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就業規則の作り方 就業規則を変更するには?

著者:社労士事務所ライフアンドワークス 代表  角村 俊一

企業が労働者を採用する際、個別に交渉をして労働条件を詳細に定めるのではなく、就業規則によって統一的に労働条件を設定することが一般的です。しかし、労働契約関係は長期にわたることが多く、一方で経営環境は短期的にも激変する中においては、当初の労働条件を変更せざるを得ない場面も生じます。とはいえ、労働者の不利益となる変更を企業が一方的に行うことはできません。今回は、就業規則の変更について解説します。


就業規則の作り方 就業規則を変更するには?

就業規則とは

多数の労働者を雇用する企業は、その経営目標の達成に向け、労働者を組織化して有効に活用する必要があります。そのためには、労働条件や職場の規律などを統一的・画一的に定めたルールが求められます。これが就業規則です。通常、採用の場面では就業規則に定められた労働条件を労働者が一括受諾して労働契約が結ばれます。よって、就業規則の内容が労働条件についての合意事項となります。

【労働契約法第7条】

労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。

しかし、雇用を継続する中で、いったん合意された労働条件を変更せざるを得ない場面もあるでしょう。労働者に有利となる変更であればいいのですが、賃金の引き下げや退職金の減額など、労働者に不利益となる変更には注意が必要です。就業規則に定められた労働条件は労使の合意事項ですから、会社が一方的に不利益変更することは原則としてできないのです。


労働条件の変更パターン

まずは労働条件の変更パターンを大枠でみてみましょう。


原則として労使合意

もう少し細かくみてみます。労働条件の変更に関しては、原則として労使の合意が必要です。使用者が一方的に就業規則を変更し、労働者の不利益な労働条件を設けることはできません。労働条件の変更をめぐっては、無用なトラブルを招かないよう使用者は労働者と十分に話し合う必要があります。

【労働契約法第8条】

労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

【労働契約法第9条】

使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。


「周知」と「合理性」

合意による変更の例外として、第9条ただし書きと第10条で、労働者の合意を得られなかったとしても、就業規則を変更することができる場合が定められています。

【労働契約法第10条】

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。

使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、次のことが必要とされています。

① 労働者に変更後の就業規則を周知させること
② 就業規則の変更が、以下に照らして合理的であること
・労働者の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況
・その他の事情


就業規則の変更が有効であるためには、「周知」と「合理性」が必要です。これらが満たされれば、就業規則による労働条件の変更に同意しない労働者も不利益変更された労働条件に拘束されることになります。なお、ここでいう「周知」とは、実質的な周知(労働者が知ろうと思えば知り得る状態)をいいますが、ただ単に変更後の就業規則を概略的に説明するのではなく、労働者が具体的にどんな不利益があるのかを認識・理解できるように説明することが望まれます。


就業規則変更の手続きは

就業規則を変更する際の手続き要件も確認しておきましょう。

① 労働基準監督署への届出(労働基準法第89条)
② 労働者からの意見聴取(労働基準法第90条)
③ 労働者への周知(労働基準法第106条)

②の意見聴取については、文言どおり労働者から意見を聴くだけでよく、要件として同意までは必要とされていません。しかし、労使紛争を招かないよう使用者には誠実な対応が求められます。③の「周知」については、先の労働契約法上の周知とは異なり、法令上列挙された方法での周知が求められます。

【労働基準法第106条】

使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、・・・(略)を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。


就業規則変更の手順

最後に就業規則を不利益変更する際の手順をまとめてみます。

  1. 現状の把握
    現在の就業規則の内容を確認するとともに経営状況などを把握します。
  2. 変更および必要性の確認
    就業規則の不利益変更について、労働者の理解・納得を得られるだけの合理的な理由および必要性があるかを検討します。
  3. 他社の動向や過去の判例などを調査
    行政のパンフレットやホームページ、書籍や雑誌、他社のホームページなどで情報を集めます。
  4. 不利益を被る労働者の範囲や程度、影響などの確認
    就業規則の変更に伴い影響を受ける労働者の範囲や、どの程度の不利益となるかなどを確認します。場合によっては、数年にわたり徐々に条件を下げるなど不利益の程度を調整することも検討します。
  5. 労働者への事前説明
    労働者に対し、変更の必要性や経営状況について丁寧に説明をします。また代替措置や経過措置についても十分に説明します。労働者の理解・納得を得るためには、一度だけでなく複数回の説明が必要な場合もあります。
  6. 変更内容の最終確認
    変更後の内容が変更目的や必要性を満たしているか、法令上の問題はないかなどを最終確認します。
  7. 労働者への説明、周知、意見聴取
    就業規則の変更について説明会を開きます。変更後の内容は労働者へ周知徹底し、手続き要件として必要な意見聴取を行います。できれば、変更内容について理解・納得した旨、労働者から「同意書」をもらうようにします。
  8. 所轄労働基準監督署への届出
    就業規則変更届、労働者の意見書、新旧対照表を管轄の労働基準監督署に届出ます。

就業規則の不利益変更に関しては、秋北バス事件最高裁判決(昭和43年12月25日)、大曲市農業協同組合事件最高裁判決(昭和63年2月16日)、第四銀行事件最高裁判決(平成9年2月28日)、みちのく銀行事件最高裁判決(平成12年9月7日)なども参考にしていただければと思います。

秋北バス事件最高裁判決 55歳定年制をあらたに定めた就業規則の改正が有効とされた事例
大曲市農業協同組合事件最高裁判決 農業協同組合の合併に伴う退職給与規程の不利益変更が有効とされた事例
第四銀行事件最高裁判決 55歳から60歳への定年延長に伴い従前の58歳までの定年後在職制度の下で期待することができた賃金等の労働条件に実質的な不利益を及ぼす就業規則の変更が有効とされた事例
みちのく銀行事件最高裁判決 60歳定年制を採用していた銀行における55歳以上の行員を対象に専任職制度を導入する就業規則の変更のうち賃金減額の効果を有する部分がこれに同意しない右行員に対し効力を生じないとされた事例

(参考:裁判所HP)

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著者プロフィール

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角村 俊一

社労士事務所ライフアンドワークス 代表

明治大学法学部卒業。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。
「埼玉働き方改革推進支援センター」アドバイザー(2018年度)、「介護労働者雇用管理責任者講習」講師(2018年度/17年度)、「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」サポーター(2017年度)。
社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士、CFP、介護福祉経営士、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)、福祉用具専門相談員、健康管理士、終活カウンセラー、海洋散骨アドバイザーなど20個以上の資格を持ち、誰もが安心して暮らせる超高齢社会の実現に向け活動している。

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