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売上高営業利益率から何がわかる? 計算方法や目安・分析方法を解説

売上高営業利益率から何がわかる? 計算方法や目安・分析方法を解説

売上高営業利益率は、企業の収益性を分析するために用いられる指標のひとつです。

多くの企業が重視している経営数値であり、求め方や数値の目安、分析方法を把握することで事業運営に役立てられます。

この記事では、売上高営業利益率の概要や計算方法、適正値、数値を向上させる方法を解説します。


この記事の監修者
北原中小企業診断士事務所  代表 

売上高営業利益率とは?

売上高営業利益率とは、企業の売上高のうち、本業で稼いだ利益の割合を表したものです。財務状況を分析する際に用いられる「営業利益率」は、売上高営業利益率を指します。

経営の効率性や安定性を把握し、経営状況を見直すのに役立つため、経営者にとって欠かせない指標です。

また、売上高営業利益率は企業の本業における収益性を表すことから、資産家などのステークホルダーが企業の業績を評価する際の基本的な指標にもなっています。


売上高営業利益率の計算方法

売上高営業利益率を求めるには、売上高・売上総利益・営業利益の3つの値が必要です。売上高営業利益率の計算式に加えて、3つの値の求め方も見ていきましょう。

売上高営業利益率の計算式

売上高営業利益率の計算式は次の通りです。

売上高営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 × 100

例えば、営業利益が1,000千円、売上高が10,000千円だった場合は次のように計算します。

売上高営業利益率(%)= 営業利益1,000千円 ÷ 売上高10,000千円 × 100% = 10%

つまり、売上高営業利益率は10%となります。

売上高営業利益率を算出する際には決算書の損益計算書の数値を用いることが一般的です。

売上高営業利益率の計算に用いる「営業利益」については、法人等の決算書であれば損益計算書の「営業利益」の項目があります。

また、個人事業等で用いることの多い青色申告決算書では、「営業利益」の項目がなく、損益計算書の「差引金額」が営業利益にあたります。

売上高については、法人の損益計算書、青色申告決算書の損益計算書ともに「売上」の項目があるため、その金額を用いて算出します。

売上高営業利益を求めるための3つの指標

ここでは、売上高営業利益を求めるための3つの指標の求め方を解説します。

1. 売上高

売上高とは、企業が商品やサービスを提供することによって得た売上の総額のことです。

例えば、100円の商品が100個売れたら、売上高は1万円です。ここで注意したいのが、「売上高 = 利益」ではないことです。

利益は、売上高から人件費や仕入金額といった経費を差し引いた値です。
そのため、次のような計算式が成り立ちます。

売上高 = 単価 × 販売数

利益 = 売上高 - 経費

2. 売上総利益

売上総利益とは、売上から商品やサービスの原価を差し引いた利益のことで、粗利・粗利益とも呼ばれます。

売上総利益 = 売上高 - 売上原価

例えば、80円で仕入れた商品を100円で販売すると、20円が売上総利益になります。

「利益」にもいくつかの種類があり、売上総利益は損益計算書の中で最初に出てくる利益です。人件費や配送料といった経費が考慮されていないため、実際に企業に残る利益は売上総利益よりも少なくなります。

売上総利益は、企業の収益を大まかに把握するための指標といえます。

3. 営業利益

営業利益とは、企業が本業で稼いだ利益のことです。

売上総利益は売上から商品やサービスの原価を差し引いた利益ですが、営業利益は人件費や配送料といった原価以外の経費も差し引いたもので、企業の本来の営業力を表す指標です。

計算式は次の通りです。

営業利益 = 売上総利益 - 販売費および一般管理費

売上総利益は「売上高 - 売上原価」であることから、次の計算式で求めることも可能です。

営業利益 = 売上高 - 売上原価 - 販売費および一般管理費

売上原価とは、販売した商品にかかったコストのことです。販売費および一般管理費は、販売に必要な人件費・通信費・交際費といった営業に関するコストのことです。


売上高営業利益率の目安はある?

売上高営業利益率は業種によって開きが大きく、平均的な目安は存在しません。自社の売上高営業利益率を分析する際は、業種の平均値を参考にしながら改善を目指すとよいでしょう。

下の表は、中小企業庁の中小企業実態基本調査の令和3年度決算実績にもとづいて作成したものです。

業種

売上高営業利益率(%)

建設業

4.45%

製造業

3.97%

情報通信業

6.47%

運輸業・郵便業

0.87%

卸売業

2.01%

小売業

1.85%

不動産業・物品賃貸業

9.62%

学術研究、専門・技術サービス業

12.67%

宿泊業・飲食サービス業

▲0.17%

生活関連サービス業・娯楽業

2.08%

サービス業(その他)

4.12%

(少数点第3位以下四捨五入)

参考:中小企業実態基本調査 / 令和4年速報(令和3年度決算実績) 速報

宿泊業・飲食サービス業の売上高営業利益率は、通常1〜5%程度ですが、令和3年度決算実績ではコロナ禍による需要の減少でマイナスになっています。

また、運輸業・郵便業は燃料費の高騰が売上高営業利益率を引き下げる要因になっていると考えられます。


売上高営業利益率を分析する方法

売上高営業利益率は、目的によって分析方法を使い分けると効果的です。ここでは、売上高営業利益率を分析する方法を具体的に紹介します。

分解して分析する

売上高営業利益率の計算式を細かく見ると次のようになります。

売上高営業利益率 =(売上高 - 売上原価 - 販売費および一般管理費)÷ 売上高 × 100

売上高営業利益率を、「売上高」「売上原価」「販売費および一般管理費」に分けて分析することで、売上高営業利益率だけを比較しても見えてこない課題が見えるようになります。

売上に対するコストを適正化しようと思ったときに、商品にかかるコストである売上原価が高い場合と、営業にかかる販売費および一般管理費が高い場合では取るべき対策が異なります。

ほかの分析方法も取り入れる

企業の経営状況を分析する際は、売上高営業利益率以外の分析方法も取り入れながら総合的に判断することが重要です。

売上高営業利益率は収益性を表す指標のひとつですが、そればかりに着目してしまうと安全性が損なわれ、資金繰りがうまくいかなくなる可能性があります。

収益性・安全性・生産性・成長性といった複数の視点から分析できるような方法を考えましょう。

自社の経営方針を踏まえて分析する

売上高営業利益率は、自社の経営方針を踏まえたうえで分析しましょう。状況によっては、必ずしも売上高営業利益率を高めることが正解とは限らないためです。

例えば、将来的な事業の柱をつくるために市場を新規開拓している段階では、利益よりも市場占有率を優先したほうがよいこともあるでしょう。

売上高営業利益率の業種ごとの目安や競合他社との数値の比較が有効な場合もありますが、ときには自社の経営方針を優先することも必要です。


売上高営業利益率を高める方法

売上高営業利益率を高めるには、どのような方法があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

販売量を増やす

販売数を増やすことは、売上を伸ばすための基本的な方法です。営業にかかるコストを維持したまま販売数を増やせば、自然と売上高営業利益率を高めることができます。

また、販売量が増えれば仕入数も増え、大量仕入れによる単価の引き下げも期待できます。

販売量を増やすには、広告宣伝による認知度の向上や、顧客満足度を高めるための施策が効果的です。新規顧客とリピーター、継続顧客と休止顧客など、顧客の状況によって適切なアプローチ方法を検討しましょう。

経費を削減する

経費の削減も売上高営業利益率の向上に寄与します。経費のなかでも、販売費および一般管理費は効率化などによる削減余地が高いとされています。

まずは、非効率な働き方によって発生しているコストを洗い出しましょう。そのうえで業務フローの見直しなどによってコスト削減のための具体的な施策を立案します。

場合によっては、アウトソーシングの活用や業務効率化システムの導入が役立つこともありますが、過度なコスト削減は従業員のモチベーション低下などを引き起こすため、注意が必要です。

販売単価を上げる

販売単価を上げると、販売数が変わらなくても売上高を伸ばすことができます。結果的に営業利益が増え、売上高営業利益率を伸ばす効果があります。

販売単価を上げる「値上げ」を成功させるには、顧客が納得できる理由があることがポイントです。商品やサービスに付加価値を付ける、ユーザビリティの改善によって顧客の利便性を向上させるなど、価格が上がっても使い続けてもらえるような戦略を考えましょう。


売上高営業利益率についてのまとめ

売上高営業利益率は、企業の本業における収益力を表したもので、経営の現状や課題を把握するうえで重要な指標です。

業界の平均値を把握し、ほかの分析方法も取り入れながら、売上高営業利益率を用いて適切な経営判断を行いましょう。

ただし、自社の状況によっては、売上高営業利益率が高い状態が必ずしもよいとは限りません。あくまでも自社の経営方針を基準に、収益性をはかる目安のひとつとして売上高営業利益率を活用するのが最適です。


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監修者プロフィール

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北原 竜也

北原中小企業診断士事務所 代表

2017年に中小企業診断士を取得。補助金等の事業計画書作成支援を中心にコンサルティングを開始。

ITコーディネータ、健康経営エキスパートアドバイザーの資格も保有しており、中小企業を中心に幅広い知見を活かした支援・助言を行っている。

カウンセラーとしての側面もあり、カウンセリングの聴く技術を活かし、クライアントが望む姿を明確にし、具体的な行動に移せるコンサルティングを得意としている。

【保有資格】

・認定経営等革新支援機関 中小企業診断士

・ITコーディネータ

・健康経営エキスパートアドバイザー

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