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[株主総会] 第4回:ハイブリッド出席型バーチャル株主総会③

中小企業におけるバーチャル株主総会の開催

著者: 日本大学商学部准教授、弁護士  金澤 大祐

[株主総会] 第4回:ハイブリッド出席型バーチャル株主総会③

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会とは

(10)質問・動議の取扱い等

ア 質問

リアル総会では、議長は、株主が発言するまで質問等の内容を把握することができないことから、議案に関係のない質問が出されることもあります。これに対して、出席型総会では、バーチャル出席株主からの質問等は予め質問内容が記入されたテキストを受け付けることが想定され、議長がその質問内容を確認した上で当該質問を取り上げるか否かを判断することが技術的に可能となるため、恣意的な議事運営が行われる危険があります。

そこで、出席型総会においては、①質問回数や文字数、送信期限などの事務処理上の制約、質問を取り上げる際の考え方、個人情報が含まれる場合や個人的な攻撃等につながる場合等不適切な内容は取り上げないといった指針について、あらかじめ運営ルールとして定め、招集通知やweb上で通知すること、②バーチャル出席株主は、あらかじめ用意されたフォームに質問内容を書き込んだ上で会社に送信し、会社側は運営ルールに従い確認し、議長の議事運営において質問を取り上げること、③適正性・透明性を担保するための措置として、後日、受け取ったものの回答できなかった質問の概要を公開する取扱いが考えられます(実施ガイド21頁)。

2020年度においては、実施ガイドと同様の投稿フォームでの質問の他に、ウェブ会議システムの挙手機能を利用して質問を受け付けたり、電話で会場のオペレーターに電話し、議長の許可を得て、質問を受け付けたりした会社がありました(実施事例集31頁)。

イ 動議の提出

リアル総会では、株主の動議が提出された場合、提案株主に対し提案内容の趣旨確認や提案理由の説明を求めることが必要になることがあります。これに対して、出席型総会の議事進行中に、バーチャル出席者に対して提案内容の趣旨確認や提案理由の説明を求めることや、そのためのシステム体制を整えることは、会社の合理的な努力で対応可能な範囲を越えた困難が生じることが想定されます。

そこで、出席型総会においては、原則として動議についてはリアル出席株主からのもののみを受け付けることとし、株主に対して事前の招集通知等において、その旨の案内を記載して周知するという取扱いも認められます(実施ガイド21‐22頁)。

もっとも、2020年度においては、動議の提出をバーチャル出席株主にも認めた会社がありました(実施事例集33頁)。

ウ 動議の採決

リアル株主総会で当日提出された動議については、その都度議場の株主の採決をとる必要が生じる場合があります。もっとも、出席型総会において、招集通知に記載のない案件について、バーチャル出席者を含めた採決を可能とするシステムを整えることについては、会社の合理的な努力で対応可能な範囲を越えた困難が生じることが想定されます。

そこで、出席型総会において、個別の処理が必要となる動議等の採決にあたっては、バーチャル出席株主は、事前に書面又は電磁的方法により議決権を行使して当日は出席しない株主の取扱いを参考に、実質的動議については棄権、手続的動議については欠席として取り扱うこととし、その旨を事前に招集通知等で周知することになります(実施ガイド22頁)。

もっとも、2020年度においては、動議の採決をバーチャル出席株主にも認めた会社がありました(実施事例集33頁)。

エ 通信の強制途絶

リアル総会では、議長の権限で、必要に応じて株主の退場を命じることができます(会社法315条2項)。

そこで、出席型総会において、バーチャル出席株主による質問や動議の提出について、濫用的であると認められる場合、バーチャル出席者の通信を強制的に途絶することも、具体的要件をあらかじめ招集通知等で通知していれば、議長の権限によって行うことが可能となっています(実施ガイド23頁)。

以上

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著者プロフィール

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金澤 大祐

日本大学商学部准教授、弁護士

日本大学大学院法務研究科修了。商法・会社法を中心に研究を行い、実務については、民事事件を中心に幅広く取り扱う。
著書に、『実務が変わる!令和改正会社法のまるごと解説』(ぎょうせい、2020年)〔分担執筆執筆〕、「原発損害賠償請求訴訟における中間指針の役割と課題」商学集志89巻3号(2019年)35頁、『資金決済法の理論と実務』(勁草書房、2019年)〔分担執筆〕等多数

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