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[株主総会] 第3回:ハイブリッド出席型バーチャル株主総会②

中小企業におけるバーチャル株主総会の開催

著者: 日本大学商学部准教授、弁護士  金澤 大祐

[株主総会] 第3回:ハイブリッド出席型バーチャル株主総会②

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会とは

(8)本人確認

ア 株主

出席株主の本人確認につき、会社法において特段定めがないことから、電磁的方法による議決権行使(会社法298条1項4号)の場合には、株主毎に固有のIDとパスワード等を記載して送付し、株主がインターネット等の手段でログインする方法によって本人確認を行っています。

出席型総会においては、バーチャル出席株主の本人確認について、電磁的方法による議決権行使を参考に、事前に株主に送付する議決権行使書面等に、株主毎に固有のIDとパスワード等を記載して送付し、株主が当該IDとパスワード等を用いてログインをする方法によって本人確認を行うことが考えられます(実施ガイド15‐16頁)。

2020年度においては、ID・パスワードを用いる方法以外にも、株主番号等株主固有の情報を用いる方法、バーチャル出席の受付時に画面上に顔と整理番号を映し出す方法、ブロックチェーン技術を活用する方法により本人確認をした会社がありました(実施事例集25頁)。

イ 代理人

リアル総会においては、代理人による議決権の代理行使(会社法310条1項)が認められています。これに対して、出席型総会におけるバーチャル出席という態様の特性を考慮すると、代理人による出席を認める必要性が乏しく、本人確認等に付随する処理は実務上煩瑣であり、事務処理コストが大きいと考えられます。

そのため、出席型総会においては、代理人の出席はリアル総会に限定し、予め招集通知等において株主にその旨を通知するという取扱いも認められています(実施ガイド16頁)。

もっとも、会社が代理人のバーチャル出席を受け付けると判断した場合、代理人による議決権行使も可能となります(実施ガイド17頁)。

ウ なりすましの危険

リアル総会においては、受付において、株主の住所に送付された議決権行使書面の体裁を目視で確認するため、なりすましの危険が比較的低いといえます。これに対して、バーチャル出席の場合には、本人確認をIDとパスワードのみで行うため、なりすましの危険が相対的に高いと考えられます。

そこで、なりすましの危険が相対的に高いと考えられる具体的事情がある場合には、二段階認証やブロックチェーンの活用などの手段を用いることも考えられます(実施ガイド17頁)。

(9)事前の議決権行使

リアル総会の実務では、株主が事前に議決権行使をしていた場合には、リアル総会の受付時の出席株主数のカウントをもって、事前の議決権行使の効力が失われるものとされています。これに対して、バーチャル出席株主が事前の議決権行使を行っていた場合、ログインをもって出席とカウントし、それと同時に事前の議決権行使の効力が失われたものと扱ってしまうと、無効票を増やすこととなり、株主意思を正確に反映しない可能性があります。また、株主総会の議事は、審議と決議とに分けることができ、書面投票又は電子投票(会社法298条1項3号4号)は、総会当日の決議に参加しない株主に事前の議決権行使を認めた制度であると理解すれば、会社法298条1項にいう「出席しない」とは、「決議に出席しない」ことを意味すると解釈することも可能です。

そこで、出席型総会においては、株主が審議の時間中にログインをしたが、決議の時までにログアウトし、結果的に議決権を行使しなかった場合には、当該株主は、会社法298条1項にいう「株主総会に出席しない株主」として、事前の書面投票又は電子投票を有効と取り扱うこと、そのような取扱いをあらかじめ招集通知等で株主に通知するということも考えられます(実施ガイド18‐19頁)。

2020年度においては、実施ガイドと同様の取扱いをする会社の他に、リアル株主総会の実務と同様に、ログインをもって出席とカウントし、それと同時に事前の議決権行使の効力を取り消すといった取扱いをする会社もありました(実施事例集26頁)。

以上

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著者プロフィール

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金澤 大祐

日本大学商学部准教授、弁護士

日本大学大学院法務研究科修了。商法・会社法を中心に研究を行い、実務については、民事事件を中心に幅広く取り扱う。
著書に、『実務が変わる!令和改正会社法のまるごと解説』(ぎょうせい、2020年)〔分担執筆執筆〕、「原発損害賠償請求訴訟における中間指針の役割と課題」商学集志89巻3号(2019年)35頁、『資金決済法の理論と実務』(勁草書房、2019年)〔分担執筆〕等多数

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