医療費控除で住民税は安くなる? 対象となる医療費やセルフメディケーション税制についても解説
住民税や所得税は、所得総額に対する割合で決まります。
所得総額から一定の金額を差し引くことを「所得控除」といい、所得控除を行うことで課税対象となる所得の金額が減り、支払う税金も少なくなります。
所得控除の項目の1つに「医療費控除」があり、医療機関などに支払った費用の一部を所得総額から差し引くことができます。ただし、医療費控除の対象にならない医療費もあるため、注意しましょう。
本記事では、医療費控除で住民税が安くなる仕組みや、医療費控除の対象となる医療費と特例について、わかりやすく解説します。薬局やドラッグストアで購入した医薬品が医療控除の対象となる「セルフメディケーション税制」についても、併せて見ていきましょう。
医療費控除で住民税が安くなる理由
医療費控除は、所得控除の項目の1つです。1年間に医療機関などに支払った費用の一部を総所得金額から控除できる制度で、課税される所得金額を減らせます。
医療費控除は、所得税の課税所得金額から控除されるだけでなく、住民税の計算においても、課税所得金額から控除されます。医療費控除による住民税の減税額は、医療費控除額の10%です。
医療費控除額が30万円の場合は3万円、医療費控除額が100万円の場合は10万円、住民税が減税されます。
そのため、医療費の金額が多い人ほど、医療費控除として課税所得金額より控除される金額が多くなり、その分税金が少なくなるといえます。
医療費控除の対象となる医療費
医療費控除の対象となる医療費は、国税庁のホームページに明記されており、「その症状等に応じて一般的に支出する金額を著しく超えない部分の金額」とされています。
- 医師・歯科医師による診療・治療のための費用
- 治療・療養に必要な医薬品の購入費(風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金も含む)
- 人間ドックや健康診断の費用(重大な病気が見つかって治療を行った場合)
- 病院、診療所、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定・地域密着型介護老人福祉施設または助産所の入院・入所費
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術費
出典:国税庁HP(タックスアンサー)No.1122 医療費控除の対象となる医療費
医療費控除の対象となる項目には、次のようなものもあります。
- 助産師による分娩の介助の対価
- 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
- 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金
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セルフメディケーション税制とは?
セルフメディケーション税制とは、薬局やドラッグストアで購入した医薬品の代金などを所得金額から控除できる制度です。医療費控除の特例として開始した制度で、普段健診や疾病予防などを行っており、医療費控除を受けるほど医療費の支出がない人でも利用できます。
ここでは、セルフメディケーション税制について詳しく解説します。
セルフメディケーション税制の概要
セルフメディケーション税制とは、薬局やドラッグストアなどで購入できるOTC 医薬品(医師の処方箋がいらない医薬品)にかかった費用を、所得から控除できる制度です。医療用医薬品から市販の医薬品への代替を進める観点より、制定されました。
8万8,000円を上限として、1年間に支払った対価額の合計額が1万2,000円を超えた分の金額は、その年分の所得金額から控除されます。
参考:セルフメディケーション税制に関する Q&A|厚生労働省
医療費よりも、薬局などで購入する医薬品の方が高額になる場合は、セルフメディケーション税制を採用した方がよい場合もあります。それによって、所得税・住民税の節税につながります。
例:対象の医薬品購入金額が3万円の場合
- 所得控除額:30,000円-12,000円=18,000円
- 住民税の減税額:18,000円×10%=18,00円
セルフメディケーション税制の注意点
セルフメディケーション税制には、次のような注意点があります。
1.従来の医療費控除との併用不可
医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できないため、どちらか一方を選択しなければなりません。
医療機関の受診などでかかった費用と、薬局・ドラッグストアで購入した医薬品にかかった費用を比較して、どちらか高い方の金額を所得控除の金額にする必要があります。
2. 対象外の薬もある
セルフメディケーション税制の対象となる医薬品は、厚生労働省のホームページに掲載されています。それ以外の医薬品については、セルフメディケーション税制の対象にならないため、注意が必要です。
なお、対象の品目は毎月更新されるため、「先月は対象だったが、今月は対象ではなくなった」ということもあり得ます。こまめに確認しましょう。
3. セルフメディケーション税制を受けるためには、「一定の取組」を行う必要がある
セルフメディケーション税制の適用を受ける場合には、その適用を受けようとする年度において、「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組」を行わなければなりません。
一例として、人間ドックをはじめとする各種健康診断、予防接種などが挙げられます。
「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組」について、詳しくは厚生労働省のホームページをご覧ください。
医療費控除と住民税の関係性についてのまとめ
今回は、所得金額に関わる医療費控除とセルフメディケーション税制について、詳しく解説しました。
所得税や住民税は、所得金額に対する割合で決まるため、医療控除をはじめとする所得控除制度をうまく活用することで、節税効果が期待できます。
セルフメディケーション税制も所得控除制度の一種ですが、医療費控除と併用できない点に注意が必要です。
医療費と、薬局・ドラッグストアなどで購入した医薬品の代金を比較して、高い方を選択することで、所得税や住民税をより多く節税できます。
医療費控除の計算には、ぜひテンプレートをご活用ください。
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