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この1年の変化―中途採用編

著者:一般社団法人日本テレワーク協会 相談員  小山 貴子

この1年の変化―中途採用編

新卒編でも述べてきたことですが、中途採用においてもこの1年間の環境変化を踏まえて、面接がオンライン化したことが大きな変化だと言えるでしょう。

メリットとして特徴的なことを、4つ述べてみたいと思います。


1.時間的な制約がなくなった

コロナ前は中途採用の面接者(特に前職の在籍者)であれば、就業時間に新規の会社の面接を受けることは難しく、夜間もしくは休日に面接を実施することが多くありました。「在籍している会社がテレワークになったこともあってか、平日昼間の面接が増えた。また移動の時間がなくなったことで、面接の日程調整がしやすくなった」というのは最近、人事担当者からよくお聞きする話です。採用担当者の残業や休日出勤が少なくなったという企業もあります。


2.地理的な制約がなくなり、遠方の候補者も選考しやすくなった

リアル面接では、遠隔地の場合は時間的な制約や交通費の負担などの理由から、応募を見合わせたり、面接を辞退したりする人もいました。コロナを経験し、働き方・生き方を見直す方も多く、UIターン人材を募集した地方の企業や、地方在住の人材を採用したい首都圏の企業など、活発な人材交流の様子が感じられます。


3.応募のハードルが下がり、幅広い人材に会うことができるようになった

数十年来、もちろんコロナ以前からIT系人材をはじめとした一部の求人においては売り手市場となっており、企業側は面接にこぎつけるまでさまざまな工夫をしてきました。既存の従業員にリファラル(推薦・紹介)を呼びかけ、採用に成功した暁に報酬を支払う制度を設ける会社も多くありました。報酬金額を徐々に上げてでもリファラル強化に動いている企業も見てきました。ほかにも面接する手前の段階の人で、興味・関心を喚起するために「まずは会社の雰囲気を味わってもらう」ことを趣旨にピザパーティーやイベントを開く等、さまざまな工夫を施してきた企業がたくさんありました。

しかしオンラインが一般化してきたことから、イベント開催が容易になり、企業側にとっては大掛かりな仕掛けが必要なくなっています。応募者側も顔を出すことなく企業の情報を得ることができたり、雰囲気が分かったり、気軽に疑問解消することができたりという環境が生まれました。


4.面接官の教育・育成や採用データの分析がより容易になった

リアル面接を録画することは非常に難易度が高いですが、オンライン面接で録画をすることは容易です。面接者に事前にお断りをする必要がありますが、録画を見返すことで、面接官も面接中の振り返りができることはもちろん、その面接官を教育する立場の人もその内容を確認し、的確なアドバイスができるようになりました。新卒採用の面接も面接官の一挙手一投足がどうあるかはとても大事ですが、中途採用の面接の方が非常に細かな対応を求められることもあり、その気付きや修正を施すのにこの状態は有効性を増すことになりました。

メリットも多くありますが、もちろんデメリットもあります。

1.リモート面接の環境整備ができているかどうか

企業側はある程度環境を整えることができていますが、応募者側には千差万別あるように思います。回線状態の安定具合、照明の明暗や背景を含めた映り具合、音の具合・・・その状況によって、面接官に与える印象も随分違ってきています。企業側もそれで判断していいのかどうか、当初は戸惑いが見られました。

通信環境の影響で音声が途切れたり、音が遅れて伝わってきたりすることもあり、聞き返すことや復唱する場面があることを事前に伝えておく方が、双方にとって安心感が生まれるようにも思います。

2.コミュニケーションのあり方の問題

応募者、面接官双方ともこの1年で慣れてきていますが、オンラインの微妙な間、アイスブレイクや雑談のしにくさ等により、対面の時よりも緊張感が増しているように思います。

カメラ一点に視線を向け続けていると表情の固さを感じることもあります。反対にカメラ位置と視線がずれていて、違和感があることもあります。手元のレジュメやメモを見ながら話をすることもあると思いますが、できるだけ目線を上げて、相手に表情が見えるようにしたいですね。対面よりも体全体の動きが硬くなりがちでもあり、反応が薄いと「この人は自分に興味を持ってくれているのだろうか?」と疑心暗鬼になります。アクションも対面の時の3割増しで丁度いいかもしれません(必要以上に動くこともお勧めはしませんが)。

オンライン面接の画面上見えるのは、相手の首から上や上半身であることが多く、面接者・応募者の双方とも、雰囲気から得られる情報が減少します。目線を外した先には時計があって時間を気にしていたり、貧乏ゆすりをしていたり。対面の時よりも相手の状態を想像力豊かに感じることも必要でしょう。

3.応募者が増え、選考時間が増える傾向も

メリット3の逆ですが、応募の垣根が低くなった一方で求人数は全体的に少なくなった結果、応募者が増えている会社も多くあります。オンライン面接ではコミュニケーション回数が増える傾向もあり、選考に時間がかかって辞退者が増えるという悪循環も見受けられます。

コロナ禍、2021年度の中途採用の見通しは、5年ぶりに「減る」が「増える」を上回りました。ただ、情報通信業、医療・福祉業、建設業等ではまだまだ採用意欲は旺盛な会社が多く存在します(ワークス「中途採用実態調査」より)。

職種としても「IT」や「新規事業」の分野では求人倍率5倍、10倍となっているものもあり、引き続き需給バランスは不均衡な状態です。

社会全体の働く環境としても、複業が市民権を得始めており、働き方の自由度が高い会社に優秀な人材が流れる傾向にあったり、ジョブ型の雇用や人事制度への移行が必要だったり、70歳までの就労機会提供の努力義務等の準備も必要となります。企業として働く環境の変更や整備がどこまでされているか、中途者にとっては非常に気になる点でもあり、人事に携わる方々のなお一層の変化や努力が試される年になりそうです。


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著者プロフィール

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小山 貴子

一般社団法人日本テレワーク協会 相談員

1970年生まれ。12年間のリクルート社勤務後、ベンチャー企業の人事、社労士事務所勤務を経て、2012年社会保険労務士事務所フォーアンド設立。ただいま、テレワーク協会の相談員と共に、人事コンサル会社の代表取締役、東証一部上場企業の非常勤監査役、一般社団法人Work Design Labのパートナー、東京都中小企業振興公社の専門相談員等にも携わる。2年半ほど横浜と大分の2拠点生活を実施中。

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