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一回目の緊急事態宣言時に導入したITツールは何だったのか?

データシリーズ2

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

一回目の緊急事態宣言時に導入したITツールは何だったのか?

『月刊総務』で、2020年6月に全国の総務担当者に、一回目の緊急事態宣言での対応についてアンケート。320件の回答を頂いた。

今回は、緊急事態宣言下において導入したITツールについて解説していく。



ビデオ会議システムをまず導入

会社がリモートワークを行うにあたり、新しく導入したITツールがあるか尋ねたところ、「はい」が47.8%と、約半数がリモートワークに際し新しいITツールを導入したことがわかり、挙げられたツールの名称のほとんどがビデオ会議ツール関連のものだった。

一方、会社が導入しているITツール(リモートワーク前から使用していたものも含む)について尋ねたところ、「ビデオ会議」が85.9%で最多、次いで「勤怠・労務管理」が78.1%、「ビジネスチャット」が57.8%の順となった。

コロナ禍以前からビデオ会議システムは存在していたが、もっぱら社内において利用し、社外の顧客や関係者、あるいは他拠点のメンバーとのミーティングほとんどであった。コロナ禍により、ほとんどの会議がリモートにシフトし、それも在宅勤務においてなされるということで、前回のコラムで記したように、カメラ付きのノートパソコンを買いそろえたり、ヘッドセットを用意したのだった。システムはあったものの、ハードが追い付いていなかったのが現実であった。また在宅勤務では、各家庭のインフラ状況によっては途中で切断してしまい、そのままリモート会議に戻ってこなかったり、一人の電波状況が悪いがゆえに会議自体が中断したりと、リアルの会議では起こりえない事象により非効率な会議となってしまうケースも生じたことだろう。


総務のリモートワークに必要なITツールは「電子契約」「電子決裁」

総務がリモートワークをするために会社に導入して欲しいITツールについて尋ねたところ、「電子契約」が61.3%で最多、次いで「電子決裁(稟議申請、経費精算等)」が43.8%となった。前問で「電子契約」の導入状況は11.6%にとどまっており、総務の現場の要望と会社のツール導入状況に大きな差があることがわかった。

前回のコラムで記した、総務のリモートワークを阻む三大課題である、郵送物、押印、代表電話。この中で押印への対応として、電子契約を真っ先に導入して欲しいと回答しているのだ。代表電話や郵送物については、その日に出社している他の社員でも対応は可能である。しかし、押印だけは、特に、代表者印や角印は、社内規程上、その管轄部門である総務部でしか対応できない。そのため、電話転送を差し置いて断トツの一位となっている。ただ、電子契約は、相手方も同様のシステムを契約しているか、あるいは、契約していないまでも、対応してくれないと意味がない。相手への説明が必要となってくる。ただ、国も脱ハンコにシフトしているので、ほとんどの企業が対応してくれるはずである。

第二位の電子決裁、電子ワークフロー、いわゆる稟議は総務が必ず関わる業務の一つである。特に、稟議書に関係者が押印して決裁していく状況だと、その押印のために出社しなければならず、リモートワークの大きな妨げとなる。さらに、従来のように稟議書を回して決裁を得るシステムであると、いま誰のところに稟議書があり、どのような状態となっているか、いちいち確認しないと状況がわからない。また、決裁者が多くなればなるほど時間がかかり、スピード勝負の現在ではビジネスチャンスを逃す、という状態にもなりかねない。しかし、これが電子決裁となると、いま誰が決裁したか、誰のところでとどまっているかが明確となり、総務も催促しやすくなる。また、稟議書が行き交うこともなく、決裁までの時間が大幅に短縮される。

仮想オフィス。これはバーチャル上に同一部門のメンバーが集まるシステムである。いまの仕事の状況が映し出され、いま電話をしてもいいのか、オンライン会議を招集してもいいのか、状況が一目でわかるため、それに適したコミュニケーションが取りやすくなる。さまざまなものが出ており、進化もしている。今後は、出社しているメンバーもいればリモートワークをしているメンバーもいる、ハイブリッドワークスタイルに移行すると考えられるので、ますますいまの状況が一目でわかるシステムが必要となると思われる。


「総務は会社にいるべき」という固定概念の払拭を求める声も

「その他、総務がリモートワークをするために必要なことがあれば教えてください」との質問に対して、以下のコメントが寄せられた。

・総務部門が出社して対応する、という全体意識は根強く、総務部門からの働きかけや取り組みでは全社浸透にも限界があり、場合によっては経営層レベルからの意識変更が求められる。

・備品管理、郵便物の対応、代表電話の対応等、従来総務だけが行うとされてきたものについて、他部署でも対応できる形にしないと、リモートワークへの移行は難しいと思う。また、総務部門の責任者の「総務はいつも会社にいるもの」という意識を変えることも必要になると思う。

・社員が一人でも出社する以上、総務の完全リモートワークは不可能だと思う。

・他部署がリモートしてくれれば総務もリモートできるが、社員の大半が出勤していれば必然的に総務がオフィスにいないと問題が出てくる。他部署にリモートを浸透させることが、総務のリモートにつながると思う。

・自社がいくらツールを整えても取引先がそのやり方を良しとしない場合、結局手間は同じなのでビジネス界全体でやり方を変える必要があると思う。

「何かあるといけないから、総務は出社。誰かが出社するのであれば、総務は必ず出社すべきだ」。このような考えが根強く残っている。「何かあるといけないから」の「何か」を、一度想定してみるのも良いかもしれない。総務の対応範囲を可視化しておくと、対処法も見えてくるだろう。その「何か」をメニューとして可視化し、さらに自己完結するように持っていければ、「総務は出社するべきだ」という考えを払拭できるかもしれない。総務への依頼事項の可視化、これも総務がリモートワークをするためには必要なことかもしれない。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

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