中途採用等支援助成金(UIJターンコース)

地方創生や地域活性化が関心を集めています。
人口減少社会を迎えた今、東京圏への一極集中を是正し、各地域で住みよい環境を確保して活力ある日本社会を維持していくことが求められており、様々な支援が行われています。
東京圏からの移住者を雇い入れた事業主に対し、その採用活動に要した経費の一部を助成する中途採用等支援助成金(UIJターンコース)はその1つ。令和3年4月1日からは支給対象経費が拡充されました。
今回は、中途採用等支援助成金(UIJターンコース)をご説明いたします。
UIJターンとは
地方創生や地方活性化に関し、UターンやIターン、Jターンという言葉を見聞きすることが多くなりました。それぞれの内容は、次のようにとらえられています。
Uターン |
進学や就職などで大都市圏へ移った地方出身者が出身地に戻って住むこと |
Iターン |
出身地とは別の地方へ移り住むこと、主に大都市圏から地方へ移住すること |
Jターン |
地方出身者が出身地ではなく出身地に近い都市へ移り住むこと |
以前より、地方創生や地方活性化への取組は行われていましたが、コロナ禍において地方への関心は高まっています。
令和3年6月18日、国は「まち・ひと・しごと創生基本方針2021について」を公表しました。
新型コロナウイルス感染症の影響により、「地方への移住に関する関心の高まりとともにテレワークを機に人の流れに変化の兆しがみられる」などとし、次の基本方針を掲げています。
① 地域の将来を「我が事」として捉え、地域が自らの特色や状況を踏まえて自主的・主体的に取り組めるようになる
② 都会から地方への新たなひとやしごとの流れを生みだすことを目指す。これにより、訪れたい・住み続けたいと思えるような魅力的な地域を実現していく
【感染症の影響を踏まえた基本的な方向性】
〇感染症による意識・行動変容を踏まえた、ひと・しごとの流れの創出
<現下の状況>
・テレワーク実施率の急増
・特に若い世代の地方への関心の高まり
・東京から地方への個人・企業の転出の動き
〇各地域の特色を踏まえた自主的・主体的な取組の促進
<自主的・主体的な取組を実施する上で留意すべき流れ>
・感染症や人口減少等を踏まえた地域課題の解決のためのデジタル化への関心の高ま
り
・地域の活性化に繋がる再生エネルギーや、新たな価値観としての地方創生SDGsへの関心の高まり
(「まち・ひと・しごと創生基本方針2021について」より)
地方活性化を目指す地方自治体や、優秀な人材を獲得したい地方企業が支援制度を充実させていることもあり、今後ますます地方活性化への取組は進みそうです。
主な受給要件
こうした中、国は「中途採用等支援助成金(UIJターンコース)」を設け、東京圏からの移住者を雇い入れた事業主を支援しています。主な受給要件は次の通りです。
1.採用活動に係る計画書を事業所の所在地を管轄する労働局に提出し、労働局長の認定を受けていること
2.計画書に定めた計画期間内(6か月以上12か月以内の範囲で設定する期間)に、次の(1)~(4)の採用活動を行っていること
(1)募集・採用パンフレット等の作成・印刷
(2)自社ホームページの作成・改修
(3)就職説明会・面接会・出張面接等
(4)外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士、民間有料職業紹介事業者等)によるコンサルティング
3.次の(1)~(4)のいずれにも該当する方を雇い入れること
(1)東京圏からの移住者 |
・地方創生推進交付金(移住・起業・就業タイプ)を活用して地方公共団体が実施する移住支援事業を利用したUIJターン者に限ります ・新規学卒者及び新規学卒者と同一の採用の枠組みで採用された者は除きます |
(2)地方創生推進交付金(移住・起業・就業タイプ)を活用して地方公共団体が開設・運営するマッチングサイトに掲載された求人に応募し、計画期間中に雇い入れられた方 |
・上記1で認定を受けた計画に係る事業所の求人に限ります ・地方創生推進交付金(移住・起業・就業タイプ)を活用して地方公共団体が支給する移住に係る支援の対象として掲載された求人に限ります |
(3)雇い入れ当初より雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れられた方 |
|
(4)継続して雇用することが確実であると認められる方 |
対象労働者の年齢が原則として65歳以上に達するまで継続して雇用され、かつ、当該雇用期間が継続して1年以上であることが必要です |
(1)に関し、東京圏からの移住者であれば、誰でも本助成金の対象となるわけではありませんから注意してください。あくまでも、移住支援金の受給者に限られます。
【移住支援金】
地方創生推進交付金(移住・起業・就業タイプ)を活用して、地方公共団体が移住支援事業・マッチング支援事業として実施する、東京圏からの移住者に対して支給する支援金
助成額と助成対象となる経費
助成額は、企業規模に応じて、助成対象経費の合計額に助成率を乗じた額となります。
【助成率と助成額】
助成率 |
上限 |
|
中小企業 |
1/2 |
100万円 |
中小企業以外 |
1/3 |
100万円 |
助成対象経費とは、労働者の採用活動に要した次の経費をいいます。
【助成対象経費】
1.募集・採用パンフレット等の作成印刷経費
2.自社ホームページ・自社PR動画の作成・改修経費
3.就職説明会・面接会・出張面接等の実施経費(出展料、会場借料、採用担当者の旅費・宿泊費、使用資料の作成・印刷・送料費用など)
※オンラインによるものを含みます
4.外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士、民間有料職業紹介事業者等)によるコンサルティング費用(採用活動や情報発信の方法の立案に係る費用、採用後の育成・定着戦略の立案に係る費用など)
求人情報誌や求人情報サイトへの掲載料、民間有料職業紹介事業の紹介手数料などは対象とはなりません。また、職説明会などの実施経費のうち採用担当者の旅費・宿泊費には、それぞれ上限額がありますので注意してください。
対象経費 |
上限額 |
就職説明会等の実施に要した費用のうち採用担当者の交通費 |
国家公務員の旅費に関する法律により算出される鉄道料金、船賃、航空賃および車賃の合計額 |
就職説明会等の実施に要した費用のうち採用担当者の宿泊費 |
1人1泊8,700円 |
受給までの大まかな流れは次の通りです。
① 採用計画書の提出
② 計画の認定
③ 計画期間(6か月以上12か月以内の範囲で設定する期間)内に採用活動をして対象労働者を雇用
④ 計画期間の終期から2か月以内に支給申請書を提出
⑤ 助成金の受給
「まち・ひと・しごと創生基本方針2021について」では、取組の1つとして「地方移住の推進」を掲げています。「UIJターンによる起業・就業者の創出」や、「地方への移住・地方での起業の推進」などがテーマとなっており、UIJターンを後押ししています。国や地方自治体の取組をチェックするとともに、本助成金を活用できないかを検討してみてはいかがでしょうか。
本内容は、令和3年6月24日現在、厚生労働省より公表されている情報に基づいております。申請にあたっての詳細は、管轄の都道府県労働局等に確認をお願いいたします。