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採用広報

著者:一般社団法人日本テレワーク協会 相談員  小山 貴子

採用広報

「いい人が採用できない!」

これを解決する方法はいろいろとありますが、まず、入り口である「採用広報」の仕方を見直すことをお勧めします。

採用広報とは、企業が求める人材に対して、自らの会社を候補のひとつとして検討してもらい、入社、定着してもらうための広報活動のことです。

この1年半で「生き方」の多様化も叫ばれるようになり、「働き方」の変化も著しい昨今において、求職者一人ひとりが持っている仕事探しへの価値観も多様化しています。

これまでは「企業ブランド」や「給与」など、画一的な価値観で仕事を探す人が多かったように思いますが、(給与が低かったとしても)テレワークができたり、人生における環境変化に柔軟に対応できる制度があったりする会社を選ぶ、そんな機運が高まっているように思います。

それらを踏まえ、採用広報の準備や見直しをする際に、どのようにするといいのか、5つのステップをお伝えしていきます。


1.どんな人が欲しいかを考える

まずはどのような人材に入社して欲しいか、以下の欄を埋めてみましょう。

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「スキル:必要な能力や経験」

「タイプ:どのような傾向、性格の人物だといいか」。

これを

「MUST:ゼッタイ欲しい」

「WANT:できれば欲しい」

「NEGATIVE:これは持っていて欲しくない」

という観点で考えてみてください。

これまで同じ職種で採用活動をしたことがあれば、合格した人、不合格だった人をイメージしてみるとマスが埋まっていくと思います。

私が採用のお手伝いをする際によくやることのひとつに、立場の違う「経営者(部門責任者)、人事担当、現場マネージャー」が一堂に会する形で行う「求める人物像」設定があります。

なかなか採用できない、もしくは定着しない傾向のある会社(組織)では、採用の関係者の意思統一がされておらず、それぞれの意見がバラバラだということが多く見受けられます。

「人事担当の良いと思う人が責任者面接で落とされる」

「人事は現場がうまく育ててくれないと思っているが、現場は人事がなぜこの人物を採用したのか疑問だと思っている」

等の声をよく聞きます。

それぞれが見えている領域が違うこともあり、同じ人物像を共有していないという現実。それぞれが意見交換をする場を作ることは非常に有効です。

ここで注意しなければならないことは、求める人物像が行動レベルで具体的になっているかということ。

皆さんが求める人物像としてよく挙げる言葉に「コミュニケーション能力の高い人」があります。

カタカナは想像の範囲を広げ重宝するものですが、定義する言葉が明確にならない傾向もあります。カタカナの翻訳をすることを是非お勧めします。参加者全員の頭の中の映像が同じになっているかどうかを意識してみてください。

ターゲットを絞りこんだら、更にペルソナにしてみることも必要です。

仕事以外にもどのような生活を送っているか想像することも大切です。私の経験でも、子育て世代を対象に、保育園が近くにあること、近くに商店街があり総菜が充実していることなどを求人広告に書いたら、ものの見事に対象者を採用できたこともあります。


2.どうしたら出会うことができるかを考える

採用広報する手段はさまざま。それぞれにメリット、デメリットがあります。

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「求人する」ということは「広告し、集客すること」と考え、適切な所に広告することから始まります。

昨今、注目されているのは、社員からのリファラル(口コミ)。

知り合いを紹介した社員、またはその人が入社した場合に紹介した社員に報酬を出すことも一般的になってきました。

社員に「いい人がいたら紹介して」と人事が伝えるだけでは、なかなか“いい人”に巡り合える確率は高まりません。社員が知り合いに渡せるような採用紹介カードを渡したり、気軽なトークイベントを開いて知り合いに参加してもらったり、さまざまな活動を見聞きします。

内定者や入社して間もない人こそ、紹介してもらえる傾向にありますので、そのような人に重点的に“求める人物像”を伝え、対象者になりえる友人を具体的にイメージしてもらいましょう。

内定者研修や入社者研修の際にそのような時間を取ることもあります。


3.どうしたら振り向いてくれるかを考える

転職者の心は刻々と変わっていきます。

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その時々に即した対応した情報提供が必要性です。

特に応募者の少ない環境の場合、「この人を逃してなるものか」という心理が働く場合があります。

極端な話ですが、初対面の時に「入社してください」というアプローチをしている場面に遭遇したこともあります。

「会社に求めることはどんなことか?」の観点で話を聞き、相手が求めている情報を的確に伝える必要があります。

人事担当者だけでなく、仕事内容が近い方や出身地が同じ方等、共通項のある人がフォローすると転職者の安心材料にもなりますし、企業側も本人の本音を拾える可能性が高まります。新卒採用であれば、なおさらです。


4.どうしたら入社してくれるかを考える

この段階まで来たら、ただただ転職者の視点に立つことが求められます。

内定を出した後も、自社のみを見てくれていると思わず、まずは入社日を迎えられるように内定者の本音を聞き、何を伝えていくか考える必要があります。

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内定者が不安に思っていることを察知できれば、「何がクリアとなれば、うちの会社に入社してくれるか?」という考えは一度置き、その人の立場に立ち、どの選択がいいかという視点で相談に乗ることも必要でしょう。そのような姿勢が自社の広報活動の一環にもなります。

私が採用担当者だった時代、ある方の採用には失敗したものの、(入社はされなかったのに)友人の方を紹介してくださったという経験があります。


5.どうしたらずっといてくれるかを考える

会社には、人事理念を明確にし、教育・育成に努め続けることが求められます。

そして、入社後もAIDMA(S)の「S」の部分は続きます。

従業員となった人の満足度が高ければ、リファラルをしてくれる立場にもなります。一方、入社後に「聞いた話と違う」となったり、すぐに退職したりとなれば、その採用は失敗となるでしょう。


面接の際には常に「期待値調整」をする必要があります。

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目指す美しい将来を伝えることに一生懸命になり現状の課題を伝えていない、もしくはその部分の情報が薄い場合、そのようなことが起こりがちです。

採用広報とは主に1.2.のことを言いますが、実は1~5において一貫した動きが求められます。

どの部分が欠けても「採用が成功した」とは言い難いでしょう。

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著者プロフィール

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小山 貴子

一般社団法人日本テレワーク協会 相談員

1970年生まれ。12年間のリクルート社勤務後、ベンチャー企業の人事、社労士事務所勤務を経て、2012年社会保険労務士事務所フォーアンド設立。ただいま、テレワーク協会の相談員と共に、人事コンサル会社の代表取締役、東証一部上場企業の非常勤監査役、一般社団法人Work Design Labのパートナー、東京都中小企業振興公社の専門相談員等にも携わる。2年半ほど横浜と大分の2拠点生活を実施中。

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