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メンター制度とは?企業に導入する目的やメリット・デメリットを解説

監修者:マネーライフワークス 代表 / 社会保険労務士・1級FP技能士・CFP  岡崎 壮史

メンター制度とは?企業に導入する目的やメリット・デメリットを解説

メンター制度とは、会社の先輩が「メンター」となり、後輩の「メンティ」を個別に支援する制度のことです。

従来の人材育成制度では、業務で直接的な関わりがある上司が部下を指導するのが一般的でしたが、メンター制度は両者が業務上の関わりを持たず、業務以外の部分を支援するのが大きな特徴です。

コミュニケーションを重視することで人間関係を深められるメリットがある一方、メンター制度にはデメリットもあるため、自社の状況に合わせて導入することが大切です。

本記事では、メンター制度を企業に導入する目的やメリット・デメリットを解説します。


メンター制度とは?

まずは、メンター制度の概要を見ていきましょう。メンター制度は国も推奨しており、特に女性社員の活躍推進への活用が期待されています。

メンター制度の意味

「メンター」は、「良き指導者」や「優れた助言者」を意味し、仕事やキャリアの手本となり、指導を行う人材です。

一方、メンターからキャリアや仕事についての支援を受けながらキャリアアップを図る人材を「メンティ」と呼びます。

厚生労働省のマニュアルでは、メンター制度について次のように示されています。

“メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)に対して行う個別支援活動です。キャリア形成上の課題解決を援助して個人の成長を支えるとともに、職場内での悩みや問題解決をサポートする役割を果たします。”

出典:厚生労働省 女性社員の活躍を推進するための「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」

メンター制度が導入された背景

メンター制度は、近年のキャリア形成の多様化や、人間関係の希薄化に伴うコミュニケーション不足の解決方法として注目されるようになりました。

また、一人ひとりに対してきめ細かいアドバイスやサポートを提供できる点から、安心感のある関係性を構築するうえで、高い効果が期待されている制度といえます。

近年、従来の終身雇用制や年功序列制が崩壊し、実力主義の雇用形態へと変化が進んでいます。その結果として、若手社員と先輩社員の関係構築が難しくなっているのです。

人材育成の形式が変化することで若手社員が孤立する懸念もあり、その解決法のひとつとしてメンター制度が注目を集めています。


メンター制度を導入する企業の目的

メンター制度を企業へ導入する主な目的として、「若手社員の離職防止」と「女性活躍推進」の2点が挙げられます。

1.若手社員の離職防止

中途採用の社員を含む入社間もない若手社員に対して、メンターを単なる指導者としてではなく、なんでも相談できるような相手として設定することで、社内における「安心できる場所」を創造することが可能です。

メンターが若手社員の心のより所となり、メンタルの安定化につながるでしょう。

2.女性活躍推進

近年、女性の活躍を国が施策として推奨するようになってきており、メンター制度の活用で女性管理職候補者の昇進をサポートすることが期待されています。


メンター制度と混同しやすい制度との違い

メンター制度と混同しやすい制度に、「OJT制度」と「エルダー制度」があります。ここでは、それぞれの違いを解説します。

OJT制度

OJTとは「On the Job Training」の略で、仕事をするうえで必要な知識や技術を、実際の業務を通じて上司が部下に、もしくは先輩が後輩に指導を行う教育方法です。

これに対してメンター制度は、メンターとメンティが、業務上の関係性を持たない場合が多いのが特徴といえます。

「先輩と後輩」や「上司と部下」のように立場を明確に分けることなく、業務外の部分でも相談できる関係性なのがOJTとの大きな違いです。

エルダー制度

エルダー制度とは、先輩社員(エルダー)が新入社員や若手社員のサポートを行う制度です。業務面におけるサポートに重点を置くのが特徴で、若手が少しでも早く業務を一人で行えるようにするためのサポートを実施します。

先輩をメンターとして、若手社員や新入社員のサポートを行うという点においてはメンター制度と似ていますが、メンター制度では業務に関するサポートはほとんど行いません

エルダー制度は業務の修得が主な目的で、メンター制度はメンタル面などの精神的な部分に対するサポートを目的とする点が大きく異なります。


メンター制度のメリット

メンター制度には、次のようなメリットがあります。

1. 社内のコミュニケーションが活性化する

働き方の多様化などにより、近年、会社内でのコミュニケーションが減少傾向にあります。メンター制度を活用することで、業務外のコミュニケーションの活性化が期待できるでしょう。

また、メンター制度では、もともとはサポートを受ける立場だった若手社員の「メンティ」が「メンター」に成長し、新たなメンティとのコミュニケーションを構築する「メンタリングチェーン」が発生します。

メンタリングチェーンの広がりによって、働き方が多様化するなかでも社内コミュニケーションを維持でき、労働生産性の向上や離職率の低下につながります。

2. メンター自身のキャリア形成を考えるきっかけとなる

メンターというポジションが、メンター自身のキャリア形成を考えるきっかけになるのも、メンター制度のメリットのひとつです。

若手社員の担当となるメンターは、経験や知識が浅い社員が担当することが多い傾向にあります。メンター自身が不安を感じることもありますが、メンターがこれまで積み上げてきたキャリアの棚卸しを行い、担当するメンティに対して自分ができることを改めて認識することが重要です。

3. メンター自身のスキルアップにつながる

メンターは話を聞く姿勢や自分の考えを伝える方法を意識することで、コミュニケーション力を向上させることができます。

また、メンター自身が新人だった頃の経験を若手社員に伝えるなかで、今の自分のスキルがあれば、その当時は困難であったことも容易にできるようになっていると気づけるでしょう。

人材育成のスキルアップは、キャリア形成にもつながります


メンター制度のデメリット

メリットが多いメンター制度ですが、デメリットも存在します。

1. メンター社員の業務量が増加する

メンターとなった先輩社員は、自分の業務とは別に、メンティの相談や支援を行う必要があります。

さらに、先輩社員は、自身も上司から支援を受けるメンティの立場であることも多いです。メンターへの相談や支援を受けることすらままならない状態になる可能性があり、業務負担が増大します。結果的にメンター制度が機能しなくなる恐れがあります。

2. 相性によっては逆効果になる

メンターとメンティの相性も、人と人の関係性を重視するメンター制度の成果に大きく影響します。

相性がいいメンターとメンティであれば、双方が切磋琢磨できるような関係性を構築できるため、高い相乗効果が期待できます。

一方で、相性が悪いメンターとメンティが組んでしまうと、双方が能力の発揮を阻害するような関係性になることが多く、結果としてパフォーマンスが向上しません。場合によっては、メンター制度が離職理由となってしまう可能性もあるでしょう。


メンター制度のやり方とポイント

メンター制度の実施方法を順に見ていきましょう。各フェーズにおけるポイントも併せてご紹介します。

1.目標・ゴールを明確に設定する

メンター制度の目標設定のポイントとして「企業の目標の明確化」があります。企業の目標をもとに、メンター制度に期待する役割を考えましょう。

例えば、「若手社員の離職率を前年比で5%下げる」という企業目標があったとしたら、それを実現するためのメンターの設定方法や役割を決定します。

2.ルール作成・体制を整える

次に、メンター制度のルールを作成し、体制を整えましょう。メンターとメンティの面談は定期的に行うのか、場所はどこで行うのかなど、実際にメンター制度を実施するうえでのルールを決めます。

具体的には、次の内容についてルールを明確にしましょう。

  • メンターとの定期的な活動報告についてのルール
  • 問題があった場合の報告や指示系統のルール
  • メンティとの面談にかかった費用の精算ルール

また、計画だけでなく、フォロー体制についても考えることが大切です。結果ばかりにフォーカスするのではなく、メンター社員がメンターとして活動しやすい環境を整えていきましょう。

3.メンターとメンティを選定する

メンター制度を実施するうえで、メンターとメンティを選定する「マッチング」は、重要な要素といえます。

マッチングの具体的な方法として、次の2種類があります。

アサインメント方式

人事担当者がメンターとメンティの組み合わせを決定する方式です。相性が良くない組み合わせになる可能性がある一方、組み合わせによっては、予想以上の成果が生まれることもあります。

ドラフト方式

メンターリストを提示されたメンティが、自分でメンターを選ぶ方式です。すぐにマッチングできないこともありますが、メンティが自らの意思でメンターを選べるため、より深い関係性を構築できます。

4.メンター制度の実施・運用・分析する

実際にメンター制度をどのように進めるのかは当事者に委ねられますが、基本的な手順を守ることが大切です

なかでも重要なのが、コミュニケーションの方法です。メンター制度は通常、「初期段階」「深化段階」「解消段階」の3段階のステップで進んでいき、各段階に適したコミュニケーションの方法があります。

①初期段階

初期段階では、メンター制度の趣旨や目的を双方が理解したうえで、メンティがメンターと話したい内容や、どのように関わりを持っていきたいかを確認します。その他、仕事上の不安材料などについても確認が必要です。

②深化段階

この段階になると、コミュニケーションの方法や効果的な関わり方について、双方の理解が進んでいきます。このタイミングで振り返りの機会を設けましょう

メンター制度を開始した当初に決めた目標に対する進捗や、仕事やプライベートにおける懸念材料を確認することで、軌道修正を図ります。

③解消段階

メンター関係の期間は1年とされていることが多く、期限が来たらいったん関係は終了となります。

振り返りを実施し、メンター制度を通じて得たことを、その後はメンティが自律的に行えるよう促します。また、メンティのライフイベントも考慮したうえでキャリアプランについて考え、会社への提言も実施しましょう。

④メンター制度実施後の分析

メンター制度を実施後、企業の担当者は、メンター・メンティの双方にヒアリングやアンケートを行います。その結果を、次期以降に行うメンター制度に向けた改善に役立てましょう。

また、メンター制度への取り組みを社内外に周知することで、人材育成に対する会社の姿勢を明確にできます。

参考:厚生労働省 女性社員の活躍を推進するための「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」


メンター制度についてのまとめ

メンター制度について、企業に導入する目的やメリット・デメリットを解説しました。

働き方改革や人材育成手法の変化によって、社員間のコミュニケーションの機会は減少しつつあります。メンター制度は、時代の変化に対応できる可能性がある、画期的な制度といえるでしょう。

メンター制度を成功させるポイントは、メンターとメンティの信頼関係です。言いづらいこともお互い素直に言えるような関係性が築ければ、メンティのみならず、メンターにも学びが多い時間になります。

メンター制度の基本を守りつつ、自社の状況に合わせて適切な方法を考えることが大切です。

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監修者プロフィール

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岡崎 壮史

マネーライフワークス 代表 / 社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

生命保険の営業として、生命保険や個人年金といった資産運用などに関する業務を担当する。

平成26年9月に1級FP技能士の資格を取得。その後、平成27年11月にFPの国際ライセンスであるCFPを取得。資格取得後は、保険や個人年金以外の様々な金融資産の運用や活用についてのセミナーや金融関係のサイトへの執筆・記事監修などを行う。

平成29年9月にマネーライフワークスを設立。

現在は、助成金を活用した企業の労務環境改善コンサルタントとして、労働者・事業主に対して職場環境の改善に向けた企業研修や助成金活用セミナーと保険などの金融商品を活用した資産運用についてのサイトへの記事の執筆や監修なども行っている。

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