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テレワークと健康管理

著者:本山社会保険労務士事務所 所長  本山 恭子

テレワークと健康管理

日本における労働力人口減少に伴い、柔軟な働き方が求められるようになり、その方策のひとつとしてテレワークがあげられています。

また、新型コロナ感染症対策としても、テレワークの導入が求められているところです。

テレワークは通勤から解放されるなど様々な利点がある一方で、気を付けるべき点もあります。

今回は、気を付けるべき点として、テレワーク時における健康管理について見ていきたいと思います。



1 テレワークと長時間労働

テレワークにより、これまでのような常時誰かの目に触れながらの業務遂行ではなくなっています。利用するICTの種類によっては、常時誰かとつながり画面を通して相手を見ながら業務をするということも可能のようですが、チャットツールやメール等相手の顔は直接見えない方法を採用しているケースも多いかと思います。

テレワーク時においても時間管理の必要性と重要性を以前お伝えしたところです。始業・終業時刻、中抜けも報告させているし、大丈夫と思うかもしれませんが、果たして本当にそうか怪しいかもしれません。従業員によっては、会社に報告した時間以外にも業務を行っているかもしれないからです。いつでも業務にアクセスできることは、便利でもありますが簡単に長時間労働に繋がってしまう恐れを含んでいます。

私が社会保険労務士として開業した当初、まさにこの状態でした。事務所を構えるほどの稼ぎはありませんから自宅での開業です。布団に入っても一旦業務のことが心配になると、どんなに夜中であってもPCを立ち上げてしまったものです。その後、このようなことが続いてしまうと心身にとって良くないと判断し、無理をして事務所を借りたのです。

私の場合には、誰も私の業務時間の管理をしてくれませんから、自ら働く時間を制御することが必要でした。会社においては管理職が従業員の労働時間を正確に把握し、場合によっては長時間労働にならないように対策を取る必要があります。いくつかそのための方法を見ていきましょう。

(1)メールの使用ルールを決める

「管理職が夜中や休日でさえもメールを送りつけてくるので気持ちが休まらない」という声を聞いたことがあります。夜間や休日にはメールを送りたい案件があっても、たとえメールを作成していたとしても、業務時間以外は送付しないと決まりを作ってはどうでしょうか。どうしても送る場合には、時間外や休日には応答する必要がないと徹底します。それでも受け手側の媒体の設定においてメールが届いたことが分かるようにしてあると、「応答しなくていいと言われても」ということにもなりかねませんから、設定を変えることも必要かもしれません。

(2)システムへのアクセス制限

業務時間以外にはサーバにアクセスできないようにする、アクセスはできるけれど、あまりにも頻繁な場合などは、残っているログを基に注意をするなどの対策を取ることもいいでしょう。どのようなときに注意をするか、あらかじめ基準を設けておくといいでしょう。

(3)時間外、休日労働の原則禁止の徹底

テレワークにおいても所定労働時間以外の労働は時間外労働です。管理職は時間外労働に関する適切な理解を持ち、労働者にも勝手な時間外労働をしてはならない旨を理解してもらうことが必要です。そして、その徹底を図りましょう。単に禁止と就業規則に定めても離れた場所の相手ですから、徹底が難しい可能性があります。担当や管理職には負担かもしれませんが、ルールが守られているか確認していきましょう。

(4)長時間労働になりそうな労働者の管理と注意喚起

会社の人事担当者から、長時間労働になる人は大抵決まっているという話が出ることがあります。皆さんの会社ではどうでしょうか。定期的に労働時間を確認し、長時間労働に繋がりぎみの人には、注意喚起していきいましょう。しかし、単に注意喚起では、毎月繰り返し長時間労働になってしまうことも考えられます。仕事がその人に集中しているのであれば業務の配分を検討することも必要でしょうし、該当者に原因があるようであればその解消を試みる必要もあるでしょう。


2 長時間労働者に対する医師の面接指導、ストレスチェック等の実施

テレワークであっても労働安全衛生法の適用は変わりません。法律においては、時間外・休日労働が月80時間を超えた労働者が申し出た場合には、会社は医師による面接指導を実施しなければならないとされています(高度プロフェッショナル制度適用者を除く)。これに先立ち、事業者は時間外・休日労働時間が月80時間を超えた労働者に対し、労働時間に関する情報の通知が必要です。医師による面接指導を実施したのち、医師による報告に基づき事業者は必要な措置を行う必要があります。

また、年1回のストレスチェックも同様です。既に法律が施行されてから何年も経ち、慣れてきているかもしれませんが、テレワークではこれまでと違う環境ですので、より自らのメンタルに関する状態を見ていくいい機会となるのではないでしょうか。本人の同意がなければ結果は開示されませんから、正直に回答し、その結果をもって労働者が自らのメンタルの状態を把握しセルフケアに活かすことの意義などを、改めて労働者に示していくといいでしょう。高ストレスと判定が出た労働者については、医師による面接指導の勧奨を積極的に行っていくことも必要でしょう。

 


3 在宅勤務時の作業環境整備

テレワークを行う場所が自宅というケースも多いと思います。その作業環境についての注意点があることをご存じでしょうか。業務を自宅で行う場合であったとしても、労働安全衛生法等で定める衛生基準と同等の作業環境となるよう、労働者に助言していくことが望ましいとされています。会社によっては在宅勤務手当などの支給によって、当該作業環境を整備しているところもあると聞きます。

厚生労働省のHP「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」では次のように自宅等における作業環境整備のポイントをあげています。参考にし、従業員の作業環境がどうか確認していくといいでしょう。


4 まとめ

ようやく日本においても新型コロナウィルスに関するワクチン接種が始まろうとしています。しかし、まだこれという治療薬があるわけでもありませんし、元通りの生活ができるようになるまでは年単位での時間が必要だという話を聞いたことがあります。何がどこまで本当なのか、これからどうなるのか誰にも分かりません。今私たちにできることは、必要なこと、できることを行っていくことだけです。慣れないテレワークも、少しずつでも快適なものにしていくために、健康管理に関することも改めて見直し、改善していきましょう。

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著者プロフィール

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本山 恭子

本山社会保険労務士事務所 所長

特定社会保険労務士、行政書士、公認心理師、産業カウンセラー、消費生活アドバイザー
ストレスが多く、事業運営もグローバル化の中厳しく、企業、労働者共に大変な今、少しでも働きやすい環境を作るお手伝いをすることを通して、企業、労働者の皆様のお手伝いを精一杯してまいります。法律だけの四角四面でない、気持ちを汲んだサポートを心掛けています。

【事業内容】
「働く」社会で一番大切な「人」にまつわる事柄へのお手伝いをいたします。労働基準法、社会・労働保険に関する相談から、メンタルヘルス対策、コミュニケーション、社内活性化など以下の通りです。企業、個人いずれからのご相談も可能です。
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