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テレワークとコミュニケーション

著者:本山社会保険労務士事務所 所長  本山 恭子

テレワークとコミュニケーション

1.はじめに

新型コロナ感染症対策として、テレワークを初めて導入した企業もあったことと思います。とりあえず始めてみたところ通勤時間分は自由な時間になり、通勤の大変さからも解き放たれ、1回目の緊急事態宣言の初期のころは、テレワークを歓迎した人が多かったと聞きます。

しかし、時間が経つにつれ、いい面もあるけれど大変な面、特にコミュニケーションについての問題が聞こえてくるようになりました。今回は、テレワークとコミュニケーションについて考えてみたいと思います。

2.テレワークとコミュニケーションに関する調査結果から見えてくるもの

サイボウズチームワーク総研が2020年11月に「テレワークのコミュニケーション」調査結果をリリースしています。職場の人とコミュニケーションを取る時間は、1日当たり「30分未満」と答えた人は6割、業務に直接かかわらないものについては「0分」と答えた人が何と4割もいました。職場の人とのコミュニケーションのしやすさについても聞いていますが、業務にかかわるもの、かかわらないものいずれにおいても5割を超える人が「しにくい」と回答しています。年代別で見ると特に20代がしにくいと答え、次いで30代が高い割合を示しました。若い人ほどテレワークにおいてコミュニケーションが望むようには取れていないことがうかがえます。

3.テレワーク時のコミュニケーションに関する問題

テレワーク時には、同じフロアに従業員がいるわけではありません。基本的には個人個人がそれぞれの業務を別々の場所で行い、ときに連絡を取り合うというスタイルです。そのため、これまでしてきたような「相手の様子をうかがって、話しかけるタイミングをはかる」ことができないことが、コミュニケーションがしにくいと感じる一要因と考えられます。

そのような環境の中で、次のような問題が挙がることがあります。

  • 相手の状況が分からず話しかけていいかどうか迷う
  • 相手がとても忙しそうで、話しかけるのは気がひける
  • 仕事の話以外がしづらい
  • ちゃんと伝わっているか相手の反応が見えづらく、ときに誤解を生むことがある
  • 終業時間後や休日にも上司からメールが来て、気持ちが休まらない

4.少しでもよりよいコミュニケーションを増やす工夫

テレワークにおけるコミュニケーションの課題を少しでも改善するための具体的方法例とコミュニケーション時の応答について考えてみたいと思います。なお、ときとして知らず知らずにハラスメントに繋がることがあります。いずれの方法においても、相手の立場に立ってハラスメントにならないように皆が気を付けることが基本となります。

(1)具体的方法

①ICTツールを活用する

最近では、様々なチャットツールが利用できるようになっていますので、特性等を検討したうえで採用するのも一案です。また、チャットツールだけでなく、相手の顔が見えるオンライン会議システムを使うことも相手の状況を理解しやすくしていくでしょう。

②決まった時間に質問、打ち合わせを行う

必要に応じた会議を持つ以外に、できれば毎日、指示出しや状況確認、質問などの時間を決めて行う方法もあります。今聞いていいか迷ったり、相手の状況を慮ることの必要がなくなります。複数で行う機会、1対1で行う機会などを組み合わせて行うといいでしょう。

③雑談を行う時間をあえて持つ

業務に関係ない会話が減っている現状がありますから、仕事の話を持ち込まないコミュニケーションの時間を設けてはどうでしょうか。ランチを一緒に取る、業務終了後のオンライン飲み会などもありますし、あえて就業時間内に行うことを検討してもいいのではないかと思います。

(2)コミュニケーション時の応答等

①メールやチャット時の文言と確認

メールやチャットツールのやり取りは文字で行います。文字のやり取りは、会って話す以上に誤解等を生む可能性が高くなりがちです。メールを出す側、受ける側双方ともに特性を持ち、各自が自らの特性を持って文章を理解していくためです。そのため、伝えた側は「伝えたからこちらが言いたいことが伝わったはず」と考えず、どのように理解したか確認していきましょう。受け取った側も本当にこの解釈でいいか確認しましょう。また、文字だけですと強い印象になりがちです。ビジネスライクに徹することなく、相手を気遣う言葉を含めたり、必要に応じて絵文字などを活用するなど工夫するといいでしょう。

②画面越しのコミュニケーション時の応答

一般的にコミュニケーション時には、相手の「言葉」以外に、「表情」や「しぐさ」などのボディーランゲジにも注意することが大切です。画面越しでのコミュニケーションの場合には上半身しか見えないことが多いと思います。だからこそ、相手の表情にこれまで以上に注意を向けて話してみてください。言葉だけでなく顔が語ってくれることがあります。

質問や相談をされたとき、どのように返答するでしょうか。「相手の望む答えを探して伝える」でしょうか。もちろん、相手の望む具体的情報や解決策を示すことは必要です。仕事においては、簡潔に行うことが求められますので、他に何かあるのかという意見もあるでしょう。しかし、それだけでは十分ではないこともあるのです。解決策等を伝える前に、まずは相手が何に困っているのか、どんな気持ちでいるのかなど、相手が伝えたいと思っていることを、ちゃんと伝わったよと相手が分かるように、伝え返すことが重要です。分かってもらえたと思えることで、相手の伝えてくれるその他の情報やアドバイスを受け取りやすくもなるのです。このとき、相手が使った事柄や感情の言葉を用いて伝え返していくといいでしょう。これは画面越しの会話だけでなく、メールにおいても使えますし、対面での会話でも使える方法です。

5.まとめ

様々な情報や方法がネット等ででています。資金的な面、やってみようと思う気持ち的な面、いずれにおいても取り入れやすいところから始めてみてはいかがでしょうか。他の会社での成功事例などを基に採用する方法を考える企業も多いと思います。しかし、組織風土やメンバー特性が違いますので、他ではうまくいっても、自らの組織ではうまくいかないこともあるでしょう。そのようなときには、あきらめてやめてしまうのではなく、皆で話し合い変更しながら、自らの組織の方法を作り上げていきましょう。まだ続いていくことが予想されるコロナ禍中はもちろん、その後にも使えるものとなっていくでしょう。

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著者プロフィール

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本山 恭子

本山社会保険労務士事務所 所長

特定社会保険労務士、行政書士、公認心理師、産業カウンセラー、消費生活アドバイザー
ストレスが多く、事業運営もグローバル化の中厳しく、企業、労働者共に大変な今、少しでも働きやすい環境を作るお手伝いをすることを通して、企業、労働者の皆様のお手伝いを精一杯してまいります。法律だけの四角四面でない、気持ちを汲んだサポートを心掛けています。

【事業内容】
「働く」社会で一番大切な「人」にまつわる事柄へのお手伝いをいたします。労働基準法、社会・労働保険に関する相談から、メンタルヘルス対策、コミュニケーション、社内活性化など以下の通りです。企業、個人いずれからのご相談も可能です。
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