社会保険の厚生年金とは? 給付の種類や加入条件を解説
厚生年金は、国民の生活を支援するための社会保険の一つです。全ての人が対象の国民年金に対して、厚生年金は一定の条件を満たす人が加入を義務付けられています。
今回は、国民年金に上乗せして支給される厚生年金の加入条件や、給付金の種類について解説します。社内で厚生年金の手続きを担当されている方は、ぜひ参考にしてください。
社会保険の一つの厚生年金
厚生年金とは、会社員や公務員などが加入する年金制度です。パート・アルバイトの方も、一定の要件を満たせば加入することができます。定められた受給資格期間を満たした人は、国民年金に上乗せされる形で厚生年金を受給できます。
国民年金は20〜60歳の全ての人が加入する年金制度のため、基本的には必ず受給することができます。厚生年金の要件を満たした人は、「国民年金+厚生年金」を受給できる仕組みです。
厚生年金に加入している事業所で常時雇用されている70歳未満の人は、基本的に厚生年金に加入しなくてはなりません。パート・アルバイトでも、一般社員の勤務時間・労働日数の4分の3以上働いている方は、厚生年金への加入義務が発生する可能性があります。
また、上記条件を満たしてない方でも、以下の条件に全て当てはまる場合は、厚生年金の加入条件を満たしたものとみなされます。
- 週20時間以上働いており、1カ月の所定内賃金が88,000円以上
- 従業員数501名以上の会社に勤めている
- 学生ではない
- 雇用される期間が1年以上を見込んでいる
厚生年金の保険料率と標準報酬月額
厚生年金の保険料額は、従業員の給料額によって変化します。ここからは、厚生年金の保険料率と標準報酬月額について解説します。
保険料率
厚生年金の保険料率は、全ての人に対して18.3%と固定されています。この保険料率に標準報酬月額や標準賞与額を掛けて、厚生年金保険料が算出されます。
なお、厚生年金保険料率は年金制度改正に基づき平成16年から段階的に引き上げられていましたが、平成29年9月を最後に引き上げが終了しました。
標準報酬月額
標準報酬月額とは、従業員の月々の給料を1〜32の等級に分けて表すものです。厚生年金保険料等の金額を算出する際に使われます。
従業員の給料は、残業時間や欠勤の有無によって毎月微妙に異なります。毎月の給料を基に算出するのは手続きが煩雑なため、32の等級に区分して計算されます。
社会保険の種類
社会保険には、下記のような種類があります。
医療保険 |
病気やケガによる医療費の一部を、国や自治体が一部負担してくれる制度 |
年金保険 |
企業の従業員である時に保険料を支払うことで、原則65歳から年金形式で資金を受け取ることができる制度 |
介護保険 |
40歳以上の方を対象であり、要介護状態になった時に介護サービスを受けられる制度 |
雇用保険 |
労働者が失業した場合や就労が困難になった場合に給付を行い、再就職を支援する制度 |
労災保険 |
労働者が会社での勤務中または通勤中に発生した病気やケガに対しての医療費や休業した時の補償を行う制度 |
厚生年金の給付の種類
厚生年金の制度で支給される給付金の種類は、以下のとおりです。
- 老齢厚生年金
- 遺族厚生年金
- 障害厚生年金
それぞれについて、詳しく解説します。
老齢厚生年金
老齢厚生年金とは、公的年金制度の一つであり、厚生年金保険に加入している方が受け取ることができる年金です。厚生年金保険に加入していた期間や報酬額に応じて年金額が計算され、原則65歳に達してから老齢基礎年金に上乗せして支給されます。
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、加入者が死亡した際などに遺族が受け取ることができる年金です。「短期要件」「長期要件」のどちらに該当するかによって、算出過程が変化します。
短期要件
短期要件とは、下記の①、②、③に該当する場合のことです。
- ①在職中に死亡した場合
- ②在職中に初診を受けた病気やケガが原因で、初診日から5年以内に死亡した場合
- ③障害等級1級または2級に該当する障害厚生年金の受給者が死亡した場合
長期要件
長期要件とは、下記に該当する場合のことを指します。
- 受給資格期間が25年以上ある人が死亡した場合
短期要件か長期要件かで遺族厚生年金の算出方法が変わってくるため、注意が必要です。
障害厚生年金
障害厚生年金とは、厚生年金に加入している方が病気やケガなどによって障害を受け、医師に障害状態であると診断された時に給付される年金です。障害の程度によって、1〜3級までの等級に分類されます。
基本的に1級と2級の給付要件は、全ての国民が対象の障害基礎年金と同じであり、障害厚生年金分が加算されて支給されます。
厚生年金について正しく理解しよう
厚生年金は、国民の生活を支える社会保険の一つです。厚生年金に加入している事業所で働く正社員のほかに、一定の条件を満たしたパート・アルバイトも加入が義務付けられています。
厚生年金の保険料は、従業員の月々の給料額によって変動します。従業員が加入対象かどうかや保険料の金額を把握するために、正しい知識を身に付けましょう。
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