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サラリーマンが知る税制シリーズ 最終回 相続税

著者:   bizocean編集部

サラリーマンが知る税制シリーズ 最終回 相続税

シリーズ最終回の今回は、相続税を取り扱います。これはサラリーマンであってもなくても、多かれ少なかれ関係する可能性のあるトピックではないかと思われます。昨今の税制改正で非課税枠が大きく減少し、相続税の対象者が増えました。このことで相続税はより身近になったと言えるでしょう。本稿では、相続税の基本的な考え方について概観したいと思います。なお、なるべく平易な言い回しで説明するため、厳密性に欠ける部分もあることにご留意ください。



1. 相続税と対象となる財産

相続税は、個人が被相続人(亡くなった人のことを言います)から相続などによって財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税金です。

なお、相続にあたって、相続税がかかる財産とかからない財産があります。以下の通り分類されています。

相続税がかかる財産

相続(※)によって取得した財産
みなし相続財産

相続財産とは、被相続人が生前に持っている財産を、相続をきっかけに譲り受けるものです。ところが、被相続人が死亡したことに起因して支払われる死亡退職金、被相続人が生前に保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金(註 退職金、生命保険金ともに非課税枠の設定あり)など、生前には故人の手元になかった財産も、相続をきっかけに引き継がれる財産であることから、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。

(※)遺贈(遺言によって受贈者に無償で財産を譲り渡すこと)の場合も対象となりますが、話が少し複雑になるので本稿では触れていません。

相続税がかからない財産

墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祀(まつ)る道具など普段礼拝をしているものや、宗教、慈善、学術、その他公益事業を行う個人が、取得した財産で公益事業を行う場合などは相続税がかからないとされています。


2. 相続人の範囲と法定相続分

相続人の範囲や法定相続分は、民法で次の通り定められています。

(1)相続人の範囲(法定相続人)

死亡した人の配偶者は常に相続人となります。配偶者以外の人は、次の順序で配偶者とともに相続人になります。

なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。
また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。

(2)法定相続分

以下の通りとされています。

これは相続人の間で遺産分割の合意ができなかった時の遺産の取り分であり、必ずこの割合で遺産の分割をしなければならないわけではありません。

これを見てわかる通り、常に配偶者は1/2以上の分割割合が設定されています。


3. 相続税の計算

考え方としては非常にシンプルです。正の資産から債務を引き、正味の財産価額を算出します。たとえば財産が1億円あり、借金が6千万円あったとしたら、1億円-6千万円=4千万円 が正味の財産価額となります。ここからさらに基礎控除を差し引き、税率をかけて、税金を算出します。その計算結果からさらに決められた控除額を引くことで支払うべき相続税が計算されます。計算式で書くと次のようになります
(註 その他の要素~たとえば葬式費用も相続財産から控除可~もありますが、基本的な骨組みは以下の通りです)

(相続税)= [(課税価格)-(債務)-(基礎控除)(※)] × 税率 – (控除額)

税率と控除額は以下の通り速算表が準備されています。

第1順位

死亡した人の子供

その子供が既に死亡している時は、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいる時は、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。

第2順位

死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)

父母も祖父母もいる時は、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
第2順位の人は、第1順位の人がいない時、相続人になります。

第3順位

死亡した人の兄弟姉妹

その兄弟姉妹が既に死亡している時は、その人の子供が相続人となります。
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいない時、相続人になります。

※基礎控除はあくまでも法定相続人の数によって決まり、法定相続人の中で相続放棄をした人がいても無関係に以下の通り計算されます。

3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

なお、平成25年度(2013年度)の改正前は、基礎控除5,000万円 + (1,000万円 × 法定相続人の数)でした。これに比べると控除枠が単純計算で4割引き下がっており、相続税の対象となる人が大幅に増えたものと思われます。その意味で、過去には富裕層のものと思われていた相続税はより身近になってきたとも言えます。


4. 相続税の納税

相続税の納税は相続があったことを知った時から10か月以内に行わなくてはいけません。また、現金での一括納付が原則です。相続財産の額によっては納税額が高額になることもあり、現金で納付できない場合は、一定の条件下で不動産などによる物納や、延納も可能となっています。ただ不動産の場合は、相続人の思い入れのある場所を物納することなどもあり得るため、機械的に割り切れるものではないのが難しいところです。


5. 相続税の2割加算

相続財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。

国税庁のタックスアンサーでは以下のように整理されています。

タックスアンサーNo.4157から)

以下のような説明書きが示されています。(タックスアンサーNo.4157から引用)

1 被相続人の養子は、一親等の法定血族であることから、相続税額の2割加算の対象とはなりません。ただし、被相続人の養子となっている被相続人の孫は、被相続続人の子が相続開始前に死亡した時や相続権を失ったためその孫が代襲して相続人となっている時を除き、相続税額の2割加算の対象になります。

2 相続時精算課税適用者が相続開始の時において被相続人の一親等の血族に該当しない場合であっても、相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した時において被相続人の一親等の血族であった時は、その財産に対応する一定の相続税額については加算の対象になりません。

相続税額の2割加算の対象になる人

たとえば、以下の方は相続税額の2割加算の対象になります。

(1) 被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した人で、被相続人の配偶者、父母、子ではない人(例示:被相続人の兄弟姉妹や、おい、めいとして相続人となった人)
(2) 被相続人の養子として相続人となった人で、その被相続人の孫でもある人のうち、代襲相続人にはなっていない人

相続税額の加算金額の計算

相続税の2割加算が行われる場合の加算金額 = 各人の税額控除前の相続税額×0.2

ただし、相続時精算課税に係る贈与を受けている人で、かつ相続開始の時までに被相続人との続柄に変更(養子縁組の解消等)がある場合は、計算が異なります。

文章にするとかなり複雑に感じますが、つまり、相続する人が、被相続人との血縁が遠くなると、多め(2割増し)の相続税を納めることになる、という理解をすればよいでしょう。


6. 相続の承認と放棄

相続人は、相続を承認するか、放棄するかを選択できます。

承認する場合は、単純承認(すべての財産を相続することです。何も手続きを取らなければ単純承認となります)あるいは限定承認(相続での取得財産を限度として債務を引き継ぐこと)。限定承認をする場合には相続人全員の合意が必要で、相続税申告の前に家庭裁判所に申し出ることが必要です。

なお、相続を放棄することもできます。これは、被相続人の財産や債務を一切引き継がないことですが、家庭裁判所に相続発生後3か月以内に申し出る必要があります。これは相続人単独の判断でよく、他の相続人の合意を取る必要はありません。


7. さまざまな制度

相続税は条件を満たせば、いろいろな軽減措置が用意されています。以下にその一部を紹介します。

配偶者の税額軽減

被相続人である配偶者が実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円あるいは法定相続分相当額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからない制度です。この制度を適用するためには、相続税の申告期限までに遺産分割を終了しておくことが必要です。ここで気をつけたいのは、配偶者に相続した時点で相続税が軽減できたとしても、その配偶者が亡くなった場合には相続が発生する点です。これを二次相続と言いますが、できればこの二次相続も含めて相続税への対応を検討することが望ましいと言えます。

小規模宅地等の特例

相続財産はすべて金銭に換算します。これを評価額と呼びますが、土地の場合は、小規模宅地等の特例という一定の条件を満たせば評価額を大幅に減額することができる制度があります。

この特例が適用できれば、最大で評価額が80%減額されるため、その分相続税が軽減され、納税者にとっては非常にメリットのある制度と言えます。

タックスアンサーNo.4124には以下のテーブルが紹介されています。

被相続人が事業に使っていた宅地の場合と、居住の場所として使っていた場合の2ケースに大別されます。

事業に使っていた場合は、その宅地を貸付事業以外の事業で使っていた場合は400㎡の範囲まで80%減額されます(以下のテーブルにおける①)。たとえば被相続人が駄菓子屋を営んでいて、その場所を相続する場合などが想定されます。

居住の場所として使っていた場合は、330㎡までの範囲で80%減額されます。

(出典:タックスアンサーNo.4124



8. おわりに

ここでご紹介したのは相続税の制度のごく一部です。このほかにも条件を満たせば相続税が軽減される制度が数々用意されています。できるだけしっかり把握し過不足なく適切に納税したいものです。

                                             以上

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