仕事と家庭の両立支援で助成金!(その2)
今回は4つある両立支援等助成金のコースの中から、「介護離職防止支援コース」と「再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)」の2つをご紹介します。
介護保険法が施行されたのが、平成12年です。そこから既に20年が経過し、介護を必要とする要介護認定者数は増え続けています。また、共働き家庭の割合が増え専業主婦世帯数を大きく上回り、平成30年の男女共同参画白書によれば2倍強となっています。働きながら、育児、介護をしている人が増えているのです。実感として感じるところもあるのではないでしょうか。
一方で会社はといえば、コロナ禍において在宅勤務等今までとは違う働き方が増えているとはいえ、まだ、以前からの働き方が主流です。育児や介護をするために退職せざるを得ない人材を少しでも減らすための支援として1つ目の「介護離職防止支援コース」が、育児や介護で仕事を辞めざるを得なかった元労働者を再雇用する企業の支援として2つ目の「再雇用者評価処遇コース」があります。
採用に関して、今は少し以前と変わり会社側に有利になっているところはあるかもしれませんが、労働力人口減少は今後も続きます。大切な労働者を離職させないこと、離職せざるを得なかったとしても戻ってこられる道を作っておくことで、採用コストを抑え、生産性を少しでも維持向上することができるのではないでしょうか。
どちらの助成金も、支給申請に先んじる計画書等の作成・提出の必要はなく、利用する労働者が出てから、あるいは再雇用した労働者が出た後、支給申請をしていくパターンです。手続きの煩雑さからすれば簡単かと思いますので、受給を検討してみてはいかがでしょうか。
比較的簡単とはいえ、利用労働者や再雇用労働者が出る前に規則等を準備し、労働者に周知しておくことが求められています。後付けで作成しても支給申請はできませんので、ご注意ください。助成金の不正受給はその後の他の助成金申請にも影響が出ます。確認の上、必ず守るべき事項を守って、手続きをお願いします。
要件等概要を見ていきましょう。
対象となる事業主
どちらのコースも次の2つの要件を満たすことが必要です。
① 雇用関係助成金の共通要件を満たしていること。(詳細は文字数の関係で割愛)
② 現在施行されている育児・介護休業法の基準を満たす内容の介護休業関係制度、育児休業制度を労働協約又は就業規則に規定していること。
上記要件の他、雇用関係助成金に共通の受給できる事業主に関する要件が別途ありますので、ご確認ください。
【1】介護離職防止支援コース
この助成金は(1)介護休業と(2)介護両立支援制度の2つのパターンがあります。2つ目の介護両立支援とは、介護休業の取得ではなく、所定外労働の制限や時差出勤等をすることで介護と仕事を両立させることを支援するものです。
このコースは中小企業のみを対象としています。また、令和2年度で終了するとされていますので、検討している企業がありましたら、今年度中に提出して頂く必要があります。ご注意ください。
(1)介護休業
介護休業を取得する場合、段階によって行わなければならない措置が決められています。
事前段階
- 円滑な介護休業の取得及び職場復帰を、介護支援プランにより支援する方針をあらかじめ労働者に周知する。
介護休業取得前
- 介護休業取得希望者に対し、取得前に人事労務担当者等との支援プラン作成のための面談を行い、記録を残し、面談結果を踏まえた支援プランを作成する。
- 円滑な介護休業取得のため、支援プラン内において介護休業取得者の業務の整理、引継ぎに関する措置を定め、実行する。
介護休業取得
- 作成した支援プランに基づき対象家族について合計5日以上の介護休業を取得させる。
- 対象労働者について、雇用保険被保険者として雇用していること。
職場復帰時
- 介護支援プランによる職場復帰支援(①介護休業期間が2週間以上の場合、終了前に人事担当等と面談を実施し記録。②原則として現職に復帰。)
- 復帰後申請日までの間雇用保険被保険者として3か月以上継続雇用。
(2)介護両立支援制度
両立支援制度を取得する場合、段階によって行わなければならない措置が決められています。
事前段階
- 労働者の仕事と介護の両立に資する「介護両立支援制度」の利用について支援プランにより支援する方針をあらかじめ労働者に周知する。
両立支援制度利用前
- 両立支援制度利用開始日の前日までに、人事担当者等と少なくとも1回以上面談をし、結果を記録し、面談を踏まえた支援プランを作成する。
- 支援プランの中に、利用制度期間中の業務体制の検討に関する取り組みを定める。
両立支援制度利用
- 所定外労働の制限や時差出勤等8つの項目から1つ以上の制度について、それぞれの要件を満たす利用を行う。(細かく要件が決められていますので、要件を確認してください。)
継続勤務
- 制度利用開始時及び支給申請にかかる合計20日間の制度利用終了後から申請日までの間、雇用保険被保険者として継続雇用。
支給額
支給額は次のとおりです。助成金の支給は、「介護休業」「介護両立支援制度」それぞれについて、1中小企業事業主あたり1年度5人まで(有期・無期いずれも対象)となります。
支給額 | |
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(1)介護休業 | 1 休業取得時:28.5万円 2 職場復帰時:28.5万円 |
(2)介護両立支援制度 | 28.5万円 |
生産性要件を満たした場合には、増額されます。
受給手続き
次の日の翌日から起算して2か月以内に、必要な書類を管轄の労働局雇用環境・均等部(室)に提出します。
(1)介護休業 | 1 休業取得時:介護休業期間が合計5日を経過する日 2 職場復帰時:介護休業終了日の翌日から起算して3か月が経過する日 |
(2)介護両立支援制度 | 介護両立支援制度の利用が合計20日を経過する日の翌日から起算して1か月が経過する日または、「介護サービス費用補助制度」の場合は、制度利用期間が6か月を満たす日の翌日から起算して1か月が経過する日 |
【2】再雇用者評価処遇コース
当該コースの助成金を受けるためには、次の(1)を実施した上で、次の(2)に該当する労働者を再雇用することが必要です。このコースでは、中小企業の他、中小企業以外でも申請が可能です。
(1)再雇用制度の規定整備
事業主が次の3つの全てを満たす再雇用制度について、就業規則等において定め労働者に周知します。
① 再雇用の対象となる退職理由として、妊娠、出産、育児、介護、配偶者の転勤又は転居を伴う配転が明記されていること
② 対象者の年齢について、定年を下回る制限を設けないこと
③ 対象者を再雇用する場合には、退職前の勤務実績等を評価し、処遇の決定に反映させることを明記していること
(2)対象労働者
次の4つに該当する雇用保険被保険者であり、再雇用制度施行後又は改正後に当該制度に基づいて再雇用された労働者をいいます。
① 妊娠、出産、育児、介護、配偶者の転勤又は転居を伴う転職のいずれかを理由として退職した者であること
② 再雇用にかかる採用日において、退職日の翌日から起算して原則として1年以上(離職のきっかけとなる事由が消滅した場合を除く)が経過していること
③ 次のいずれかに該当する者であって、一定の就業実績があること
ア 再雇用時に期間の定めのない雇用契約を締結し、当該契約に基づき支給申請日まで6か月以上雇用保険被保険者として継続雇用されていること
イ 再雇用時に有期雇用労働者として採用された場合、その後期間の定めのない雇用契約を締結してから6か月以上(再雇用6か月後の支給を受ける場合)又は1年以上(再雇用1年後の支給を受ける場合)雇用保険被保険者として支給申請日まで継続雇用されていること
④ 挙げられた4つのいずれかに該当する者でないこと(詳細要確認)
(例)退職後、再雇用にかかる採用日の前日までに再雇用先の事業主又は関連事業主と雇用、請負、委任の関係にあった、又は出向、派遣、請負、委任の関係により就労していた者
支給額
支給は、再雇用の採用日から起算して6か月継続雇用後と、1年継続雇用後の2回申請をすることができます。ただし、2回は同じ対象者であることが要件です。
支給額 | 中小企業以外 | |
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再雇用1人目 | ①再雇用6か月後 19万円 ②再雇用1年後 19万円 |
①再雇用6か月後 14.25万円 ②再雇用1年後 14.25万円 |
再雇用2~5人目 | ①再雇用6か月後 14.25万円 ②再雇用1年後 14.25万円 |
①再雇用6か月後 9.5万円 ②再雇用1年後 9.5万円 |
生産性要件を満たした場合には、増額されます。
受給手続き
再雇用6か月後、1年後のいずれも、再雇用の採用日から起算して6か月を経過する日又は1年を経過する日の翌日から2か月以内に、支給申請書に必要な書類を添えて、管轄の労働局雇用環境・均等部(室)へ支給申請します。
雇用情勢はコロナ禍において少しそれまでとは変化しています。しかし、働きやすい環境を作っていくことは、今後ますます必要となってくると思われます。今から積極的取り組み、ご紹介しました助成金を活用してはいかがでしょうか。