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確定申告のやり方 何がどれだけ経費になるの?

著者: 税理士  高山弥生

確定申告のやり方 何がどれだけ経費になるの?

フリーランスとして仕事をしていたり、副業で仕事をしていると、思いのほか経費が少ないと思われるのではないでしょうか。

リアルな店舗を持たないフリーランスとしての働き方は自分自身の知識やアイデア、労力が収入の源であり、物品などを仕入れて売るという事業形態ではないため、仕入は発生せず、賃料もかからないため、経費が少ないことが多いと思います。

そのため、日々の細々とした支出をしっかり計上すると同時に、経費となるものを漏らさないことが重要です。


家族が支払ったものでも経費にできる

フリーランスや副業として仕事をするにあたって、自宅の一部を仕事場としている方も多いと思います。その場合、家賃の一部を経費に計上したいところですが、家賃を支払うのは親や配偶者で、自分自身は支払っていない場合、経費にできるのでしょうか?

たとえ親や配偶者が支払っている家賃であっても、生計が一(生活するうえでお財布が一緒と考える)である親族が他人に支払っているものであれば、それを事業に使用した場合、必要経費とすることができます。

さらに、配偶者名義の車両やガソリン代なども、事業に使用した分であれば、必要経費となります。

生計が一である親族が家族ではない外部の人などに支払ったもののうち、事業に使用した分は必要経費にできますが、生計が一である親族に対して支払った分は必要経費にできません。

事業主が配偶者に車両などの使用料を支払った場合は、必要経費として認められませんのでご注意ください。

持ち家の場合、土地・家屋の名義が親や配偶者であっても生計が一であれば同様です。家賃は発生しませんが、家屋を減価償却することにより、事業に使用した分を必要経費とすることができますし、土地、家屋の固定資産税も事業に使用した分を必要経費とすることができます。

生計が一である親族が支払う電気代も必要経費にすることができますが、生活費と事業で使用した分を分ける必要があります。

電気代は、仕事で使用している部屋の面積と家屋の総面積で按分したり、仕事で使用しているコンセントの数と家屋全体のコンセントの数で按分するといった方法など、合理的な方法で分ければよいとされています。


家族に給料を支払うことができる

仕事が忙しくなってくると、配偶者などの家族に仕事を手伝ってもらうこともあるでしょう。本来であれば生計を一にする親族に給与を支払っても、所得税法上は経費になりません。

しかしながら、それでは実際に家族が事業を手伝っているにも関わらず、実態とかけ離れてしまいます。

副業の場合はほとんどのケースが「雑所得」として申告することになり、家族に給料を払うことはできませんが、フリーランスの人が事業所得として申告する場合、家族に給料を払うことができます。

家族に給料を支払うと節税となるのはなぜ?

所得税は超過累進課税ですので、所得が大きければ税率が高くなり、所得が小さければ税率が低くなります。家族に給料を支払うことで事業主の所得が小さくなり、税率が下がって節税となります。

また、受け取る家族は給与所得となりますので、給与所得控除があるため、さらに所得が小さくなり、税額が下がることになります。

例えば、個人事業主の事業所得(利益)が600万円のケースと、配偶者に給料を支払い、個人事業主の所得が300万円、配偶者の給料が300万円のケースを見てみましょう(基礎控除48万円以外の控除項目はないものとする)。

個人事業主の所得が600万円のケース

個人事業主分の税額:(6,000,000円-480,000円)×20%-427,500円=676,500円

個人事業主の所得が300万円、配偶者の給料が300万円のケース

個人事業主分の税額:

(3,000,000円-480,000円)×10%-97,500円=154,500円

配偶者分の税額:

3,000,000円-給与所得控除(3,000,000円×30%+80,000円)-480,000万円=1,540,000円

1,540,000円×5%=77,000円

合計:231,500円

所得額(利益額)が同じでも、事業主一人の場合の税額は67万6千500円ですが、配偶者に給料を支払うと税額は二人で23万1千500円となります。

事業主一人の所得とするより、配偶者に給料として支払ったほうが税負担を軽くできます。


青色事業専従者給与の要件

青色申告をしている場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出することで、15才以上の家族に対する給料を必要経費にすることができます。

青色事業専従者給与は、実際に支払った額が必要経費とされます。未払いは認められませんので注意してください。

青色事業専従者になることができる家族には、以下の要件があります。

  1. 青色申告者と生計を一にする配偶者、その他の親族であること
  2. その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  3. その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること

白色申告者には事業専従者控除がある

青色申告をしていない場合には、事業専従者控除があります。事業専従者とは、次の要件の全てに該当する人をいいます。

  • イ.白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
  • ロ.その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  • ハ.その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること

事業専従者控除額は、実際に支払ったどうかは関係なく、次のイまたはロの金額のどちらか低い金額となります。

  • イ.事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
  • ロ.この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額

家族に仕事を手伝ってもらっているのに給料を支払っていなかったという方は、今年の3月15日までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出し、家族へ給料を支払って必要経費にしましょう。

新たに専従者がいることとなった人は、その開業の日や専従者がいることとなった日から2月以内に提出すれば支払うことができます。

経費にならないと思っていても経費にできるものは意外にありますので、自分の支出や家族の支出を一度見直してみてはいかがでしょうか。

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著者プロフィール

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高山弥生

税理士

1976年埼玉県出身。一般企業に就職後、税理士事務所へ。「顧客に税目はない」をモットーに、わかりやすい本音トークが好評。「税理士事務所に入って3年以内に読む本」を始めとする高山先生の若手スタッフシリーズを執筆しており、近著に「個人事業と法人どっちがいいか考えてみた」がある。

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