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総務の課題。「会社を変える前に、まずは自身を変えないと!?」

総務から会社を変えるシリーズ

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

総務の課題。「会社を変える前に、まずは自身を変えないと!?」

属人化という課題

総務に対するイメージは、第一回目のコラム「皆さんは、総務をどのように見ていますか?」で記したように、正直あまり良いものではありません。

・何をしている部署か分からない

・雑務が中心の何でも屋

・普通にできて当たり前、少しでもミスをすると怒られる

等々、厳しい見方をされています。

これを払拭するためには、まず総務部門が悪弊についてしっかりと認識すること、向き合うことが重要です。これを変えないことには、総務部門のイメージはなかなか変えられません。では、総務の課題、悪弊にはどんなものがあるでしょうか?

まずは、総務部門の代表的な悪弊は、「属人化」です。誰がどんな仕事をしているか定かでない状態です。「サイロ化」「タコ壺化」とも言われます。この蓄積により、総務部門は何をしているか分からない部署、というレッテルを貼られてしまうのです。

よくある風景。

「すみません、Aさんが今日お休みなので、この件は明日でよいですか?」

社内のサービス業であるはずの総務部門が、属人化により、担当者がいないとサービスを提供できない。皆さんの会社の総務部門でもありがちではないでしょうか?

これが、逆の立場であったらどうでしょうか? 

「ほんと、総務、使えねえなあ!」と、捨て台詞の一つも吐きたくなるのではないでしょうか?

業務が属人化していると、この状態がまさに「常態化」します。さらに、属人化していると、業務改善がなされません。なぜなら、他者が改善アドバイスをすることができないからです。

その人の管理する範疇で全ての業務が完結し、横から口を出せない。特に、担当してからの年数が長いと、ブラックボックス化して、その人が突然長期休暇を取ったり退職したりしようものなら、誰も対応できず、とにもかくにも「適当」に対応せざるを得ない状態となります。

最悪の状態は、その仕事が、その人自身の存在意義となっている場合です。

「この仕事は、私にしかできませんから」

ということで、業務ローテーションもできず、完全にブラックボックス化する。想像するに、かなり非効率な状態での仕事となっている可能性大です。

この属人化を、まずは完全に排除しなければいけません。業務ローテーションをする。当該業務を分割して二人で対応するようにする。部会などで、各担当者が業務を説明する。このようにして、複数人で理解、対応できるようにする。そして、マニュアルを完備し、誰でもできる状態、多能工化する。

マニュアル作成においても注意する必要があります。通常は、当該業務の担当者、つまりその業務をよく知った人が作成します。その結果、重要なことが抜けていたり、簡単に記されていたりするケースも多いことでしょう。そのため、マニュアルが完成したら、その業務を全く行ったことがない人に使ってもらい、実際にできるかどうかを確かめる必要があります。

さらに、現担当者に一緒に見てもらいながら、担当者しか知らない暗黙知について説明を受け、マニュアルに付け加えていく。マニュアルは、現担当者のためではなく、次の担当者のためにあるという意識が大事なのです。

無変化という課題

属人化排除のためにマニュアルを作成する意義を記しました。しかしこのマニュアルが、実はもう一つの課題の元凶となることもあるのです。マニュアルがあれば、その通りに行えばミスがないため、安心してその仕事を遂行できます。その際、実は思考停止状態に陥っているのです。

マニュアルがあることで多能工化を実現できる一方で、その通りに行うことにより発生する思考停止。今の時代、環境変化が大変速いスピードで起こっています。社外の環境変化、特にテクノロジーの進化は凄まじいものがあります。一方で、社内の変化、社員の意識の変化、経営の方向性の変化も進んでいます。

こうした多くの変化が生まれている中で、そもそも今行っている総務部門の仕事の必要性はどうなのか? そのやり方のままでいいのか? 生産性向上が叫ばれている中で、その仕事の生産性はそのままでいいのか? つまり、このような改善意識を持たずに、何も考えずマニュアル通りに行ってしまうことが課題となるのです。

総務パーソンは改善パーソン。そんな言葉もあります。常に改善意識を持ち続けることが総務パーソンには必要です。仕事の「無変化」。これが総務部門の二つ目の課題です。

「いかに早く処理できるか」

「いかに手際よくできるか」

「いかに安価にできるか」

この意識を持たずに仕事を続けていくと、必要もない仕事を延々と続けていく、テクノロジーツールがあるのにアナログ的に人手でやり続けていく、人がもう必要としていないのに精緻な資料を作り続けていく。このような無駄が生じます。

仕事の無変化やマニュアル通りの仕事の仕方はやめて、この環境下においては、

「そもそも、行う必要があるのか」

「そもそも、そこまでする必要があるのか」

「そもそも、人がやる仕事なのか」

等々、様々な角度から仕事を見つめ直すことにより、仕事を変えていく姿勢が総務には必要なのです。

言われてやる仕事という課題

総務には、現場からいろいろな依頼事項が飛び込みます。電話、メール、チャットを通じて、簡単なものもあれば、時間を要するもの、調整が必要なものまで様々です。これらは、「言われてやる仕事」の範疇となります。総務は社内のサービス業であるため、これらの依頼事項については全力を挙げて取り組む必要があります。

しかし、この手の仕事ばかりを行っていると、会社を大きく変えていく仕事に着手することができなくなります。言われてやる仕事をしなくて良い、という意味ではありません。この手の仕事を少しずつ少なくする努力をして欲しいのです。

自ら考え、自ら仕掛けていく仕事をする時間を捻出して欲しいのです。会社を変えるような大きな仕事は、それ相応の時間が要ります。後ほど紹介しますが、「戦略総務」という会社を変える総務になるには、作業の仕事を減らし、さらに管理業務と言われる一括りにした仕事も外部に依頼してしまい、総務は戦略立案に特化する姿を目指して欲しいのです。

そのためにも、言われてやる仕事の分量を減らしていき、自ら仕掛ける仕事に割く時間を増やしていきたいものです。言われてやる仕事ばかりやっていては、「誰でもできる仕事」「雑務が中心の部署」というイメージをぬぐい去ることはできません。

誰でもできる多能工化を実現し、目の前の仕事に対して常に改善意識を持って取り組み、自ら仕掛けていく仕事に着手する。

そんなことが実現できれば、総務のイメージも変わっていくと思いませんか?

次回は、総務のPR下手、という課題を取り上げてみましょう。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

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著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

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