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みなし残業をわかりやすく解説!導入のメリットや注意点について

みなし残業をわかりやすく解説!導入のメリットや注意点について

「みなし残業」をご存じでしょうか。

みなし残業とは、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ決められた時間分の労働を行ったとみなし、給料を支払うシステムです。

本記事では、みなし残業の仕組みとメリット・デメリットを具体的に解説し、導入に向けて取り組むべき条件などをご紹介します。導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。


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みなし残業は3種類ある

みなし残業はあくまでも通称であり、法律上では「固定残業代制」または「みなし労働時間制」と呼ばれています。それぞれの制度で内容は違いますが、ここではまとめて「みなし残業」として解説をしていきます。

みなし残業は大きく3種類に分けることができ、それぞれで適用される職種などが異なってきます。ここからは、種類別に内容や特徴などを紹介していきます。

事業場外労働

「事業場外労働」は、事業場(基本となる職場)以外での業務が多い職種で、従業員の労働時間を正確に計算するのが難しい場合に適用するのが特徴です。

通常の業務形態においては、就業開始時間と終了時間が設定されますが、こういった固定的な働き方に当てはめるのが難しい場合に、みなし労働として変則的な就業時間が可能となります。

例えば、「会社から社員に対して、詳細な指示や管理をするのが難しい」「事業場以外での業務がメインとなる」などの要件を満たすことで、みなし残業が適用できます。また、事業場以外における労働に加えて、帰社してからの労働についてもみなし労働時間に含まれます。

想定される職業としては、

  • 旅行会社の添乗員やバスガイド
  • 訪問営業
  • 在宅勤務者

などが挙げられます。

専門業務型裁量労働制

「専門業務型裁量労働制」は、高度な専門性や裁量性を持つ業務を対象とした、みなし残業です。会社ではなく従業員個々の裁量と考え方で、労働時間を規定した方がより効率的とされる職種や職業で適用されます。

つまり、業務内容を見て社員が労働時間を配分できる仕組みです。

具体的な職種は、厚生労働大臣から指定を受けた19種の特定専門職に限定されています。

  • 弁護士などの各法曹
  • 情報処理システム関連職
  • 新技術・科学系の研究者
  • 公認会計士や税理士
  • ラジオやテレビのプロデューサー
  • 各種デザイナー
  • 編集者やコピーライター
  • インテリアコーディネーター
  • 建築士
  • 中小企業診断士

などが該当します。

企画業務型裁量労働制

「企画業務型裁量労働制」は、前述した専門業務型裁量労働制と同様に、会社ではなく社員の裁量で労働時間を規定した方がより効率的と考えられる職業で適用されます。

社員自ら労働時間を適切に配分することで、業務の効率化やより良い成果が期待できます。

対象となる業務については、労働基準法に指針が示されています。

  • 人事・労務
  • 財務・経理
  • 経営企画
  • 広報

などの分野に従事するスタッフに限り、適用が可能です。

みなし残業を導入するメリット

では、みなし残業を取り入れるメリットとしては、どのようなものがあるのでしょうか。

ここからは、3つのポイントに絞って詳しく解説していきます。

人件費を把握しやすくなる

人件費は企業にとって大きなコストとなりますが、みなし残業の導入によって、月単位での残業代の変動が抑えられ、人件費を把握しやすくなります。

その結果として、年単位の人件費予算を組みやすくなるでしょう。

経費が安定すると、設備投資や新事業展開に要する費用にも目途が付きやすくなり、より効果的な予算配分が可能になるなど、副産物的なメリットも生まれます。

残業代の計算をする手間が省ける

みなし残業を導入することで、あらかじめ決められた時間内であれば追加の残業代が発生しません。

つまり、社員ごとに残業代を算出する手間が省けるため、給与計算の効率化が図れます。毎月の給与計算に要する業務時間は膨大になる傾向があり、総務・経理部門に大きな負担を強いることになります。みなし残業の導入によって、従来なら給与計算に使っていた時間をほかの仕事にまわすことができれば、業務が好循環し会社の成長にもつながるでしょう。

ただし、設定した時間を超過した分については支払い義務が発生するため注意が必要です。

従業員の業務効率が向上する

残業をしなくても残業代が支払われるため、それ目当てで働く社員が減り、定時までに業務を終わらせる努力をするなどして、業務効率の向上が期待できます。社員の業務効率向上は、結果として事業の成長につながり、会社の業績に直結する好循環を生み出すでしょう。

みなし残業は企業だけでなく社員側にもメリットがあります。

つまり、仕事の遅い社員ほど収入が増えるという不条理がなくなり、優秀な社員のモチベーション向上に寄与すると考えられます。また、一定の残業代が給与に含まれるため、閑散期などで残業時間が少ない月であっても同額の残業代を受け取ることができ、社員の収入が安定するでしょう。

給与に波がないことで生活の見通しや将来設計が立てやすくなり、お金の心配をする不安感が減るため、メンタル面での効果も期待できます。


みなし残業を導入するデメリット

ここまで、みなし残業のメリットを解説しましたが、もちろんデメリットも存在します。

みなし残業を導入する際は、デメリットも理解し検討する必要があります。

残業をしてなくても支払わなくてはいけない

みなし残業の設定時間次第では、残業手当の負担が大きくなり経費が増える可能性があります。これは、実際に残業をしていなくても、設定されたみなし残業時間分の金額を支払わなければならないのが理由です。

つまり、社員の残業時間が、就業規則内で設定されたみなし残業時間を下回る月であっても、一定額の残業代を支払わなければならず、みなし残業を取り入れる前と比べて人件費が増加する可能性もあります。

また、人件費の増加を抑えるために、みなし残業の設定時間を本来設定すべき時間より短くしてしまうケースもあります。

ただ、それでは社員のモチベーションが上がりませんし、かえって会社に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。みなし残業の導入にあたっては、余分に残業代を支払うことを必要経費と割り切って考えるのも経営者にとって重要な要素となります。

ブラック企業だと誤解されやすい

みなし残業の設定時間を超過した場合、その分の残業代を追加で支払わなければなりませんが、「設定された残業時間以上の残業代は請求できない」といったような誤解が広まり、違法なサービス残業が横行してしまうケースがあります。

さらに、みなし残業を採用していると、残業が必須の企業と勘違いされるリスクもあります。

そうなれば、恒常的に残業が発生し、社内ではサービス残業が行われているブラック企業と誤解されてしまうかもしれません。

現代においては、ブラック企業というイメージを持たれるとすぐにSNSなどで拡散され、実態とは異なる情報が植え付けられてしまう場合があります。また、みなし残業を導入している部門と導入していない部門があると、部門間で軋轢が生まれ社内の雰囲気が悪くなってしまう可能性があり、人間関係の部分で悪いイメージを持たれてしまうかもしれません。

これらは、より優秀な人材を獲得したい企業にとっては大きなデメリットとなり、商品の販売やサービスを提供する会社であれば、対外的なイメージに傷がつき、業績にも直結してしまうおそれがあります。


起こりやすいトラブルの原因

みなし残業の仕組みを会社と社員が正確に把握していないことが要因で、さまざまなトラブルが発生する可能性もあります。せっかくメリットを享受しようと導入しても、トラブルが発生してしまっては元も子もありません。導入後にトラブルが発生しないよう、考えうるケースを理解しておきましょう。

超過分を支払っていない

みなし残業で設定された時間を超過した場合は、その分の残業代を支給する義務が発生します。

例えば、30時間分の固定残業代を支給されている社員が35時間残業した月は、みなし残業時間を超過した5時間分の残業代を支払わなければなりません。

よく誤解されがちですが、みなし残業は何時間働いても残業代が一定という制度ではありません。設定時間を超過すれば、その分に関しては支払い義務が生じます。

したがって、みなし残業を導入しても残業自体が減少しない場合は、その分のコストが上乗せされ、みなし残業を導入する以前よりも人件費が高くなる可能性もあります。

この部分を会社側が把握していなかったのが原因で、あとになって未払い分を請求されるといったケースも想定されるため、「超過分は支払わなければならない」ことを確実に覚えておきましょう。

休日出勤や深夜労働の割増賃金が考慮されない

次に起こりやすいトラブルとしては、休日出勤や深夜労働の割増賃金を考慮していないことが挙げられます。一般的な法定休日を基準にすると、土日どちらかに休日出勤した場合、週1日の休日が確保され、法的には休日出勤にあたりません。あくまでも、時間外労働となります。

一方で、土日どちらも休日出勤し週1日の休日がなくなった場合は、いずれか1日が法的に休日出勤となります。

みなし残業における時間外労働は、賃金に割増率25%が適用されますが、法定休日の割増率は35%となります。したがって、法定休日に休日出勤をした場合、みなし残業の残業代とは別に賃金に上乗せする必要があります。

また、22時から翌5時にかけての深夜労働の残業代は、追加で25%の割増をしなければいけません。

したがって、

時間外労働時の深夜残業であれば25%+25%=50%の割増

法定休日の休日出勤で深夜残業した場合は25%+35%=60%の割増

となります。

つまり、これらの制度や計算方法を把握しておかなければ、賃金に関して社員とトラブルが発生する可能性があります。会社の経営陣としては、金銭に関するトラブルは確実に回避したい案件であるため、必要な知識を押さえておきたいところです。

36協定に違反している

みなし残業の設定時間には上限が定められていませんが、36協定における1ヶ月の法定時間外労働時間は45時間が上限とされています。そのため、最大でもみなし残業の上限は45時間にするのがベターです。

なお36協定では、1ヶ月45時間・年360時間といった法定時間外労働時間の上限が決められていますが、特別条項を付帯すれば上限を超えた労働も可能となります。

しかし、特別条項は、繁忙期などに応じた一時的なものであるため、恒常的な適用はできません。

それにもかかわらず、みなし残業の設定時間を45時間以上とし36協定に違反している場合は、後々トラブル発生の原因となります。


みなし残業を導入する条件

実際にみなし残業を導入するにあたって、必要な条件やポイントとは何なのでしょうか。

ここからは、これまでの裁判所の判例から考えられる2つの導入条件を紹介していきます。

従業員の同意を得る

みなし残業の導入は、社員にとって重要な賃金・給料に関しての労働条件を変更するため、双方で議論した上での同意が必須となります。

これは、口頭での説明だけではなく、みなし残業に関することを就業規則に明記する旨を伝え、雇用契約書を通して合意してもらわなければなりません。

もちろん、社員の同意がなければ導入は不可能であるため、メリット・デメリットを含め導入による影響をこと細かく伝え、双方納得の上で取り入れるのが大切です。

基本給と固定残業代を明確に区別する

基本給の金額とみなし残業代にあたる金額を明確に区別できるようにするのも重要です。

その際は、みなし残業代が何時間分にあたるのかを就業規則や雇用契約書などに明記しなければなりません。

導入前に、これらの項目を明確に区別しておくことで、働き始めてからのトラブルを防ぎ、労働環境のスムーズな移行が可能となります。基本給と固定残業代の区別が不明確のままスタートしてしまうと、お互いの認識が異なっていたことを給料日に気付くなどの事態が発生しかねません。

したがって、同意を得る前に、漏れなく明記されているかをダブルチェックしておくのがベストです。


まとめ

みなし残業には、さまざまなメリット・デメリットがあり、導入するハードルは決して低くありません。しかし、専門性の高い業種に就く方にとっては、労働時間が自身の裁量に委ねられ効率的な業務が可能になるなど、魅力的な側面もあります。

みなし残業を導入する際は、会社の経営陣がその意義を理解することが重要です。

対象となる社員により働きやすい環境を整備し、会社に利益をもたらすものであると理解することが前提となります。

したがって、会社の経営状況を分析し、みなし残業のメリットがデメリットを上回ると確信できた場合にのみ導入を進めるのが良いでしょう。

ぜひ、自社の課題と強みを把握した上で、より適した選択を行ってください。

みなし残業の導入をお考えの方は、ミナジンでは勤怠管理・労務管理・人事制度・評価など人事労務に必要な総合的サービスを提供しています。

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