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賃金制度を整備する介護・保育業界向けの助成金!

著者:社労士事務所ライフアンドワークス 代表  角村 俊一

賃金制度を整備する介護・保育業界向けの助成金!

介護と保育は、少子高齢化時代を支える重要な分野です。

しかし、社会的に介護や子育てへの関心が高まる一方で、介護・保育業界の人手不足が懸念されています。仕事と処遇が釣り合わないと感じている労働者も多く、十分な人材確保が難しい状況です。

こうしたなか、事業運営に必要な人材を確保するには、仕事に対する評価と処遇を納得性のあるものとし、将来にわたりやりがいを持って働ける環境づくりが必要です。

そこで活用したいのが「人材確保等支援助成金(介護・保育労働者雇用管理制度助成コース)」。労働者の職場への定着を促す賃金制度の整備を通じて、離職率の低下に取り組んだ事業主を助成する制度です。

今回は、「人材確保等支援助成金(介護・保育労働者雇用管理制度助成コース)」をご紹介します。


人手不足の介護と保育

介護と保育は、常に人手不足に悩んでいる業界です。特に訪問介護員の採用は困難を極めており、2019年度の有効求人倍率は15.03倍となりました。施設介護員をみても4.31倍と高い水準になっています。

【介護サービス職員の有効求人倍率】

2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019
訪問介護員 3.29 4.95 7.04 9.30 11.33 13.10 15.03
施設介護員 1.91 2.27 2.60 3.07 3.66 4.02 4.31

保育業界をみてみると、2020年4月における保育士の有効求人倍率は2.45倍です。介護業界よりは低いですが、全職種での有効求人倍率は1.23倍ですから、保育士の有効求人倍率も高い水準にあります。ここ数年、有効求人倍率が最も高い月は3倍を超えており、保育も人が集まりにくい業界だといえます。

【保育士の有効求人倍率(最も高い月)】

2015 2016 2017 2018 2019
2.44 2.76 3.40 3.64 3.86

納得感ある客観的な賃金制度を

人を採用し、継続して働いてもらうには、魅力ある職場でなければなりません。介護や保育は、人の命や健康にかかわる非常に責任の重い仕事です。まじめで責任感の強い方が多いため、その責任感に甘えている事業所もみられますが、これからの人材確保を考えると、各自の仕事ぶりをしっかりと評価し、処遇していく必要があります。

労働者の賃金への関心は高いですから、仕事は大変なのに賃金が安い、このまま頑張っていても先がみえない、どうすれば賃金が上がるのかが分からないなど、賃金の決まり方がブラックボックスではいけません。納得感、説得力のある客観的な賃金制度を整備したいものです。

助成金の概要

本助成金は、「制度整備助成」と「目標達成助成(第1回)/(第2回)」に分けられます。要件や受給額は以下の通りです。

助成項目 要件 受給額
制度整備助成 (1)介護・保育賃金制度整備計画の認定
介護・保育賃金制度整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受けること
(2)賃金制度の整備・実施
(1)の介護・保育賃金制度整備計画に基づき、当該介護・保育賃金制度整備計画の実施期間内に、賃金制度を整備・実施すること
50万円
目標達成助成
(第1回)
介護・保育賃金制度整備計画期間の終了から1年経過するまでの期間の離職率を、介護・保育賃金制度整備計画を提出する前1年間の離職率よりも目標値以上に低下させること 57万円(生産性要件を満たした場合は72万円)
目標達成助成
(第2回)
介護・保育賃金制度整備計画期間の終了から3年経過するまでの期間の離職率が評価時離職率(第1回)を維持していること 85.5万円(生産性要件を満たした場合は108万円)

賃金制度の整備と注意点

本助成金の目的は、賃金制度の整備を通じて労働者の離職率を下げることですから、ポイントとなるのは「賃金制度の整備」です。

【賃金制度の整備】

介護・保育労働者の職場への定着を促進するために、就業規則等により、一定の賃金制度を新たに導入すること(既存の賃金制度の変更を含む)、又は、該当する賃金制度となるよう対象者の範囲を拡大すること

整備内容は、①に加え、②か③のいずれか又は両方に該当することが必要です。

賃金制度の整備内容

既にこれらを満たす賃金制度が就業規則等に規定されている場合であっても、階層的な賃金額の定めに、更に上位の階層の賃金額を追加する場合は、賃金制度の整備に該当します。

注意点は、非正規職員等を含む全ての介護・保育労働者を対象とする賃金制度としなければならない点です。正社員のみを対象とする賃金制度は支給対象となりません。パートやアルバイトなどにも適用される賃金制度を構築してください。

介護労働者 専ら介護関係業務に従事する労働者のことをいいます。また、介護関係業務とは、身体上または精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある方に対し、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練、看護、療養上の管理、移動の介護、衣服の着脱介護、体位交換、清拭等を行うものです。
保育労働者 保育労働者とは、専ら保育関係業務に従事する労働者のことをいいます。また、保育関係業務とは、保育事業を行うにあたり発生する業務であり、例えば、調理員や事務担当者等の労働者も含まれます。

その他、賃金制度整備後の対象労働者の賃金総額が低下していないこと、賃金制度が実施されるための合理的な条件(勤続年数、人事考課結果等の客観的に確認可能な要件および基準、手続、実施時期等)が就業規則等に明示されていることなどが必要です。

離職率の低下を目指して

次に、目標達成助成をみてみます。

助成項目 要件
目標達成助成
(第1回)
① 制度整備助成に記載する措置を実施すること
② 評価時離職率(第1回)を目標値以上に低下させること
③ 評価時離職率(第1回)が30%以下となること
目標達成助成
(第2回)

① 目標達成助成(第1回)に記載する措置を実施すること
② 評価時離職率(第2回)が評価時離職率(第1回)を維持していること
③ 評価時離職率(第2回)が20%以下となること
※以下のような場合は、離職率を維持していても20%以下となっていないので不支給となります。

評価時離職率(第1回) 評価時離職率(第2回)
25% 25%

目標達成助成(第1回)における目標値は、雇用保険一般被保険者の人数に応じて決められています。

【離職率低下の目標値】

雇用保険一般被保険者の人数 1~9人 10~29人 30~99人 100~299人 300人以上
低下させる離職率ポイント(目標値) 15%
ポイント
10%
ポイント
7%
ポイント
5%
ポイント
3%
ポイント

離職率の計算は次の通りです。

離職率(%) 所定の期間における離職による
雇用保険一般被保険者資格喪失者数
× 100
所定の期間の初日における
雇用保険一般被保険者数

目標達成助成(第1回)では、1年後の離職率を目標値以上に低下させること、目標達成助成(第2回)では、低下した離職率を2年間維持することが求められます。

【評価時離職率(第1回)と評価時離職率(第2回)】

評価時離職率(第1回) 評価時離職率(第2回)
「所定の期間」を「介護・保育賃金制度整備計画期間の末日の翌日から起算して12か月経過する日までの期間」として算出した離職率 「所定の期間」を「評価時離職率(第1回)算定期間の末日の翌日から起算して24か月経過する日までの期間」として算出した離職率

介護や保育の資格を持っているが働いていない、いわゆる潜在介護人材や潜在保育士が相当数存在するといわれています。残念な状況ではありますが、今現場で働いている介護職員や保育士が将来にわたり働き続けることができるよう、ぜひ賃金制度を整備して働きがいのある職場づくりに取り組んでみてください。

※本内容は、令和2年9月3日現在、厚生労働省より公表されている情報に基づいております。申請にあたっての詳細は、管轄の都道府県労働局等に確認をお願いいたします。

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著者プロフィール

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角村 俊一

社労士事務所ライフアンドワークス 代表

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。

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