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自分で作ったからお伝えしたい合同会社設立1

著者: 中小企業診断士  山本 哲也

自分で作ったからお伝えしたい合同会社設立1

私自身が自分で作って運営しているからこそお勧めしたい法人組織が、合同会社です。

合同会社はアメリカ発の会社組織で、最近ではAppleやGoogle、ユニバーサルスタジオジャパンなどが日本法人において合同会社形態をとっています。

知名度向上が課題の合同会社ですが、近年は年間3万社程度が活用している組織形態であり、毎年設立される法人の2~3割は合同会社となっています。

今後、徐々に知名度は向上してくるものと考えられます。


1.初めてなら合同会社が向いている理由

この記事をお読みになっている読者は、おそらく「安くできるのはいいことだけれど、まだほとんどが株式会社を選ぶということは、何か大きなデメリットがあるはず」と考えているのではないでしょうか?

あなたが「初めて会社を作って起業しよう」としている人であれば、その考えは、100%間違っています。個人事業としてすでに業歴があり、今後、さらに人を雇い入れたり、共同経営者を迎え入れたり、出資者を募ったり、将来的には上場などのスケールアップを見据えているのであれば、株式会社を選択することをお勧めします。

つまり、合同会社は、「自分や家族中心の、それほど大きな事業ではないけれど法人化によるメリットを享受したい」そんな方々にとても適した制度なのです。

(1) 合同会社設立のデメリット

まずは、おそらく読者の知りたいデメリットのお話からします。

合同会社を設立して、私が「株式会社にしておけばよかったな」と感じた出来事を紹介します。ただ、個人的にはいまでも合同会社でよかったと考えていますので、「あえて何かデメリットを探すとするならば・・・」という感じです。

合同会社のデメリットは、一般的には大きく4つあるといわれていますが、最大のデメリットは「知名度が低いこと」です。設立当初は、電話で正式社名を言うと「えっ?もう一度お願いします」と聞き返されることがよくありました。当社は大阪郊外のベッドタウンに所在しており、地元の企業さんとお付き合いを重視していることもあり、まだまだ一般的な組織とはいえません。特に地方在住でビジネスに関心のない方にとっては、「会社というのは株式会社の略称だ」くらいに認識していることも多いのではないでしょうか?

設立当初は、上記のような出来事が時々起こりました。「ちょっと変わった人?と思われたようで、寂しい」というマイナスの感情になることがデメリットでしょうか?

また、次のようなエピソードもあります。

金融機関口座の読み仮名欄において、株式会社では“カ)”と書きますが、合同会社ではどのように書くかご存じですか?

実は、“ゴ)”ではないのです。“ド)”が正解です。

税理士事務所のベテラン事務員さんにこれを間違われた時が、一番がっかりしました。しかし、さすがはベテランです。書類を書き直しながら私を見る顔に「普通の株式会社にしとけばいいのに、この人は変なことする面倒な人だ」と書いてありました(笑)。

ちなみに、有限会社は“ユ)”、合名会社は“メ)”、合資会社は“シ)”、相互会社は“ソウ)”と表記します。

知名度が低いこと以外のデメリットには、まず「社員同士が対立し経営がデッドロックする可能性」があるといわれていますが、一人会社なら悩んで息詰まってデッドロックすることはありますが、社員同士でもめることは残念ながらできません。当社は家族経営で、妻が代表社員・私が業務執行社員の2名体制ですが、「定款で議決権は出資割合による」と定めており、私が決定権を握っており、法的には私の権利が認められています。現実はこの限りではありませんが・・・。

加えて、「資金調達の方法が限られる」といわれています。合同会社には株式という制度がありませんから、株式を発行する増資ができません。が、これも定款で定めておくことで株式と似た考え方である“持ち分”を増やすことは可能です。簡単に説明すると、知人が経営に参画するにあたり、出資もしてもらうケースでは、定款変更を行い登記すれば資本金を増加させることができます。

ただし、株式会社のように株式を上場させて流通させることはできませんので、これが一番大きな違いではないかと考えています。しかし、これにも解決策があります。

合同会社は、株式会社へ組織変更をすることができますので、上場が見えてきた段階で組織変更すれば事足ります。変更も自分でできますので、強いて言えば、会社設立の手間をもう一度かける必要があることがデメリットになります。

(2) 合同会社設立のメリット

続いてメリットですが、これは何といっても設立コストが安いことです。

まず登録免許税がおよそ9万円安いのです。株式会社では「15万円または資本金の0.7%のうち高い方」となっていますが、合同会社では「6万円または資本金の0.7%のうち高い方」となっており、資本金858万円以上の資本金を設定するのでなければ、6万円で済みます。

しかし、これにも節約術があります。近年、経済産業省は開業率の向上を掲げ、いろいろな支援施策を打ち出しています。それに合わせて多くの自治体が創業支援制度を準備しています。ちなみに私の住む市では、市や商工会議所の開催するセミナーに参加したり、会議所の専門家相談や経営指導員さんから指導を受けたりすると、この登録免許税が50%OFFになるという支援制度を整備していました。これをちゃっかり利用して3万円を浮かせることに成功しました。みなさまも必ず調べるようにしてください。特に女性、高齢の起業家への支援策は手厚いものがあります。

もう1点、合同会社にも定款はありますが、公証人に見てもらって認証をしてもらう必要がないため、定款認証料の5万円が必要ありません。この2点で14万円も安く法人設立をすることができます。

私の場合、電子定款制度を利用したので、合計で3~4万円でサクッと設立できました。定款を見てもらう必要がないということは、公証人の予約をしたり、出向いたり、修正したり、といった作業がないため、設立までの日数も非常に短期間で可能です。準備さえしておけば、1日でできると思われます。

このほかにも、合同会社には決算公告義務がありませんので、官報掲載費の6万円は不要です。細かく紹介すると、株式会社では役員の任期に制限があり、任期終了都度に登記費用1万円が必要になりますが、合同会社では任期を設ける必要がありませんので、この費用も不要です。

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2.結局、どうすればよいのか?

ここまでお示ししたメリットとデメリットの両方を考えると、私は、以下のような法人は合同会社と相性がよいと考えています。

・スタートアップ

友人同士が集まって副業や起業するようなパターン。ステークホルダーが少なく、自分たちの貯金を持ち寄ったり、公的な資金や融資を受けたり、実験的に製品・サービスをローンチしてみるケース。

短期間に自分たちで設立できるメリットも享受できます。運悪く立ち行かないようなら、清算する勇気があればよいのです。非常に時代にあった方法だと思います。ほかにも消費税の減免や創業特典なども活用すれば、よりたくさんの資金を開発や顧客接点という価値創造に費やすことが可能です。

・一般消費者向けサービス

カフェやサロン、個人学習塾といったB2Cのビジネスモデルにおいては、仕入れ先との取引もそれほど大きくありませんし、何よりも屋号やサービス名を全面に出すことになり、社名や組織形態が第3者と触れる機会もほとんどありません。株式会社とするメリットがまったく見当たりません。


3.まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、私の体験談を交えながら、法人組織としての合同会社設立について一緒に考えてきました。あくまで私見ですので、この記事をお読みいただき、迷いが残る場合は株式会社をお勧めします。

一方で、「なるほど、自分には合同会社が向いている」と感じる方や好奇心が強い方は、合同会社設立の検討に進んでください。

いずれにしても取り返しのつかない決断でないことだけは間違いありません。このことを検討する時間があれば、ぜひ顧客への提供価値を高めるための時間としていただきたいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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著者プロフィール

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山本 哲也

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1966年生まれ,大阪府大阪市出身。
1998年ビルクリーニング技能士取得
2019年年中小企業診断士登録
総合サービス事業会社にてオープンイノベーションによる新規事業開発を担当。得意分野は新規事業開発、事業企画、営業チームビルディング、フランチャイズビジネス

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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