両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)
内閣府が、不妊治療を受けやすい職場環境整備に向けた取り組みを行っています。
国立社会保障・人口問題研究所が2015年に行った調査(※1)によると、不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は約5.5組に一組ですが、厚生労働省が2017年度に実施した調査(※2)によれば、不妊治療経験者のうち16%(男女計(女性は23%))の人が、仕事と両立できずに離職しています。
子供を持ちたいと願う人が、不妊治療を受けながら安心して働き続けられるためには、事業主や上司・同僚に不妊治療への理解・関心を深めてもらうことが重要です。 さらに、企業において通院に必要な時間を確保しやすい休暇制度や柔軟な働き方といった、多様な選択肢を用意していくことが必要です。
そのために内閣府は、日本経済団体連合会、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会に対し、不妊治療と仕事の両立ができる職場環境整備などに向けた取り組みについて、要請を行っています。
厚労省では、この動きに合わせて不妊治療と仕事の両立を支援する助成金として、「両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)」などを設けています。
さっそく概要を見ていきましょう。
※1 国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」(2015年)
※2 厚生労働省「平成29年度不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」
【1】支給要件
この助成金を受給するためには、次の要件を満たしている事業主であることが必要です。
(1)次の①と②を算出して比較した減少率が95%以上であることが確認できること
(算定対象労働者※1が20人に満たない事業所は、任意指定除外者※2を除いて減少率を算出する)
≪表1≫
① |
賃金規定等改定の措置に基づき増額された賃金が支払われた日の属する月前6か月間に算定対象労働者が受給した増額改定前の賃金の額で算定した高年齢雇用継続基本給付金の総額 |
② |
賃金規定等を増額改定後、各支給対象期において当該算定対象労働者が受給した増額改定後の賃金の額で算定した高年齢雇用継続基本給付金の総額 |
※1 算定対象労働者とは、事業所において高年齢雇用継続基本給付金を受給しているすべての労働者をいいます。
※2 任意指定除外者とは、算定対象労働者が20人未満の事業所であって、算定対象労働者の希望により雇用形態を変更し(フルタイムからパートなど)、賃金規定等改定日後も高年齢雇用継続基本給付金を受給する者の中から、事業主が各支給対象期の支給申請時に任意に指定した1人のみをいいます。
(2)就業規則や労働協約で定めるところにより、賃金規定等を増額改定し、増額改定後の賃金規定等を6か月以上運用していること
(3)増額改定前の賃金規定等を6か月以上運用していたこと(新たに賃金規定を整備する場合は、賃金規定等改定の措置に基づき増額された賃金が支払われた日の属する月前6か月間の算定対象労働者の賃金支払い状況が確認できること)
(4)支給申請日において増額改定後の賃金規定等を継続して運用していること
(5)支給対象となる事業主の要件
「各雇用関係助成金に共通の要件」のAの要件に該当するとともに、Bの要件に該当していないこと。
この共通の要件は複数あるため、文字数の関係上、「令和3年度 雇用・労働分野の助成金のご案内 詳細版」をご参照ください。当該助成金のみの要件はもとより雇用関係助成金の共通要件を満たす必要もあります。
必ず併せて確認するようにしてください。
【2】支給対象労働者
支給対象となる労働者は、次の要件を満たしていることが必要です。
(1)賃金規定等改定計画書に算定対象労働者として記載されていること。ただし、支給申請日に既に離職している者や、支給対象期の末月の前月までに高年齢雇用継続基本給付金の支給が終了した者など一部は除かれます。
(2)支給申請日において、継続して支給対象事業主に雇用されていること
(3)増額改定した賃金規定等を適用されていること
【3】支給申請回数
支給対象期の第1期から、第4期まで(6か月ごと)の最大4回(2年間)
支給対象期とは、賃金規定等改定の措置に基づき増額された賃金が支払われた日の属する月から最初の6か月間を支給対象期の第1期とし、以後6か月ごとに第2期、第3期、第4期といいます。
【4】支給額
増額改定した賃金規定等を適用した年度により、先の≪表1≫の①から②を引いた額に次の助成率を乗じた額が支給されます(100円未満切り捨て)。
令和3年度又は令和4年度 |
4/5(中小企業以外は2/3) |
令和5年度又は令和6年度 |
2/3(中小企業以外は1/2) |
【5】助成金申請の流れ
助成金申請には大きく分けて3段階あります。
<ア-1>
賃金規定等改定計画書は適用事業所ごとに作成し、賃金規定等改定予定年月日や算定対象労働者を記載します。
<ア-2>
計画書の認定後計画書に記載された内容に変更が生じた場合には、変更届の提出が必要です。
賃金規定等改定予定日の変更は、変更後の賃金規程等改定予定日の前日までに、それ以外の変更は6か月ごとの支給対象期の第1期支給申請日までに変更届及び計画書の写しを労働局に提出します。
<イ>
当該助成金の対象となる賃金規定等の改定の取り組みは、就業規則等の定めるところにより、60歳から64歳までの高年齢労働者に適用される賃金規定等を増額改定し、当該措置に基づき増額された賃金が支払われた日の属する月前6か月間に当該高年齢労働者が受給した増額改定前の賃金額で算定した高年齢雇用継続基本給付金の総額から、賃金規定等を増額改定後、各支給対象期に当該高年齢労働者が受給した増額改定後の賃金の額で算定した高年齢雇用継続基本給付金の総額の減少率が95%以上となるように取り組むことが必要です。
<ウ>
アで提出した賃金規定等改定計画の認定により認定された計画に基づき賃金規定等の増額改定を行った場合、各支給対象期末月分にかかる管轄ハローワークから指定された高年齢雇用継続基本給付金の支給申請月の翌月の初日から起算して2か月以内に、高年齢労働者処遇改善促進助成金支給申請書(様式第3号)、高年齢労働者処遇改善促進助成金支給申請書(別紙)(様式第3-1号)及び添付書類を管轄労働局に提出します。
様式第3-1号は各労働者の60歳到達時賃金月額、増額前6か月間に受給した高年齢雇用継続基本給付金の総額、増額後に受給した総額等を記載することで減少率などが算出される様式になっています。
新設されて間もない助成金のため、記載例などの情報がほとんどありません。
添付書類等については労働局やハローワークに問い合わせるようにと指示されています。実際に取り組む場合には支給要領を読み、詳細は労働局等に問い合わせをして確認してください。
余裕をもって取り組んでいきましょう。