ハロー効果とは? ビジネスにおける具体例や注意点をわかりやすく紹介
ハロー効果とは、ある対象を評価する際、思い込みや先入観によって評価基準が歪められ、合理的な判断ができなくなる現象のことです。
ビジネスでは、人事評価や採用、マーケティングなど、あらゆる場面でハロー効果が現れます。ハロー効果は状況によってプラスにもマイナスにも働くため、ハロー効果という現象があることを知り、適切に対処する必要があります。
本記事では、ハロー効果の概要やビジネスにおける具体例、ハロー効果から発生する評価エラーの防止対策を紹介します。
ホーン効果やピグマリオン効果といった、ハロー効果と混同しやすい用語についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
ハロー効果とは
ハロー効果は、アメリカの心理学者が論文で発表した心理現象のひとつです。まずは、ハロー効果の概要について見ていきましょう。
ハロー効果の意味
ハロー効果とは、ある対象を評価する時、その対象が持つ顕著な特徴に引っ張られて、他の特徴の評価が歪められる現象のことです。
思い込みや先入観によって合理的な判断ができなくなる、心理現象(認知バイアス)の一種といえます。
ハロー効果という言葉は、アメリカの心理学者エドワード・ソーンダイクの論文「A Constant Error in Psychological Ratings」のなかで使われ、一般化しました。
ハローとは「聖人の頭上に描かれる光輪」のことです。
ハロー効果は2種類に分けられる
ハロー効果は、「ポジティブハロー効果」と「ネガティブハロー効果」に大別できます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
【1. ポジティブハロー効果】
ポジティブハロー効果とは、評価対象の良い点の影響を受けて、対象の全てを高く評価してしまう現象のことです。プラスのハロー効果ともいえます。
例えば、身だしなみがしっかりしていることから、「この人は仕事もできるはずだ」と判断することなどが代表例です。
ハロー効果は、人に対する評価以外の場面でも働きます。テレビCMで好印象を持っている会社に対して、「その会社の商品も優れている」と評価することも、ポジティブハロー効果のひとつです。
【2. ネガティブハロー効果】
ネガティブハロー効果は、ポジティブハロー効果とは逆の、マイナスのハロー効果です。
評価対象の悪い点の影響を受けて、対象の全てを低く評価してしまう現象です。
例えば、営業成績が悪い従業員を評価する時に、事務的な能力など、他の仕事についても能力が低いと判断することなどがあげられます。
その評価は、「人格的にも劣っているに違いない」など、仕事と関係ないことに及ぶ場合もあります。
また、清潔感のないレストランで出された料理が美味しくなさそうに感じることも、ネガティブハロー効果の一例です。店のイメージが料理の評価に悪影響を与えています。
ハロー効果と混同しやすい心理学用語
ハロー効果と混同しやすい心理学用語に、「ホーン効果」と「ピグマリオン効果」があります。
ここでは、それぞれの用語の意味を解説します。
ホーン効果
ホーンは悪魔の角のことを指し、評価対象の悪い点の影響を受けて、対象の全てに対して悪い印象を持つようになることです。
ネガティブハロー効果と同義と考えて良いでしょう。
ハロー効果とホーン効果は、一部の特徴の影響で、他の特徴の評価が歪められる点は同じです。
しかし、ハロー効果にはプラスの効果とマイナスの効果の両面があるのに対し、ホーン効果はマイナスの効果のみである点が異なります。
ピグマリオン効果
ピグマリオン効果とは、他人から期待されることによって、本人が良い方向に成長する現象のことです。
アメリカの教育心理学者であるロバート・ローゼンタール氏が提唱した心理現象で、教育の現場などで活用されています。
ハロー効果は、ある特徴から「できる人である」と本人が判断(評価)することをいいますが、ピグマリオン効果は、ある人が「あなたはできる」と他者に言ったことがきっかけで、相手が成長することをいいます。
つまり、ハロー効果は主体者(本人)に与える影響であるのに対し、ピグマリオン効果は相手に与える影響だということです。
ビジネスにおいてハロー効果が現れやすい具体例
ハロー効果は、ビジネスの現場でも頻繁に現れます。
場合によってはネガティブに働いてしまうこともあるため、ハロー効果が現れやすい場面を知っておき、適切に対処することが大切です。
人事評価の判断時
ハロー効果が現れやすい場面のひとつが、人事評価です。
前職で大手企業に勤めていた人に対して、仕事ができるという先入観を持ち、実際の仕事内容に関わりなく高く評価することなどが挙げられます。
これはポジティブハロー効果の一例ですが、ネガティブハロー効果が出ることもあります。
例えば、部下に対して、過去に仕事で失敗した印象が強く、「あいつは仕事ができない」と決めつけ、現在の仕事の成果を正当に評価しないなどのケースが該当します。
人材採用の判断時
人材採用の判断をする時にも、ハロー効果が現れやすいので注意が必要です。
偏差値が高い大学を卒業しているから優秀だと判断して、人材を採用することなどが挙げられます。
大学入学当時の学力が高くても、会社業務に必要な知識・能力や社会への適応力、対人スキルも優れているとは限りません。
一方、声が小さい、見た目がパッとしないなどの理由で「ダメだ」と判断して採用を見送ることも、ハロー効果のひとつです。
外見や第一印象だけで仕事の適性を判断して、優秀な人材を採り損ねるリスクもあります。
商品・サービスの広告やCMなどのマーケティング時
企業の商品・サービスの広告やCMなどでもハロー効果が現れやすいため、多くの企業が活用しています。
例えば、好感度の高い芸能人をCMに使うことで、会社や商品のイメージを良くする効果が期待できます。
芸能人が宣伝する商品を使用したことがなくても、CMを見た人は一定の割合で、その商品に対して良い印象を持つでしょう。
また、健康的な肉体の持ち主が健康食品を、肌のきれいな人が化粧品を宣伝すると、商品自体が効果的であるという印象を与えることもあります。
ハロー効果から発生する評価エラーの防止対策
人事評価にハロー効果が現れると、適切な評価ができなくなり、従業員が不満を持つようになります。
ここでは、ハロー効果から発生する評価エラーの防止対策を解説します。
1. 評価基準の明確化とフィードバック
評価基準を明確にすることで、評価者が先入観やイメージで評価することを防げます。
評価基準は、可能な限り客観的に判断できるものや、数値化できるものが望ましいでしょう。
また、被評価者に評価基準を公開し、評価内容をフィードバックするのも効果的です。
評価者は、評価した理由を被評価者が納得がいくように伝える必要があるため、いい加減な評価ができなくなります。
2. 正しく人事評価できるように評価者を教育・訓練する
人事評価を行う立場の役職者のなかには、人事評価について教育・訓練を受けたことのない人もいます。
自身の経験や勘に頼った人事評価では、客観的な評価が難しくなります。
人事評価に関する初期研修を受けた人でも、評価項目や評価方法の変化に応じた教育を受けたり、評価スキルを磨いたりして、一定レベルの評価スキルを身に付ける訓練も必要です。
3. 360度評価の導入
360度評価とは、上司だけでなく、同僚や部下を含めて多面的に判断する人事評価手法のひとつです。
上司がハロー効果によって人事評価していないかどうかをチェックできるだけでなく、上司が気づかない点についても、他の評価者の目で補えるのがメリットです。
被評価者にとっても、複数の人が評価することで評価に対する納得感が高まり、成長のきっかけになることも期待できます。
ハロー効果についてのまとめ
ハロー効果の概要やビジネスにおける具体例、ハロー効果から発生する評価エラーの防止対策を紹介しました。
ハロー効果は、マーケティングやブランディングでは企業にとってプラスに働くことが多いですが、人事評価や採用では、先入観によって評価が歪んでしまうことがあります。
人事部の担当者や従業員をまとめる立場にある経営者は、ハロー効果について理解を深め、人材を正しく評価するための仕組み作りを行うことが大切です。
評価者の訓練や360度評価の導入は、人事におけるハロー効果のマイナス面を補う効果が期待できます。自社に合った形で、ぜひ実行してみましょう。
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