8.テレワークに関するよくあるQ&A

今回は日本テレワーク協会によく寄せられるご質問に、どのようにお答えをしているか、労務管理に関することをお伝えしていきたいと思います(お問い合わせとしては、情報通信やセキュリティ、助成金に関するご相談もよくいただきますが、今回は省いております)。現在は緊急事態での対応を迫られている中かと思いますが、この状況が落ち着いた際の導入の再検討も意識してお伝えしていきたいと思います。
Q1 テレワークとはどのような働き方ですか?
「テレワーク」とは、インターネットなどのICT(※1)を活用した場所にとらわれない柔軟な働き方で、勤務場所から離れて、自宅などで仕事をする働き方です。テレワークは働く場所によって、下図のように在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務の3つに分けられます。
※1 情報通信技術=ICT(Information and Communication Technology)
●図表1 テレワークの区分(働く場所による区分)
このように場所にとらわれない柔軟な働き方を可能とすることによって、「従業員の育児や介護による離職を防ぐ」「遠隔地の優秀な人材を雇用する」「災害時に事業を継続しやすくする」などのメリットがあり、会社全体の働き方を改革するための施策の一つとして期待されています。
Q2 テレワークはどのようなプロセスで導入すべきですか?
テレワーク導入・運用を円滑に進めるためには、次のようなプロセスが良いでしょう。
●図表2 テレワークの導入のプロセス
企業によって各部門の役割分担は様々ですが、企業の規模別におおまかに役割分担を分類すると下図のような例がありますので参考にしてください。
●図表3 役割分担の例(大企業/中堅企業/小企業別)
Q3 テレワークで行う業務をどのように選定すれば良いでしょうか?
テレワークの対象となる業務を選定するに当たっては、「業務」単位で整理することがポイントです。まずは、業務全体の「棚卸し」を行い、テレワークで実施しやすい業務と実施しにくい業務を整理しましょう。
●図表4 業務の棚卸しと見直しのイメージ
Q4 テレワーク導入には、就業規則を変える必要がありますか?
テレワークを導入する場合には、就業規則にテレワーク勤務に関して規定しておくことが必要です。この場合、就業規則本体に直接規定する場合と、「テレワーク勤務規程」といった個別の規程を定める場合があります。いずれの場合も、テレワーク勤務に関する規定を作成・変更した際は、所定の手続きを経て、所轄労働基準監督署に届出することが必要です。
●図表5 就業規則の構成
Q5 テレワーク時にはどのように労働時間を管理すれば良いですか?
テレワーク時には、従業員が通常の勤務と異なる環境で就業することになります。そのため、労働時間の管理方法について確認し、ルールを決めておくことが必要です。既存のルールやICT環境をそのまま活用することができる場合は、よりスムーズにテレワークを導入することができます。労働時間の管理には、以下の2つの観点があります。
1.始業・終業時刻の管理
従業員の始業・終業時刻を管理するため、始業・終業時刻の報告や記録の方法をあらかじめ決めておきます。テレワークによって通勤時間が削減されると、通常より早く業務を開始することも考えられます。業務の開始時刻や終了時刻を変更することを認める場合は、その運用ルールをあらかじめ決めることが必要です。
2.在席・離席の確認
在席・離席が確認されることによって、「勤怠の管理が難しい」という管理者の不安や、「テレワーク時に仕事をさぼっていると思われていないか」「評価が下がるのではないか」というテレワーク利用者である従業員の不安が軽減できます。
所定労働時間中に業務を中断することを認める場合について、その運用ルールをあらかじめ決めることが必要です。特に、育児・介護を行っているテレワーク利用者は、個人のやむを得ない事情によって業務を中断する必要が生じる可能性がありますので、労働時間管理や情報共有に関するルール化が求められます。
Q6 自宅でテレワークを行う場合、「事業場外労働のみなし労働時間制」を利用できる要件はありますか?
在宅勤務であっても、一定の要件を満たせばみなし労働時間制を利用できます。(労働基準法第38条の2)
一定の要件とは次の3点の要件を全て満たした場合です。
- ① テレワークが、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
- ② テレワークで使用しているパソコンが使用者の指示により常時通信可能な状態となっていないこと
- 使用者の指示:労働者が自分の意思で通信可能な状態を切断することについて、使用者から認められていない状態。
- 通信可能な状態:使用者が労働者に対して、パソコンなどの情報通信機器を用いて電子メール、電子掲示板などにより随時具体的な指示を行うことが可能であり、かつ、使用者からの具体的指示があった場合に労働者がそれに即応しなければならない状態。これ以外の状態、例えば、単に回線が接続されているだけで、従業員がパソコンから離れることが自由である場合などは、「通信可能な状態」には該当しない。
- ③ テレワークが、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
Q7 テレワーク実施時の業績等に関する業務評価はどのように行えば良いでしょうか?
テレワークにより労働者が職場に出勤しないことなどから、業績評価等について懸念を抱くことのないように、評価制度、賃金制度を構築することが望ましいです。また、業績評価や人事管理に関して、通常の労働者と異なる取り扱いを行う場合には、あらかじめテレワークを選択しようとする労働者に対して当該取り扱いの内容を説明することが望ましいです。
業務目標を上司と部下で話し合い、その達成状況に応じた評価を行う「目標管理制度」がありますが、この制度では、四半期や半期などの一定期間ごとに、業務の達成状況の確認や見直しが行われることが一般的です。
Q8 テレワーク実施の際に要した通信費・水道光熱費などの費用は会社が負担すべきでしょうか?
テレワークに関わる費用負担区分については、テレワークを導入する前に、通信費・水道光熱費、文具など負担について明確なルールをつくり、従業員に対して、丁寧に説明することが必要です。
労働基準法第89条第1項第5号では、「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項を就業規則に定めなければならない。」と規定されていますので、必要に応じて就業規則の変更をしなければなりません。
なお、就業規則の作成義務がない会社では、前述のことについて労使協定を結んだり、労働条件通知書で従業員に通知したりすることが必要です。
次回は、「テレワークを通じての個人キャリアの構築と支援」に関してお伝えしていきたいと思います。