第2回 要点を押さえたシンプルな借用書
第1回では、借用書は金銭トラブルを防ぐために存在しているとご説明いたしました。
貸主にとって、貸したお金が返ってこなければそれは金銭的な損害だけでなく、人間関係すら壊しかねません。それを防ぐために、貸主は借主に借用書を書いてもらい、万が一に備えるわけです。
そしてもし返済してもらえなかった場合、最初は返済を直接依頼しますが、最悪、裁判沙汰になってしまうことも想定しなければいけません。
さて、裁判では貸した証拠が必要となりますが、せっかく借用書を提出したのに、「これでは証拠になりません」と言われてしまったら……。
そんな困った事態にならないよう、今回は借用書に必ず書いてもらわなければならないポイントを見ていきましょう。
万が一に備える借用書の書き方ガイド
【第1回、第2回、第3回、第4回】
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法律が求める一番大切な要素とは?
借用書には、何を書かなければいけないのでしょうか――。もしお金が返済されず裁判沙汰になった場合、裁判官は何を考えるのか、という点で見てみましょう。裁判官はまず法律の条文に立ち返ります。第1回で紹介した民法587条を改めて見ると、「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じものをもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」と書かれています。簡単にいうと、お金の貸し借りが成立するのは、借主がお金で返済すると約束すること、そして貸主が借主にお金を渡すこと、この2つが必要になります。後者は書面にはできませんが、前者は書面にすることができます。ですので、「借主が金銭で返還すること」が必ず書かなければいけない内容となります。たまに「何月何日いくら借りました」としか書かれていない借用書がありますが、それでは足りません。
借用書に必須な他の3つのポイントとは?
他にも借用書に絶対に書いておきたいポイントが3つあります。1つ目は当然ながら「貸主から借りた金額」です。金額がわからなければ、貸主も「いくら返せ」と請求することもできませんし、借主も返しようがありません。もちろん裁判官も金額がわからないのに返済をせよと命じることもできません。2つ目は、「借主の氏名」です。借りた金額同様、相手がわからないのに裁判官は返済をせよと命じることはできません。そして3つ目は「貸主から借りたお金を返済する期限」です。お金に限らず、物の貸し借りというのは、当然ながらある程度の期間に渡って貸すことを前提としている継続的な関係に基づく契約と考えられているため、借りたお金を返済する期限を書くことが不可欠とされています。
借用書の文例に盛り込まれている重要ポイント
今回取り上げた借用書は、書式ガイドに掲載されているものの中でも一番シンプルな内容です。この中にこれまでご説明した4点が入っているか確認してみましょう。まず最重要な「借主が金銭で返還すること」は、「2.上記借金につき平成○○年□□月△△日限り一括にて返済します。」と書かれています。残りの3ポイントも見てみましょう。「貸主から借りた金額」は、「借用金 金 100,000 円也」と書かれています。「借主の氏名」は最後に住所・氏名を書く欄があります。住所は同姓同名を避けるために特定する材料となります。そして「貸主から借りたお金を返済する期限」は、前述の「2.~」に書かれています。すなわち、これはシンプルながらも必要なポイントを全ておさえた借用書ということができます。
書面の記載の持つ意味を確認しておこう
せっかくですので、この借用書に書かれている他の記載も見てみましょう。「1. 私は貴殿より平成○○年□□月△△日、金 100,000円を借り受けました。」これはお金の貸し借りを成立させる要件の1つ「貸主が借主にお金を渡すこと」を借主から証明してもらうための記載です。お金の貸し借りそのものは書面にはできませんが、このような形で証拠になるよう工夫しています。「3. 利息は年◆%とし、遅延損害金は◇%とします。」利息についての記載がないと利息はもらえません。遅延損害金は、返済期限までに返済がなかったときのお金で、書いていなくても請求することができます。このように、記載されている事項が持つ意味を確認することで、状況に合った書式を選んでいきましょう。
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<続く>
提供元:ドリームゲート