガイドライン同⑦イ)。例えば、建設部長の地位にある方などは、補佐経験を有する者に普通は該当します。ちなみに、この建設業に関する6年以上の補佐経験については、建設業に関する補佐経験の期間と、執行役員等としての経験及び経営業務の管理責任者としての経験の期間が通算6年以上である場合も、該当しますし、さらに、法人、個人又はその両方における経験であるかを問わないものとされていますね(ガイドライン同⑦ロ・ハ)。

ところで、法施行規則の7条2号は、要するに何の規定でしょうか?

これは社会保険の加入に関する規定です((ガイドライン【第7条関係】1.(2))。

なるほど。他の要件についても聞いておきたいところですが、ちょっと長くなったので、休憩を挟んでもいいでしょうか(笑)。

ええ、そうしましょう。経営業務の管理責任者に関する第1要件の要点については概ね説明できたと思います。後ほど、第2要件から第5要件までのポイントについて説明しますね。

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著者プロフィール

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平 裕介

弁護士・法務博士(専門職)

永世綜合法律事務所、東京弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業。

行政事件・民事事件を中心に取り扱うとともに、行政法学を中心に研究を行い、大学や法科大学院の講義も担当する。元・東京都港区建築審査会専門調査員、小平市建築審査会委員、小平市建築紛争調停委員、国立市行政不服審査会委員、杉並区法律相談員、江戸川区法律アドバイザー、厚木市職員研修講師など自治体の委員等を多数担当し、行政争訟(市民と行政との紛争・訴訟)や自治体の法務に関する知見に精通する。

著書に、『行政手続実務体系』(民事法研究会、2021年)〔分担執筆〕、『実務解説 行政訴訟』(勁草書房、2020年)〔分担執筆〕、『法律家のための行政手続きハンドブック』(ぎょうせい、2019年)〔分担執筆〕、『新・行政不服審査の実務』(三協法規、2019年)〔分担執筆〕等多数。

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