ファイブ・フォースとは?
競争に勝ち残るためには、競争が緩やかで魅力的な業界(市場)を選ぶことが賢明です。その業界が魅力的かどうか、すなわち収益構造を構築できるかどうかを判断するのが「ファイブ・フォース」です。例えば、簡単に参入できる市場は参入障壁が低いので、常に新規参入業者の脅威にさらされます。または、「第3のビール」のような代替品に市場を取って代わられる可能性があれば、業界の構造に大きな影響を及ぼします。このように、現在参入している市場の魅力を分析し、どれくらいの投資が適切かを判断する場合や、新規参入の可否を判断する場合に役に立つフレームワークです。
5つの力
それでは具体的に市場に影響を与える5つの力についてご説明します。
○同業他社との競合・・・同業他社の戦略変更(価格ダウン等)は大きな影響となります。販売人員増強や支店の開設など、同業競合他社の動向は常にチェックする必要があります。
○新規参入者の脅威・・・他業界からの新規参入者の登場は業界のルールを書き換える場合があります。参入するのに大きな設備投資が必要なかったり、技術的難易度が低い場合などは新規参入者の動向に注視する必要があります。
○代替品の脅威・・・消費者ニーズの変化や政府規制の緩和などにより、代替品に市場を奪われてしまう可能性があります。他にもコスト低減動向や新規技術開発なども代替品の登場を後押しする場合があります。
○買い手(顧客)の交渉力・・・現在の商品がコモディティ化(差別化が図れず価格競争に陥っている状態)していたり、顧客ニーズの変化などにより、顧客の値下げ要求力も大きな原因となります。
○仕入れ先の交渉力・・・仕入れようとしている商品の希少性や独自性、寡占度合いなど仕入れ先の価格決定力が高ければ御社のコストが上がり収益に直結します。
これら5つの力を見極めて、うまみのある市場なのかどうかを分析し、場合によっては早期撤退を意思決定するなど、ファイブ・フォースを活用することで俯瞰的に業界全体を見渡すことができます。
ファイブ・フォースを作ろう!
実際にファイブ・フォースを作ってみましょう。
国内のテレビメーカー業界を例に考えてみたいと思います。
○同業他社との競合・・・ブラウン管からデジタル液晶TVへの変化により、従来日本企業が得意としてきたアナログ的なすり合わせの技術が陳腐化、さらに製品の差別化が困難となり価格競争が激化した。
○新規参入者の脅威・・・サムスン・LGなど海外の低コスト企業による「新規参入」に加え、大手小売店のPB(プライベート・ブランド)商品など、新たな競合他社が現れている。
○代替品の脅威・・・ipadなどのタブレット端末の台頭やスマートフォンによるyou tubeや動画配信サービスの視聴がTVの代替品になりつつある。
○買い手(顧客)の交渉力・・・インターネットや携帯電話に可処分時間が移るなどのライフスタイルの変化によりTV離れが進行している。
○仕入れ先の交渉力・・・パネルメーカーが価格をコントロールしているため、サプライヤー業界に対し価格交渉ができず、コスト削減が難しくなっている。また、製造受託企業(EMS)が台頭、水平分業化が進行している。
このように、5つの力に分解・整理することにより、投資額の判断や新規参入の可否判断等を分析することができます。皆さんが現在されている事業を一度ファイブ・フォースに落とし込んでみてはいかがでしょうか?